「監督の気概に★5つ」マミー スー(ジェーンじゃない方)さんの映画レビュー(感想・評価)
監督の気概に★5つ
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監督の強い気概が感じられる作品だ。
そもそもこの事件では、被告の動機が不明確なうえ、状況と矛盾する証言や、杜撰な科学捜査による証拠が採用され、最終的に死刑判決が下された。
上映後に登壇した監督の言葉が、とても印象的だった。
この作品はもともとテレビ放送を目的に制作されたが、すべてのテレビ局に放送を拒否されたという。理由は「袴田事件のように再審が始まっていない案件は扱えないから」とのこと。
つまり、報道機関は本来独立しているはずなのに、実質的には「再審が始まらない限り報道できない」という“空気”に支配されている。それは、メディア間に明確な協定があるというより、日本特有の「空気に抗えない文化」が影響しているように思う。
国境なき記者団(Reporters Without Borders、RSF)によると、報道の自由度ランキングで、日本は先進国の中でも低迷しているが、2024年にはさらに順位を落とし、70位になったという。
この映画は、そんな「空気」と「見えない圧力」に抗おうとする意志を感じさせる作品だった。
なお、作品そのものとは直接関係ないが、地元の市民団体が運営する「くにたち映画館」で本作を鑑賞した。場所は国立市の「谷保(やほ)」という、今回初めて訪れた地域。幼少期に住んでいた頃の昭和の風情がほどよく残る街並みに、思わず心を奪われた。
映画の内容だけでなく、場所や空気感も含めて、心に残る映画体験となった。
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