「ダルマとチャーリーの受難の正義の旅」チャーリー Niraさんの映画レビュー(感想・評価)
ダルマとチャーリーの受難の正義の旅
久しぶりに同じ映画を映画館で2回観た。とにかくチャーリー役のラブラドールの演技力がすごかった。
幼い頃に両親と妹を不幸な事故で亡くした主人公ダルマ。インドという国で子供が孤独に生きていくことがどれほど大変なのか想像もつかないけど、家族を亡くしたことを充分悲しめずに心を閉ざし、ただ生きることに必死だったのだろうと思う。
そうして誰にも頼らない、人付き合いもしない日々を繰り返すある日、悪徳ブリーダーの犬舎から脱走したチャーリーと出会う。
家具は壊す、吠えるといったラブラドールの子犬あるあるの元気いっぱいなチャーリーを最初は受け入れられないダルマ。慣れない生活のストレスでか、倒れてしまう。倒れたダルマを心配するように、必死に吠えて呼びかけるチャーリーの様子や、救急車で運ばれる後を追ってきた姿に心を動かされダルマの凍っていた心が溶け始める。
その後、ダルマがチャーリーと暮らしていくことを決め、幼い頃から好きなチャップリンの愛称にちなんでチャーリーと名付ける。
チャーリーと暮らし始め、タバコもやめたダルマが周りの人にも少しづつ心を開き始めたある日、チャーリーが血管肉腫で余命わずかと診断される。
命僅かなチャーリーに何ができるのかと悩んでいたとき、チャーリーがテレビに映る雪を見ているときに飛び跳ねて喜んでいることに気がつき、ヒマラヤを目指す旅が始まる。
と、ここまでで164分と長い映画の半分ほどを使っている。これは正直日本の映画では考えれない長さだが、冗長とも思えるシーン一つ一つに意味があり切り捨てられなかったのだと思う。というかこれは日本映画との文化の違いで切り捨てるという考え方がないのだろうし、これでも十分切り捨てているのだろうと思う。
ここからヒマラヤを目指す中でも盛りだくさんの旅が続くが、道中バイクが故障した際に助けてくれたヴァムシナダンと黒ラブのカルッパのシーンは文化の違いを鮮明に感じた。
黒ラブのカルッパにヴァムシナダンが、不倫して出て行った元妻のように俺の元からいなくなったら殺すぞ、と言ったようなことを言うシーンがあってこれは翻訳でマイルドにしても良かったのではと思ってしまった。
その後のアジリティのシーンはやや過剰というか映画としては音楽が流れてるからドッグパフォーマンスのように見えるけど、実際は無音な訳であれでスタンディングオベーションはないよねと思ってしまった。
そこから先も、ダルマの給料が未払いでお金が尽きたり、ヒマラヤ目前で地滑りで通行止めになったりとトラブル過剰ではあったが、無事にチャーリーに雪を見せることができたダルマ。チャーリーを失うことをきちんと悲しめたことで、家族を亡くしてから心を閉ざしていたダルマの人生は本当の意味でリセットされたのだと思う。
ラストにかけての展開もご都合主義ではあるけれど、映画なんだからこれぐらいいいじゃないかと言いたい。
どれだけご都合主義であってもフィクションはフィクションらしくあればいい。
血管肉腫に対しても悪徳ブリーダーでの近親交配が原因というところまで描かれていて、動物愛護をきちんと表のテーマとして扱っていたことがよかった。
インドの文化をきちんと理解できていないため、日本人的感覚ですこし暴力的に感じてしまう部分や疑問符がつくシーンはあるものの、とにかくチャーリーの演技力が素晴らしく、最高の映画。
余談かつ本編には関係ないがパンフレットがややお粗末だった。なんというか、もう少し撮影風景やオフショットを入れてチャーリーのかわいさをアピールするとか、演者のプロフィール紹介を厚くすることはできなかったのだろうか。宗教や文化を背景とした解説はありがたかったが、誰だかよくわからない人のコメントが載せられていて映画の余韻に浸るには十分な内容だったとは思えない。