「納得いかないラストだった」室井慎次 生き続ける者 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
納得いかないラストだった
11月15日の公開を前にして実施された先行上映初日に鑑賞いたしました。初日ということで映画館はかなりの盛り上がりでしたね。
率直に結論から申し上げますと、かなり期待外れでした。
事件解決は中途半端。前編から続いていた「青島との約束」も中途半端。終盤の展開については不満だらけで、続編匂わせの中途半端なエンディング。少なくともシリーズファンじゃない私にとっては最後青島が出てきても特別嬉しくはないんで、多くの不満が残る映画でした。前編はそこそこ楽しめたんだけどなぁ……。
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踊る大捜査線シリーズの登場人物・室井慎次にフォーカスした映画二部作の後編。警察官を辞職し、故郷である秋田県に戻り、犯罪の被害者加害者の家族たちを引き取って生活を送っていた。そこに、かつて対峙した凶悪殺人犯・日向真奈美の娘である杏がやってきてから、室井の周りで様々な事件が起こるようになる……。
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演出がワンパターン。展開が強引。脈絡が無い。
感動シーンの演出がワンパターン過ぎて白けます。これは前編の『敗れざる者』を観ていた時も感じていたんですが、感動的なシーンになる度に「テーレーレーレー♪」って毎回同じBGMが流れるんですよね。「ここ泣き所ですよ~」って言われてるみたいでめちゃくちゃ白けます。観客をBGM流せば涙を流すパブロフの犬だと思ってるのかと思うくらい毎回同じ音楽なんです。
事件についても、あれだけ散々「レインボーブリッジ事件の犯人だ」「これは室井さんの事件だ」とか言っていたのに、結局室井が何かをするわけでもなく他の警察が犯人の場所を突き止めて機動隊が突入して犯人の一人を逮捕。ずっと黙秘を続けていたのに取調室で室井とちょっと話をしただけで懐柔されて自供を始め、「他の犯人もそのうち見つかるだろ」と一件落着。
前編であれだけ険悪な雰囲気だった近所の住民や後編から急に出てきた行きつけの商店の不良たちが、ちょっと話しただけで室井に絆されているのも急すぎて違和感がありました。近所の住民はまだ多少理解できますが、不良と話をするシーンで室井が「お菓子、棚に戻そう!」と連呼するのは完全にギャグシーンなのに、感動的なシーンとして演出されているのが違和感だらけで気持ち悪かったですね。
犯人たちの犯行動機についても「日向真奈美の洗脳だ」の一言で片付ける。家に火をつけた杏に対しても「日向真奈美の洗脳だ」でお咎めなし。それだけ日向真奈美を絶対的な犯罪者として演出したかったのかもしれませんが、便利な言い訳として日向真奈美が使われているだけな気がします。
ちなみに「被害届が出されなかったとは言え、建物に放火した杏は何かしらの刑事罰に問われるんじゃないか」と思って調べてみたところ、刑法109条の「非現住建造物等放火」については「公共の危険を生じかなった場合は罰しない」とあり、被害を受けた唯一の人物である室井が被害届を出さなかった場合は罰せられないっぽいですね。
そして何よりも私が腹が立ったのが最後の展開。室井が雪山で亡くなるシーンです。直前にあった陸の父親の襲撃だったり、死ぬにしたってもう少しドラマチックに感動的に室井を退場させるやり方があったはずなのに、よりによって「犬を探しに山に行って死ぬ」っていう訳分からん死に方にさせられたのは非常に不満です。心臓の病気(狭心症?)を患っているという描写があったのでてっきり心臓の病気で雪山で身動きできなくなってしまったのかと思いきや、救助隊の無線を聞く限りでは「雪崩に巻き込まれて谷底に落ちた」ってことだったのもよく分かりませんし、「犬が離れませーん」って無線もよく分かりません。
これは完全に憶測の話なんですけど、2022年1月にクロアチアの雪山で遭難した男性が、一緒にいた飼い犬と身を寄せ合って温めあい、救助されるまでの13時間生き抜いたというニュースがあったんですよ。そのニュースを見た本広監督か脚本の君塚さんが「これいいじゃん」って感じで強引に差し込んだ展開だったんじゃないかな~と邪推します。それくらい、長編作品のメインキャラクターの退場シーンとしては強引で間抜けな展開だったと感じました。
他にも不満点はいくつかありましたが、とりあえずはこれくらいで。
期待していただけに、消化不良の展開で不満が残る作品だったと思います。