春の香りのレビュー・感想・評価
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ありふれた日常が幸せだと感じることができる映画です。
「普通のことがしたい」「生きたい」というハルカさんの強い想いと、ハルカさんを想うご家族の愛が溢れる素敵な映画でした。
その中で、ハルカさんと巧くんがかわいくてかわいくて。バナナフィッシュが好きなところも、唐揚げを美味しそうな表情で頬張る笑顔も、真剣な表情でスマホで撮り合ったあとのキラッキラの笑顔も…そりゃ好きになっちゃうよ。
書きかけの「タクミくん」を、巧くんに似せて前髪を変えたり、涙ぼくろつけたりするところ、めっちゃわかる!
闘病シーンはきれいごとでは済まされないご家族の葛藤も描かれているので、いろいろなことを考えさせられました。だからこそ、何気ない日常も当たり前じゃないんだ、かけがえのない日々を大切にしないとな、と痛感しました。
観終わったあと、家族を含めてまわりの人に感謝し、大切に思える、そんな映画です。
もっと多くの方に観てほしいな…。
タイトルなし(ネタバレ)
原作を読んで、映画鑑賞。
春香さん、ご家族の方々、
急に襲ってくる不安な気持ちや、
監督さんが春香さんにプレゼントしたかったというフィクションの部分と、
悲しいお話ではあるけど、春香さんに届くといいなと思った。
若い方に見ていただきたいなと思える作品でした。
桜が咲くたびに思い出して欲しいのは、恋に輝く彼女の笑顔だったと思う
2025.3.19 アップリンク京都
2025年の日本映画(102分、G)
原案は坂野貴宏&坂野和歌子著作の闘病記『春の香り』
膠芽腫と戦った高校生を描いたヒューマンドラマ
監督は丹野雅仁
脚本はカマチ
物語の舞台は、愛知県江南市
小学校の頃に膠芽腫と診断され、摘出手術を受けた藤森ハルカ(美咲姫)は、治療の効果もあって、通信高校に通うことができるまでに回復していた
ハルカの趣味は漫画を描くことで、特に少女漫画のような王子様展開を好んでいて、そのキャラクターにタクミという名前をつけていた
父・孝之(松田一輝)は高校で体育教師をし、母・美佐子(櫻井淳子)は付きっきりでハルカの面倒を見ている
ハルカには少し年上の姉・ユウカ(篠崎彩奈)がいて、高校の先輩の川上(平松賢人)と付き合いだしたとはしゃいでいた
物語は、ハルカが通信高校に通い、そこでクラスメイトの杉山巧(佐藤新)と出会うところから動き出す
自分の王子様と同じ名前を持つ巧はイケメンの高校生で、胸の病気に罹ったのではないかと勘違いするほどだった
母が父と自分の弁当を取り違えたことがきっかけで接点ができたのだが、その後も二人は学校の屋上で秘密の時間を過ごしていく
巧が電車通学をしていると知ると同じように通いたいと言い出し、彼がバイトをしていると知ると、バイトをしたいと言い出してしまう
回復の兆しと捉えていた家族たちだったが、ある日のバイト中にハルカは意識を失って倒れてしまった
主治医の小早川先生(光徳瞬)によると、膠芽腫の再発ということで、新しい手術にて「可能な限り腫瘍を摘出すること」になった
手術中に覚醒させて、会話をしながら脳の機能を確認するというもので、手術は何とか成功を収める
だが、副作用としての精神的な反応、手の痺れや視界不良などが起こり、ハルカは筆を左手に持ち替えて、漫画を描き続けようと試みた
映画は、実話ベースのフィクションということで、どの部分がフィクションなのかは原作にあたる闘病日記を読めばわかる
主題としては、思い出してもらうことの幸せというものを念頭に置いていて、ハルカの人生はこんなにも困難だけど素晴らしかったというところを記録として残しているような作品になっている
実際の闘病生活はもっと大変で鬼気迫るものだったと思うが、映画ではかなりオブラートに包んでいると思う
それでも、自分の意思とは関係なく起こる自傷を認知しているし、「自分が何をしても、生きたいと思っていることは忘れないでほしい」というハルカの言葉は真に迫るものがあった
いずれにせよ、完全虚構だと、ハルカの描いた自分の漫画(実際には描けない思う)を読んだ母親が巧の存在を知って探す、みたいな展開がありそうだが、現実的な路線に着地していたように思えた
ハルカがあんなに楽しそうだったのは何故かということが家族に伝わる内容になっていて、彼女は月1回の出席で恋をしていたことがわかる
彼女は普通のことをしたいと思っていて、その一部が叶っているとも言えるので、母親としてはそれがわかっただけでも良かったのかもしれない
病気はいつ何時自分の身に降りかかるのかはわからないが、何があっても生きたいと願い、生きていることに感謝をするのはとても大事なことだろう
公式HPには「もう一つの物語」と題されるショート動画(両親による語り)もあるので、そちらも重ねて視聴することをオススメしたい
原作をより叙情的に描いた作品
映画「春の香り」を観賞しました。
佐藤新くんの出演が決定した時には原作を読み、映画の公開を心待ちにしていました。
主演の女優さんを初め、櫻井淳子さんも大好きだしわざわざ遠方まで見に行って良かったです。
原作では春香さんの闘病と家族の介護の様子を中心に手記のような形で描かれており、才能に溢れまだまだこれからという時に病気になったご本人の苦悩も伝わってきました。佐藤新くんは春香さんが賞をとった漫画の主人公ということで原作の中ではどのような話かということはわかりませんでした。
