「熱波を放つ命の叙事詩」宝島 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
熱波を放つ命の叙事詩
通常スクリーンで鑑賞。
原作は読了済み。
最初から最後まで、凄まじい熱気を放ち続ける圧巻の191分。俳優陣の演技の持つ熱量が、魂の迸るような強いエネルギーが、スクリーンから溢れ出して来て、心も体も呑まれた。
叙事詩的なストーリーが、あの頃の沖縄の空気感や人々の想いを鮮やかに浮かび上がらせる。沖縄の歴史は、奪われ、犠牲を強いられて来た歴史であると、登場人物たちの叫びが痛切に響く。それは決して過去ではなく今も陸続きの問題であると、観る者を傍観者でいられなくさせる力強さがあった。
当時の空気感を再現したセットのクォリティも妥協が無かったし、その時の温度や湿度まで伝わる。原作の換骨奪胎も絶妙だ。今年度ベスト級の大作であると自信を持って断言する。
[余談]
総じて見れば「原作の換骨奪胎も絶妙だ」と感じたが、端折り過ぎてしまっていることが気になる部分か無かったと言えば、嘘になる。
例えば、ダニー岸に拷問を受けたグスクが解放されるシーンである。原作では、命からがら脱出する展開で、かなりスリリングだ。
この時の拷問の苛烈さが原因でグスクはダニー岸へのトラウマを抱えてしまい、クライマックスのとある意外な事実へと繋がっていく。
だがこの要素がごっそり無くなっていたために正直がっくり来た。ダニー岸がグスクをあっさり解放した理由の説明も無いため、単に不可解さが残る。
*修正(2025/10/26)
ノーキッキングさん
コメントありがとうございます。
返信が遅くなります申し訳ありません。
どちらかと言えば原作の方が面白いとは感じましたが、観ていて当時の沖縄の雰囲気と熱量の再現を試みようという製作側の熱意にやられました。
sow_miyaさん
コメントありがとうございます。レビューも拝読させていただきました。
ご指摘の点、私も同感です。
原作のテーマが疎かになっているのではないかと云うのも納得です。「英雄」とはいったいなんなのか。とても大事な個所を無くしてしまったのは甚だ残念です。
換骨奪胎の見事さは、アバンタイトルまでのまとめ方や、オンちゃんらの戦果で建てた小学校にヤマコが赴任して、そこに飛行機が落ちるところとか、金門クラブのくだりとか、国吉と徳尚をまとめるとか色々ありましたが、自分には、ウタ関連の端折り方が、どうしても納得できないラストにつながってしまって、残念に思っています。
ひなさん
コメントありがとうございます。
そんなことないです。恐縮です。
観終わった後にパッと浮かんだいくつかのワードを組み合わせてそれっぽくしているだけなので😅



