「優等生過ぎるムファサよりも、「人間味」が感じられるタカの方に親近感を覚える」ライオン・キング ムファサ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
優等生過ぎるムファサよりも、「人間味」が感じられるタカの方に親近感を覚える
ムファサとタカの群れが、はぐれライオンのハンター達の襲撃を受けるところまでは面白かったものの、それ以降の逃避行は完全に中だるみで、ミュージカルシーンでは、思わずウトウトしてしまった。
そもそも、タカの父親の王国を手に入れたハンター達が、どうして執拗にムファサ達を追いかけるのかがよく分からない。
どうせなら、ムファサ達が新天地のミレーレに向かっているということを、ハンター達が「最初から知っていた」という設定にした方が、彼らの追跡に説得力が生まれたのではないだろうか?
ムファサのキャラクターも、頭が良くて、有能で、勇気があって、控えめでといった具合に、完璧過ぎてつまらない。
むしろ、臆病なくせにお調子者で、恋にうつつを抜かすようなタカの方が、余程「人間味」が感じられて、親近感を覚えてしまう。
それどころか、タカの立場に身を置いて、「そういえば、本人に悪気はないのに、他人に劣等感を抱かせてしまう、嫌味な優等生っているよな」と、ムファサに反感すら抱いてしまった。
しかも、タカは、最後の最後に、勇気を振り絞って敵に立ち向うという「成長」を見せるのに、ムファサの方には、そうした「成長」が感じられなかったのも気になる。
せめて、ムファサが、トラウマとなっていた「水に対する恐怖心」を克服したみたいなシーンでもあれば良かったのだが、ラストの水中での闘いも、ムファサが自ら水に飛び込んだ訳ではなく、たまたま水中に落下したからそうなっただけの話である。
そして、何よりも物足りないのは、ムファサが百獣の王になる経緯で、ライオン同士の戦いに巻き込まれたくない動物達が、崖の上からの呼び掛けだけで、「俺達も戦おう」と一致団結してしまう様子には、余りの安易さに唖然としてしまった。
ここは、ムファサが、如何にして「ライオン・キング」になったかを示す重要なシーンになり得ただけに、彼が、民衆の心を掴み、リーダーとして認められていく過程を、もっと丁寧に描くべきであったと思えてならない。
結局、ハンター達を撃退できたのは、「地震」という偶然の賜物のお陰だったというご都合主義なオチにも、釈然としないものが残った。