お母さんが一緒のレビュー・感想・評価
全90件中、81~90件目を表示
三姉妹の悲喜こもごもの物語:2024年最高の喜劇!
三姉妹が母親の誕生日にプレゼントした温泉旅行の旅先で繰り広げられるドタバタ喜劇ドラマでした。
アラフォーの長女・弥生(江口のりこ)、30代半ばの二女・愛美(内田慈)、アラサーの三女・清美(古川琴音)が、目まぐるしく攻守を交替させながら姉妹喧嘩を続ける様子は、笑いの連続でした。特に江口のりこが演じた長女・弥生のキャラクターが最高で、常にイライラした感じの表情やメイク、怒りが感じられる直線的な動きが非常に滑稽で秀逸でした。特に冒頭のシーンで、メガネの鼻パッドの部分にティッシュらしき紙を付けたまま登場。怪我をしているのか、アレルギーの類いで付けているものなのかと思っていたら、実は単に取り忘れていただけということが分かり、笑わずにはいられませんでした。
その後も3人の掛け合いはエスカレートしていきますが、その中心にあるのはあくまでもお母さん。ところが旅に同行しているはずのお母さんは、最初に車の中にいる姿がチラッと見えたものの、顔も見えずセリフもなく、その後は一切登場せずにお話が進んで行くのがミソでした。
いずれにしても、3人ともお母さんや他の姉妹に対して文句を言いつつも、お母さんに喜んで貰おうと自分なりに必死で努力しているのが伝わって来て、そういう土台があるからこそ愛のあるドタバタ喜劇として楽しめたんだと思います。
まだ2024年も半ばではありますが、今年の喜劇映画としては最も面白かったと感じた作品でした。
因みに原作はペヤンヌマキの舞台劇だそうです。ペヤンヌマキと言えば、「映画 ◯月◯日、区長になる女」で監督をされていた方で、同作で初めてお名前を知りましたが、こんな面白いお話を書く方だったのかと、今さらながら刮目したところでした。
そんな訳で、本作の評価は★4.5とします。
【”喧嘩する程仲が良い。めんどくさい三姉妹はお母さんの血をしっかりとひいているし、そんなお母さんが大好きなのである。”今作は可笑しき三姉妹が奏でる、家族の良さを堪能するホームドラマなのである。】
■お母さんの誕生日を祝おうと長女弥生(江口のりこ)、次女愛美(内田慈)、三女清美(古川琴音)が、お母さんと温泉にやって来る。
因みに、お母さんは三姉妹の会話には頻繁に出てくるが、劇中では現れない。
だが、三姉妹の話を聞いていると、相当にメンドクサイお母さんであるようである。
◆感想
・今作は、三姉妹のあーだ、こーだのどーでも良い会話が絶妙に可笑しいし、江口のりこさんの得意技である仏頂面演技が炸裂する作品である。
・二女を演じた内田慈さんの演技も可笑しい。美人なのに、何故か独身。一番真面目だと思った三女を演じる古川琴音さんも何だか可笑しい。
サプライズと言って、妻と別れた子持ちの男をコッソリと呼ぶかなあ。クスクス。
■三姉妹間で勃発する、どーでも良い問題の数々
1.次女愛美が選んだ純和風の温泉旅館に難癖をつけ、果ては彼女の性格にまで言及する長女弥生。
・女風呂の方が、男風呂より小さい。(古い、和風旅館あるあるである。)
・畳が臭い。(あのね、畳はもぐさじゃなくって藺草ですから。クスクス。)
でもって、次女愛美はセンスが悪いと罵る。
2.一重瞼と二重瞼問題
長女弥生だけ一重瞼で、それを彼女は昔から根に持っているのである。
確かに江口さんは一重だけどね。ホント可笑しい。
3.三女清美が、こっそり結婚相手のバツイチ子持ち男のタカヒロ(青山フォール勝ち)を連れて来ていた問題。
彼氏のいない長女、次女が妬みも有りながら歓迎するも、タカヒロがバツイチ子持ちである事が分かった途端の手の平返し攻撃。クスクス。
4.長女弥生が直ぐに切れる問題
