「やりきれない思いがした。」我来たり、我見たり、我勝利せり 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
やりきれない思いがした。
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いくら自己増殖を旨とする資本主義の本質を突いているとはいえ、創造的破壊はともかくとして、狙撃や殺戮が、クラシック音楽を背景に語られることを許したままでよいのだろうか。独裁者の考えが、優秀な官僚たちに支えられ、大衆への前例のないプロパガンダによって広まり、大量の殺戮を許してしまった第三帝国と同じではないか。あの時も、背景にはクラシック音楽が流されていたが。
これまでも、同じ事態が語られる映画はあったが、少なくとも、第三帝国を扱った最近の映画では、ゲッベルスは事態を把握していて、自分でも責任を取った。また、映画化された「バンゼー会議」の結末としてのユダヤ人の大量虐殺は、世界に隈なく知られるところである。
それなのに、この映画では、いくら陳腐化を免れているとはいえ、何も起こらず、それどころか、能で使われる「謡」が、まるで神主の祈祷の時のように出てきて、天まで届けとでも言わんばかりだった。
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