「エレガントな大富豪の優雅なる冷酷」我来たり、我見たり、我勝利せり Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
エレガントな大富豪の優雅なる冷酷
えー、私ことアモン•マイナートはバッテリーの開発•製造•販売をやってる会社のオーナー兼CEOです。最近、ウチは次世代バッテリーの開発に成功してお陰様で株価も上がり、このたび、欧州一というバッテリー工場を立ち上げる運びとなりました。いつの間にやら、政界にも顔がきくようになりましてね。仕事は楽しいし、家族は私の宝ですわ。私、最近はやりの多様性って言うんですか、それにも配慮して、アフリカ系、アジア系、それぞれ一人ずつの養女を育てています。実の娘はもう13歳になりました。最近、その娘が私の趣味に興味を持ち始めましてね。え、どんな趣味かって? 狩猟を少々……
と(ドイツ語で)語る大富豪のアモン•マイナート氏の狩猟の標的はなんと人間。明るく美しい風景を背景に人が淡々と狩られてゆきます。彼の邸宅や街の様子は清潔感があふれ、未来都市か、パラレル•ワールド下の別世界の都市のようです。そして、さすが音楽の都ウィーンを首都に擁するオーストリアの作品、締めにヨハン•シュトラウスのワルツなんぞが流れてきて、はて、今日はいったい何を見たのだろうか、という気分になります。そんな感じのブラックユーモアあふれる不条理ホラー、私はそんなに嫌いじゃないです。これでもか、これでもかと迫ってくる『サブスタンス』なんかより、現代社会の怖さみたいなものを極端な形にして淡々としかも美しく見せてくれる こっちのほうが好みです。こういうの、日本でリメイクしてくれないかな。邦画のイメージを変える画期的な一作になると思うのですが。でも、韓国に先を越されそう……
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