お母さんにプレゼントしたマフラーを貶され、床に叩きつけた(らしい)後に、卓球上でアイシャドウが涙で顔の上に、”カオナシ”みたいに流れて不貞腐れている姿。後ろの席のオバサン達、大爆笑している。とても可笑しい。
序でに、直ぐに切れるのは遺伝みたいである。
■今作の構成が巧いのは(舞台劇がベースだそうであるが)三姉妹の遣り取りを聞いているだけで、出演しないお母さんのメンドクサイ人柄が自然と浮かび出て来る所であろう。
<折角のお母さんの誕生日を祝う場なのに、夜に、三姉妹が怒って、過去に遡り妬みあって、泣いて・・、の修羅場のシーンの数々が可笑しい事。
けれども、翌朝、次女の愛美が温泉の近所のパワースポットの神社で汲んできた水をお母さんに飲ませたら喜ばれて、彼女が興奮しながら”美味しいと言って飲んだ!滅多に聞けないお母さんのポジティブ発言!”と喜んだり、長女弥生のプレゼントもお母さんが一晩経って太陽の光の下で見ると”良い色あい”と言われて喜んだり・・。
そして、長女の弥生は持参したアイロンで、前の晩散々ごみ屋敷とか言って貶した二女愛美の服を丁寧に掛けてキチンと畳んであげているのである。
今作は、そんなシーンを見ると、”何だか、家族ってめんどくさい事も在るけれど、良いモノだよなあ。”と思った作品なのである。>
笑わせて泣かせてくれる豪華で最強な3姉妹
舞台のほとんどが、温泉旅館の部屋の中。大事件もありませんが、いざこざが絶えない中、それに絡む3姉妹がとにかく強烈です。長女と次女、長女と三女、そして次女と三女、それぞれの関係性が、うまく描かれていると思います。
長女を演じる江口のりこさんは、いつも通り、期待を裏切らない全力投球。全身(特に顔)で笑わせてくれます。次女を演じた内田慈さんは、あまり存じてなかったですが、多くの作品に出演されている方ですね。延々と続く江口のりこさんとの、バトルは見ごたえがありました。
そして、その二人の戦いを小さい頃から見てきたのか、少し冷ややかな態度なんだけど、意外とクセの強い三女役の古川琴音さん。若手と言っていいのかわからないけれど、最近注目されている期待の女優さんですね。最後にガチギレで、先輩のお二人に負けない名演技でした。
この豪華な3姉妹の最強バトルを、しっかりと堪能させて頂きました。
のりこのツケマ。
母親への誕生日プレゼントに温泉旅行へ行った三姉妹、長女弥生、次女愛美、三女清美と清美の彼氏タカヒロの話。
宿泊する旅館手前にある上り坂で車の立ち往生から始まり、「母親のような人生は送りたくない」を3人の共通ワードに宿泊先岩園館にて3人の口喧嘩が始まる。
部屋に入るなり男性露天風呂の方が広い、女風呂狭い、畳の匂いがカビ臭いと長女弥生の文句から始まり三女清美の「もぐさ」の香りでいい匂いと流してくらから見せていくけど…、母へのサプライズプレゼントで呼び出された清美の彼氏タカヒロ。
このタカヒロが天然なのか鈍感なのかポジティブ野郎でアクセント、三姉妹の喧嘩の間に入っては喧嘩の雰囲気壊す一言や鈍感で察せない感じで笑わせてもらいました。
本作観る前に解説みたら母親の名前なし…、本作観てなるほど!予告から気になってた江口のりこさんの付けまつげと化粧でこんな雰囲気変わるんだなと…いい意味で驚き、気兼ねなく観れて楽しめた。
映画化する理由がある?
みんなお母さんが大好き
みんな人が持ってる物が欲しいし羨ましい。
ましてや姉妹なら身近である分、尚の事。
けどやっぱり姉妹だから、母への愚痴は誰より共感できるのに、それぞれの個性の違いには敏感で、自分にない部分が羨ましいと攻撃しがちな所とかすごくリアルで面白かった。
他人より簡単に敵にも味方にもなり得るというか。笑
それはそうって何度言ったかしら!
