「ソレガ"普通"」ニューノーマル U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
ソレガ"普通"
予告には裏切られたのだが、考えるにそこそこ面白かった。メッセージ性があると言うか、総体的に思うのはタイトルがいい。
「ニューノーマル」
新しい普通とか新常識とか、普通っていう漠然としたカテゴリーは更新されていくかのようなタイトル。
「普通」って単語から想起するものは、平均値とか大多数を占める考え方とかだとは思う。
つまりは、どんな考え方や価値観であっても大多数がソレを共有するならば「普通」となり得る。
そこで、この作品なわけだ。
オムニバスで複数の主人公が登場する怖い系の話なのだ。どのエピソードも怖くはあって、ソレが目的ならば退屈もしないんだろうなぁと思う。
俺は違ったから、あくびもするのだけれど。
ただ切り口は面白いなぁと。
冒頭に猟奇的な殺人とか、ちょっと信じ難いニュースが羅列されていく。
思わず耳を塞ぎたくなるようなものばかりだ。
で、そこから本編が始まるのだけれど…オムニバスで語られるアレコレは、この毎日のように流れてくる許容し難いニュースの一例であり詳細なわけだ。
僕らの日常はそれらの異変に晒されている。
無差別殺人は起こり、悪質な客も業者もいて、身勝手なクレーマーとか理不尽な酔っ払いとか、承認欲求の塊とか、自らを正当化するストーカーとか、閲覧数に血眼になり蚕の幼虫を生で食べるYouTuberとか、悪意と正義を際限なく放出するSNSとか、語り出したらキリがない。
食品偽造とかもこの範疇だし、いじめで自殺とか、政治家の裏金が発覚するも罪を問われない政党もそうだ。離陸を遅らせても自分の意見を曲げない乗客とか。
一昔前では考えられないような事が起こる。
しかも、大量に。引っ切りなしに。
本作ではご丁寧に「いい人」が被害に合う事例も盛り込んである。餌にされる。自衛を怠ってはいけなくて、他人を信じると手酷いしっぺ返しを喰らう。
オレオレ詐欺とかもその部類だ。
善意につけ込まれる。
現実も、今までの普通が適用されず異変に侵食されていってる。もうその異変こそが“普通"になりつつある現実は絵空事ではないのではなかろうか?
…は大袈裟だけど、そんな仮説を読み取ったりする。
だから「ニューノーマル」
トンチが効いてる!
ラストは無差別殺人鬼である女性のショット。
ニュースを見ながら、平然とサラダなんかを食べてる。すてに彼女の中では殺人が日常に組み込まれていて、それが彼女の"普通"だし、彼女自身もそれで"普通"なのだ。
僕らの日常は、今はまだ異常者とカテゴライズされる人々に侵食され始めてはいて、そのうち僕らは"愚者"とカテゴライズされるのかもしれない。
にしても、韓国の街並みはこういう世界観にマッチする。照明とか色味のせいもあるけど抜群だ。
どんな未来が待っているのだろうか?
元々、とある宗教上の概念では、人間界は餓鬼界だったり修羅界だったりしたように思う。
いよいよその本質を目の当たりにする日も近いのだろうか?
とまあ、そんな事をこのタイトルから想起でき、優れたタイトルだなぁと思う。
◾️余談◾️
日本映画の「トリハダ」のリメイクらしいのだが、そのタイトルよりゃよっぽどいいなと思われる…。