「繋がりというほどの繋がりはない」ニューノーマル 田中スミゑ 90歳さんの映画レビュー(感想・評価)
繋がりというほどの繋がりはない
演出や音楽の使い方は、ダサいという向きもあるようですが、好みでした。
ただ釈然としないラストだったのでFilmarksやここのレビューを読み漁って
一応こういう事か、と腑に落ちた感じでした。
パクリになってしまうのでここに記載はできませんが、知らず知らずのうちに、何もかもが説明されすぎたディズニー映画やハリウッドの映画に慣れてしまっていたのかもしれないと感じさせられました。
第二話は臓器売買の話なのかな?
映画のあらすじを読んだ段階で、最後に全てが繋がるのかと思っていたのですが、ふたを開けてみると、各エピソードにそれほどの連関はありませんでした。
特筆すべきは、第六話でコンビニ店員さんを演じていた女優さんで、ミステリアスな美しさ。あの容姿で、都会で自分を見失って自暴自棄な日常を演じていた姿には、独特の存在感があり、強く印象に残りました。
彼女は第四話にもチラッと出てくるのですが、ネット上での彼女は、万能感あふるる「最強の私」です。年収一億ウォンの「兄貴」のフリをして「陰キャ」な男性を子分にし、虚勢を張っています。こういう人、現代のネットに沢山いるよねと頷きながら見ていました。
ブロックBのピオ君がいつ出てくるか期待していましたが、
なんと陰キャニート変態男の役とは。それも演技がうまくて、元アイドルのイメージが変わりました。
もう一回時系列に並べてみると
0日目 韓国の町(ソウルと京畿道)は100年ぶりの異常気象に見舞われ、6月なのに雪が降っている。
この異常気象が、異世界への導入となってる。日常の延長にふと孤独や絶望を感じる人々、それを餌にして、知らぬ間に背後から立ち現れる狂気。
そんな韓国では、日夜、猟奇殺人のおぞましいニュースが流れている。
1日目(6月8日)
以前から話題になっていたマッチングアプリ連続殺人。チェ・ジウはこれまでにもマッチングアプリで何人もの女子大生を殺害していた。この日も2人〇す。
また、深夜のコンビニでバイトしているロッカー志望の綺麗なお姉さんは、先の見えない日常と、這い上がれない韓国の「クソみたいな」格差社会に、静かな怒りと絶望を感じていた。掲示板で「虹」と名乗る男が「ムカつく野郎を〇したい」と書き込んでいるのを見て、気晴らし感覚で彼にハッパをかけてしまう。
2日目(6月9日)
火災報知器の点検に来た作業員に、血染めの服を見られたチェ・ジウは彼も殺害してしまう。
一方で、毎日隣の美女の出勤シーンを覗いている男。ゲームにはまっており、ボイスチェンジャーで男性に化けたコンビニお姉さんを「兄貴」と慕い、自堕落な毎日を送っている。コンビニお姉さんにハッパをかけられた彼は、(12日?13日?少なくとも11日より後)ついに雨合羽を着て美女の部屋に忍び込むが、彼氏であるヤクザに〇されてしまう。
コンビニお姉さんは、本当に人を〇してきたと語る「虹」に、ネット掲示板で遺体の処理方法を指南してしまう。
3日目(6月10日)
コンビニお姉さんの高校の同級生だったyoutuber、ヒョチニが雨の日の配信中にベランダから転落〇してしまう。お金を稼ごうとしすぎたあまりに…と絶望を感じるお姉さん。
翌日の6月11日、午前3時、 バイト帰りのお姉さんは、「虹」が本当に殺人をおかしたのか確かめるために指定された場所に行く。切断されたヤバい物を発見してしまい逃げ出そうとするが、「虹」の顔を見たために〇されてしまう。「虹」の正体は、覗き男が覗いていた美女・ヘヨンの交際相手のヤクザだった。
また、学習塾帰りの少年は、困っている車いすのお婆さんを助けようと「正しいことをしたのに」臓器売買業者に誘拐されてしまう。
4日目(6月11日)
ヤクザはコンビニお姉さんの遺体を持ち帰り、ヘヨンの家の棚に収納する。「俺はまだ2人しか〇してないよ」という彼。(この後3人目を〇し、死刑フラグを立ててしまう。)
5日目以降
覗き男は、意を決して隣の美女の部屋に忍び込む。なお、彼がマンションの中層階からぼーっと路上を眺めているシーンがあるが、そこにチラッと出てくるのが、学習塾帰りの少年を拉致したグループの一人である「ピンクのヘッドホンの男」。つまり、学習塾と、臓器売買業者のアジトと、覗き男の住んでいるマンションと、殺人犯の「虹」が彼女と暮らしている部屋はどれも地理的に近いという事が分かる。
一方で、コンビニお姉さんは「ソンナム市」(京畿道)のコンビニから自宅に帰るまでに、一時間ほどかかっていた。またマッチングアプリの女子大生は〇される当日、お姉さんのバイトしている「ソンナム市」のコンビニでお茶を買っている。チェ・ジウは自宅マンションの上階に住んでいる女子大生も〇しているので、チェ・ジウと女子大生と、男子大学生たちは京畿道のソンナム市かその近辺に住んでいるのだと思う。
一方、「虹」がバラした遺体を捨てに行くなら自宅の近くにはまず遺棄をしないだろうから、「学習塾」「臓器売買業者のアジト」「覗き男のマンション」「虹の部屋」はいずれもソンナム市からは離れた場所にあると推定する。多分こちらはソウル市内。
つまりチェ・ジウによる連続殺人と、彼女がメモに残した叫び「殺さないと気が済まない」を介して、町から町へと連続殺人が伝播しているのだと思われた。そして、あくまでこの映画では発端のように描かれているチェ・ジウ自身も、おそらく何かから心の闇を刺激されたことが殺人行為に走り出した契機だと思う。
殺人行為を遠隔で煽ってきたコンビニお姉さんが、最後は自ら殺害を指示した男に〇されてしまうのは皮肉だ。彼女の待ち受け画面も実は彼女自身のこと(自分自身の心の闇に喰われる)を暗示しているように思われる。
また、マッチングアプリで出会いたい人だったり、優秀な兄姉と比較されて肩身が狭い中学生だったり、孤独と絶望にさいなまれネットでしか人と繋がれない女性だったり、とにかく登場人物がみな孤食の人で、(どのエピソードにも何かを食べるシーンが出てくる、それはエンドロールでも繰り返される)、人と関わりたい、認められたい、愛して欲しい、という言葉にならない叫びを皆がそれぞれに抱えていて、でもその結果見つけたものは「死」で・・・〇したり〇されたりする事でようやく人々が連環を保っている、恐ろしい架空のディストピアがこの作品で描かれている「ソウルと京畿道」だが、それは現実の韓国社会の暗喩なんだろうなーという事を感じた。韓国のダウナー映画ほんときつい。