劇場公開日 2025年2月14日

「「たかがそんな事」で虐げられる不条理」聖なるイチジクの種 regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「たかがそんな事」で虐げられる不条理

2024年12月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

単純

イスラム国家で論議の的となっている女性の人権問題を、一家の出来事に置き換えたサスペンス。近日日本公開の『TATAMI/タタミ』も、母国のイラン政府からの不当な圧力に苦しむ女性柔道家を描いていたが、「たかがそんな事」で虐げられてしまう生き辛さったらありゃしない。正直、終盤の展開は冗長に感じなくもなかったが、最低限のエンタメ要素は残したいというモハマド・ラスロフ監督の意志と汲み取りたい。
誤解や偏見がもたらす「たかがそんな事」は、それらを生む権威に歪みがある。でも、そうした歪みを糧に表現者は訴求力の強い作品を生む事ができる。本作もまた、ラスロフ監督を含む数名の製作スタッフもイランを亡命せざるを得なくなった。幾度となく拘束・収監されようと、しつこく母国に噛みつく作品を撮り続けるジャファール・パナヒ同様、もはやイランは骨太なフィルムメーカーを輩出する土壌となっているのが、なんとも皮肉だ。

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