「突っこみながら楽しむ」エイリアン ロムルス ココヤシさんの映画レビュー(感想・評価)
突っこみながら楽しむ
『エイリアン』第1作を劇場で鑑賞したのは高校生時代だったかな。以来、「もうネタ切れじゃね?」と思いつつ、エイリアン・シリーズは全作鑑賞している(『AVP』も含めて)。
本作もずいぶん以前から楽しみにしていた。だから封切日の初回上映に駆けつけた。観客は40人ぐらいだったかな。
もちろん気になる点もあった。たとえば――
第2作でリプリーの脱出ポッドが回収されたのは、第1作の57年後という設定だったはず(たしかリプリーの冬眠中に子供が死去してしまうという設定もあったが、これは編集段階でカットされたらしい)。本作でウェイランド・ユタニ社がリプリーの航海日誌からエイリアンの存在を知り、ノストロモ号の残骸からエイリアンを回収し、ジャクソン星の衛星軌道上の宇宙ステーション「ロムルス」で研究を進めたのは、当然そのあとということになるが、第2作で描かれたように、そのころには同社はすでにLV-426で植民を進めていたはずだから、ちょっと時系列的に辻褄が合わない。
第1作の最後でノストロモ号は大爆発するから、残骸は四散し、本作で描かれたようにひとかたまりで宇宙空間を漂うということはないと思う。
ジャクソン星は1年中太陽が出ない鉱山星という設定だが、そのとおりなら絶対零度に近い寒さで、とても人類が宇宙服なしでは生存できないはずだ。
ジャクソン星の周囲には土星の輪のようなリングがあるが、あんなに密度の高いリングが何万年何億年という間そのまま周回しているとは考えにくい。いずれ互いの重力で引かれ合って、いくつかの衛星に収斂されていくのではないかな。
エイリアンの繁殖方法が謎だ。第2作でエイリアン・クィーンが卵を産む描写があるが、本作ではノストロモ号の残骸からエイリアンが1体しか回収されていないはずなのに、ロムルスにはおびただしいフェイスハガーがいる(このような矛盾は他のシリーズ作品にもあるが)。
エイリアン・シリーズの世界では重力発生装置が存在しており、このためエイリアンを傷つけると強烈な酸性の体液が漏れ出して施設の床を溶かしてしまうのだが、本作では宇宙船の外殻まで溶かされてしまう描写がある。とすれば、重力発生装置は「宇宙船の外側」にあるのだろうか。
本作ではロムルス内の無重力空間をエイリアンの体液がアメーバ状に漂う描写があるが、表面張力からいってあんな形状にはならないはずだ。
――とはいえ本作は、『プロメテウス』で描かれたような「地球生命体の起源」といった高尚な話は影をひそめて、娯楽作品に徹している。シリーズ各作品へのオマージュもあふれている。突っこみどころを楽しみながら観るのも、ひとつの鑑賞方法だと思う。
尚五郎さん、コメントありがとうございます。
自分の言う「子供」というのは、リプリーが地球に残していた実子のことです。リプリーは57年間も宇宙空間を漂流したすえに救出されたので、その間に地球に残していた実子が死んでしまったという裏設定があったそうです。リプリーがLV-426で見つけたニュートの救出に必死になるのは、亡くした実子にニュートを重ねていたからだということです(おっしゃるとおり、ニュートも救出の甲斐なく死んでしまったことが、第3作で明らかになるのですが)。