映画では春香さんの病気が進行していき生活が変わって行く様子、佐藤新くん演じる巧くんが現実に出会い心を許していく場面が春香さんの心情を通して叙情的に描かれていて、決してドキュメンタリーに仕上げた映画ではなく、漫画とフィクションが見事に交錯してまとめられていて作品としてかなり質の良いものでした。
途中お父さんが堰を切ったように泣き出すシーンから後は涙がとまらず、悲しい感情が何度も押し寄せました。
特にシュークリームや唐揚げを食べるシーンはどんな辛い時も美味しいものを一緒に食べると前向きになれたり乗り越えようとする活力が生まれるそんな印象的なシーンでした。その時に流れた音楽のミスマッチが妙で作品の質がグンと上がった
気がします。
佐藤新くんの原作にはない演技も見所のひとつで、求められる演技の再現性がすごく高い俳優さんだしほんとに表情が良くて、今回の恋愛物もうれしいですが、これからサスペンス、バディものいろんな役を器用に演じていくんだろうなと期待してます。
全国公開を1年くらいかけて少しづつしてそのうち地方でも満席になるんじゃないかと思います。
一緒に行った方たちは春の香りの音楽に出会えたことも良かったと言っていました。
ただの悲しい映画ではない
板橋のイオンシネマで鑑賞
映画を観る前は闘病する女の子の悲しいお話と思ってましたが、闘病における本人と家族のリアルな描写が辛かった
佐藤新演じる巧くんはまさに漫画の中から飛び出て来た男の子だった。2人の場面は美しかったが、今どきのキュンキュン恋愛映画の様なペラペラ感はない。2人ともとても丁寧で繊細な演技だった。多くの人に観てほしい。
もっと上映館増えるといいし上映館での上映回数も増やしてほしい。流石に1回のみの上映は少なすぎ
美咲姫さんと新くんの瑞々しい演技が見どころ!
桜のポスタービジュアルがとてもキレイでそれによく合う美しい主題歌。春香さんの透明感のある瑞々しい演技と巧くんのこんなの誰でも恋に落ちてしまうに決まっている!というような爽やかで包み込んでくれるような優しい笑顔。予告を観てきっと漫画に恋に一生懸命に生きた春香さんの美しい映画になっていると勝手に思っていたが、後半になるにつれてだんだん苦しくなってきた。家族だからわかるそれぞれの辛さがこれが実話をもとにした映画である事を嫌でも思い知る。頭の奥に響く重く低い音の数々に不安感を煽られた。巧くんとの屋上のシーンで印象的だったのが、春香がふと巧くんのリストカットの跡を見つけてしまい、巧くんの過去を知り「ずっと死にたいって思ってた」という巧くんのセリフ。これには胸がズキッとした。ずっと生きたいと思っていた春香さんと死にたいって思っていた巧くん。巧くんは一点の曇りもなくこの映画の希望だと思っていただけにドキっとしたセリフでした。巧くんには病気の事を話して欲しかった。「好きな人ができた、ごめん」で終わらせられた巧くんのメンタルが心配に。家族の物語りであり、実話である事はわかるけれど、映画としては春香さんの架空の恋愛も掘り下げて一緒に乗り越えていくストーリーがプラスされたらさらに深い物語になったのかもしれないとも思うし、2次元的な存在だった巧くんにも現実味が増すのかもしれない。
個人的に美咲姫さんのモノローグの声がとても可愛かった。佐藤新くんのキラキラしただけではないどこか影があるような繊細な笑顔が巧くんのエピソードを聞いた後ではより役柄にぴったりはまった。再発後、夢うつつになっていく中で何度も巧くんの夢を見るシーンの巧くんが印象的。なにが現実か、もう全部夢だったんじゃないかと思ってしまう。最後、屋上で春香さんを抱きしめる巧くんの演技が圧巻だった。一言しか喋らないし、髪の隙間からのぞく目線と呼吸や手の力加減などで見事に感情を表現していて心が震えた。春香さんの夢の中だからこそあんなに美しく儚い2人のシーンになったんだと思う。予告で観ていた巧くんとの素敵なシーンの数々がまさか夢だったなんて・・・桜のラストシーンが幸せそうでここから始まるアナザーストーリーを期待してしまう。
【”奇蹟が起きますように。そして、有難う。”今作は、実話である。映画としての作りはやや粗いが、生きて居る事の有難さを思い出させてくれる今作には、大いなる価値があると私は思います。】
<Caution!やや内容に触れています。>
ー 明日は、あの哀しくも忌まわしい未曽有の天災が起こった日から14年目の日である。そして、今作を観て思うのは、健康で日々、生きて居る事の出来る有難さである。
今作のハルカのモデルとなった坂野春香さんは小学生の時に脳腫瘍を患い、普通の学校生活が送れなくなったという。
如何に辛かっただろうかと思う。年頃の少女が経験する楽しい事を、殆ど経験出来ないのだから。
けれども、彼女はその辛さを漫画を書く事で、乗り越えていたのである。
月に数度しか行けない学校で出会った、イケメンのタクミとの、屋上での昼休みの交流。ラインでの遣り取り。彼女にとって、生きて居る事を実感した時間なのだろうな。
今作のメッセージ”その人は居なくなっても、家族、大切な人の中に記憶は残る。”はとても、貴重な事だと思う。ー
<天災も、難病も突然襲って来る。だから私たちは"その日"が来ても後悔しないように生きなければいけないのだと思う。
そして、家族や友人の記憶に残るように、一日一日を大切に過ごさなくてはいけないのだという当たり前のことを、今作は想い出させてくれるのである。
あの哀しくも忌まわしい未曽有の天災の前の晩、今作を鑑賞して思った次第である。>
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