劇場公開日 2024年6月28日

「 とにかく元気いっぱいの愛くるしいチャーリーの演技ぶりが見事。中に人が入っているかと思うくらい芸が細かく、仕草が可愛いいのです。」チャーリー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 とにかく元気いっぱいの愛くるしいチャーリーの演技ぶりが見事。中に人が入っているかと思うくらい芸が細かく、仕草が可愛いいのです。

2024年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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 本作は孤独な男とやんちゃなラブラドール犬が南インドからヒマラヤを目指して旅に出る姿を描くロードムービー。
 5年以上の歳月をかけて撮影され映画大国インドで「サンダルウッド」と呼ばれるカンナダ語映画として歴代5位の興行収入を記録しました。主演のラクシット・シェッティとしては歴代最高額の興行収入を記録した作品です。

 歌って踊り、観客を楽しませ、感情にも訴える、そんな大ヒットが記憶に新しい「RRR」のように近年、日本に紹介されるインド映画には娯楽大作のイメージがついて回ります。けれども、違った形の良作もあるりです。この作品は、BGMとして歌は流れますが、踊りなしの王道のロードムービーです。とりわけ犬が好きな人は、涙なしには見られないででしょう。

●ストーリー
 南インド・マイスールで暮らす男ダルマ(ラクシット・シェッテイ)は、職場でも自宅の近所でも偏屈者と言われていました。彼は過去の悲劇がきっかけで周囲との関わりを避けていたのです。
 毎日イトゥリ(発酵蒸しパン)ばかり食べ、酒と煙草とチャップリンの映画だけが日々の楽しみに生きる孤独な日々を過ごしていました。
 ある日、ダルマは野外パーティの騒音に苛立ち、ステージに乱入して強引にパーティをぶち壊します。
 そんな彼の元に、ある日悪徳ブリーダーのもとから逃げ出してきた一匹のラブラドールの子犬が、放浪の末にダルマの住む街へやってきます。このワンちゃんも、あのお祭りの夜、爆音のステージに悩まされるのですが、ダルマがステージをぶち壊したことでダルマを気に入り、彼の家の前に住み着こうとするようになるのです。
 犬嫌いのダルマは追い払うとしますが、ある事故がきっかけてこの犬と心を通わせるようになるのです。そして、子犬に「チャーリー」と名付けて迎え入れます。やんちゃでイタズラ好きのチャーリーに振り回されながらも楽しい毎日を送っていたある日、チャーリーが血管肉腫で余命わずかであることが判明。ダルマは雪が好きなチャーリーに本物の雪景色を見せるため、お手製のサイドカーにチャーリーを乗せて、インド縦断となるヒマラヤを目指す旅に出ます。

●解説
 とにかく元気いっぱいの愛くるしいチャーリーの演技ぶりが見事。中に人が入っているかと思うくらい芸が細かく、仕草が可愛いいのです。そして心からダルマを頼り、愛し、時に心配する心情が伝わってきます。チャーリーを演じたラブラドール・レトリーバーの感情豊かな名演が本作の最大の見所です。
 ほかにも見所がたっぷりで、ダルマが愛して止まないチャップリン映画へのオマージュの数々も面白いところ。ヒマラヤ山脈を目指す旅路では、南インドの緑あふれる町並みから、青い海が広がる海岸線、地平線の先まで続く荒野、そしてヒマラヤといったインド各地の多様な景色も物語を鮮やかに彩っていて、地理的な豊かさが感じられる映像も堪能できます。

 道中、色々とあって迎える結末に驚きはしませんでした。但し、悪徳ブリーダーによる劣悪な飼育環境や近親交尾による子犬の増産によって、難病やガンにかかる飼育犬が増えている問題など、痛烈なメッセージを目の当たりにし、ハツとさせられます。感動だけでは終わらせない、世代問わず心に響くであろう一本です。

 犬嫌いのダルマと、人間不信になりかねない虐待を受けたチャーリー。本来なら絶対に交わることなんてあり得ないひとりと1匹が反発しあいながら互いに愛情を育み、ともに生きる喜びを取り戻し、灰色だった世界が輝きだしていく姿に感動できました。

流山の小地蔵