「大事なことは怒りを持たぬこと」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 セッキーかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
大事なことは怒りを持たぬこと
平凡な税務署員である熊沢は、軽自動車を購入しようとしたところ詐欺にあう。この詐欺の犯人は天才詐欺師の氷室であることが分かる。勘づかれたことにすぐに気付いた氷室は熊沢に詐欺により得た金を返金し、示談を持ちかける。そこで、氷室の提案により巨額脱税者を騙して納税させようと話を持ちかける。仕事に情熱的な真面目な部下や過去にその脱税者の関係者により自殺した同僚の想いを胸に熊沢はその話に乗るのであった…。
まず、一言言わわせてほしい。私は元徴税吏員であるが、所長絡みの数億円の脱税などはまず存在しない。公衆の面前で税金の話を持ちかけることなどもっての他である。税務署員側も未収納金のノルマは実際には地区別であったり、種類別であったりする。税金を舐めてはいけない。納めなければ、機械的に金から物品まで差し押さえて終了である。本当に恐ろしいのは警察じゃない、税務署である。
とまあ、この話はここまでにして。本作はこんなことを気にせず楽しむジェットコースタータイプの映画である。
序盤の詐欺にかけられるシーンから詐欺集団の形成、チームの協力まで、時々詐欺がバレてしまうのではというハラハラ感があることでストーリーがだれることがない。詐欺集団のキャラもカメ止め同様ひとりひとり立っているし、最後のトリックも鮮やかである。このトリックには矛盾点はなくスムーズに受け入れられるものとなっている。
熊沢が抱えるストレスや立場にはひどく同情する。この負の感情を正攻法ではないが、滞納者と戦うエネルギーとして爆発させている。なにより公務員として無気力で仕事をしていた彼が詐欺に加担するようになってからイキイキとする様は愉快である。7人目のスクワッドを最後に回収するところもまた見事であった。