「行動し、声を上げ続ければ、きっと変わる」聖なるイチジクの種 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)
行動し、声を上げ続ければ、きっと変わる
1 国家に奉ずる家族の崩壊劇を通し、体制に抗う信念を見せる。
2 イスラム教の戒律の下、強力な国家体制のイランが舞台。予審判事に任用され上級役人の入口に立ったイマン。妻と娘二人の四人暮らし。女性に義務づけられているベールをつけず逮捕された学生の不審死を端緒に、改革を望む若者たちによる非合法の集会やデモが相次いだ。国家権力は参加者を逮捕し、抵抗した者は発砲や殴打により多くの血が流された。そうした中、イマン家において身辺自衛のため国から貸与された拳銃が忽然と消えた。果たしてその行方は・・・
3 本作では、国家権力の残虐性があらわにされる一方、それに抗う人々の姿を映し出す。公権力の影響は次のようなところに表れた。①元来誠実な仕事人であったイマンが次第に周囲に馴らされ、処刑マシーンとなる。②非合法といえども集会などに参加した同国人に対し公権力は発砲し、女学生が顔面に被弾。そして連れ去られた。③マスコミは政府発表をそのまま流し、真実を求める人は、ネットで情報を得ようとし、権力に抗う人は、スマホを構え実態を発信する。
4 そんな中、消えた拳銃の行方について、家族内の誰もが疑心暗鬼となり、犯人探しが続く。映画の終局において、拳銃の行方が解る一方で家族関係は崩壊する。サスペンスが不穏な空気を纏いテンポアップした後、この家族にとって悲劇的な最後を迎える。
5 それは、まさにイランにおいて長年女性に強いてきたしきたりや公権力の終焉を示唆するものであり、監督のストレートな思いである。願わくば、彼の国において近い将来、話し合いの下で不合理な弾圧が無くなることを望みます。