そして一緒に笑って泣いてしまった。
なんだかんだ皆んなお母さん大好きなんよね。褒めてもらいたくて一生懸命だった子ども時代。大人になってもやっぱりお母さんへの承認要求は消えないのは、みんな同じなんだ、なと思った。
江口のりこさんがうますぎて、ずっと面白い。すっきりした綺麗なお顔立ちなのに、あんな濃いメイクしてるの初めて見たからどうしたのかと思ったらちゃんと意味があった。笑。
次女は本当に歌がうまかったし、三女はちゃんと歳の離れた末っ子っぽい立ち位置(気を遣いつつも自分がやりたいことは絶対やる。)が上手く演じてたな。
あと三女の彼がすごくよかった。一緒にいたら元気出そう。アフタートークで監督が、たかひろ役のキャスティングについて、ある番組で青山くんをみて、人柄が良い人だなと思っていて今回お願いしたとのことでした。
人柄が良いっていうのを演技で見せるのは難しい、人柄そのものが演技に出ないと難しいので、ナチュラルに人柄が良い彼に白羽の矢をたてたそうです。
なんか納得。
ということで、実際に三姉妹の私がみても、とてもリアルで面白い話だった。筋書きが面白い所に演者さんが上手いので、とても面白く中弛みなく最後まで観られました。
是非夏休み兄弟お誘いの上ご鑑賞ください。
(オンライン試写会は内容に関係せずネタバレ扱い)
今年245本目(合計1,337本目/今月(2024年7月度)8本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
(前の作品 「フェラーリ」→この作品「お母さんが一緒」→次の作品「」)
オンライン試写会に招いてくださったfansvoicejpさまにご感謝を。
何らかの意味で「親離れ」もできていない一方で、お互いにそれぞれ悩みを抱える三姉妹がある旅館で色々繰り広げるストーリーです。「お母さんが」とありますが、母親役の方は作品内で1回か2回か出るだけです。また、映画の展開は大半がどこかの旅館(エンディングロールから、山梨県が舞台であることはわかる)で、その「外に出る」ということは一部を除いてありません。
結局のところ、「親離れができない」三姉妹の問題以上に、「親と子はある程度の適正な距離を取るべき」ということは作品内では明確ではないですが読み取ることはできますし、それは娘でも息子でも基本的には(成人して立派な年であれば)そうであり、その部分にも多少焦点があたっていたのが良かったです。
やや問題提起型とドタバタものの半々的な立ち位置ですが、選んで損はしないかなというところです。
評価に関しては特段気になる点までないのでフルスコアにしています。
古川琴音いいね
結婚できない女たち
ワン・シチュエーションの会話劇は、ペヤンヌマキ原作の戯曲を映画化した作品だそうです。どうも会話の切れ間に(観客を意識した)演劇的なタメを感じると思ったら、そういうことだったらしいのです。9年ぶりにメガホンをにぎった橋口亮輔監督も、あえてその“間”を正さずに原作そのままの雰囲気で演出している気がするのです。“戯曲”が原作である点が、本作にとってとても重要な要素であることを橋口監督はよくご存知なのでしょう。
長女の弥生(江口のりこ)は優等生だが2人の妹に比べて自分が不細工だというコンプレックスを抱いているキャリアウーマン。逆に次女の愛美(内田慈)は弥生に劣等感を持っていて、不倫にはまった挙げ句いまだ独身です。三女の清美(古川琴音)は、なんとフィアンセのタカヒロを内緒で宿に呼んでサプライズ婚約発表しようとするのですが、今までと同様姉2人に邪魔され激しい口論の末、フィアンセを宿から追い出してしまいます。
この登場人物相関を見れば一目瞭然、ウディ・アレン監督の『ハンナとその姉妹』や向田邦子原作の『阿修羅のごとく』同様、アントン・チェーホフの超有名な戯曲『三人姉妹』をベースした作品であることは間違いないでしょう。この『三人姉妹』が後世の国内外ホームドラマに与えた影響の大きさははかりしれない気がします。3人(または4人)姉妹のなじり合いから、社会の世相を浮かび上がらせる帰納演出に何ともいえない普遍性を感じるからです。いつの時代だって結婚は女の一大事、同性婚を認める認めないで大騒ぎしている現代日本だって例外ではないのです。
3人の姉妹が母の誕生日を祝うため温泉宿に宿泊する一晩を描いているのですが、この映画肝心要の“母親”が一度も姿を現さないのです。送迎車の中でその影がチラッと映る程度で、後は自分の部屋に籠りっぱなし、娘たちが喧々諤々の口論をおっぱじめる宿の部屋には決して足を踏み入れないのです。この文句ばっかりで嫌味な母親のせいで、結婚生活に希望を持つことができず、3人姉妹は未だ誰一人として結婚できていないのです。“母親不在→母親になれない→結婚できない”女たちのドラマと言い換えてもよいでしょう。
「私が結婚できないのはお母さんのせいよ」なんて、この映画の江口のりこのように愚痴ってはビールをラッパ飲みしている女性の皆さん、実は結構多いのではないですか。姉2人が嫁き遅れている状況でうかうかしていると私も...なんて焦って男のハードルを思いっきり下げちゃってるあなたも、ここはひとまず温泉の綺麗な湯にドップリと浸かって、今までのしがらみを綺麗サッパリ“水に流して”はいかがでしょうか。
ほら、本人を前にしたらあんなに言いにくかった感謝の言葉も、すんなり口をついて出てくるかもしれません。夫婦水入らずとは言いますが、水よりも濃い血で繋がっている親子や姉妹の場合、多分そういうわけにもいかないのでしょう。帰りの電車の中ではすっかり湯冷めした女たちは、やれ浴場が狭い、お湯がぬるい、ご飯がイマイチ、三女のフィアンセの悪口なんかで、また罵り合いをはじめるのかもしれません。最後は、母親どころか三姉妹の姿さえスクリーンから消えてしまうのです。それをゲイの監督が演出しているのですから、意味深ですよね。
全90件中、81~90件目を表示