リッチランドのレビュー・感想・評価
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キノコ雲はマッシュルーム・クラウド
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フォロワー同士のコメント交換に気になる作品があったのでチェックしたら、なんとまだ至近の映画館で上映中、明後日まで。
台風接近中、行くなら今日しかない。
2024.8.29(木)
「リッチランド」をシネマ・チュプキ・田端で。
初めて来たシネマ・チュプキ・田端は、ビルの1階に入っている5人4列キャパ20の映画館である。ネット予約は出来るがカード決済なし、現地清算、座席当日先着指定。全作品(邦画も)日本語字幕付き音声ガイド付き。座席に音声ガイド用イヤホンジャック有り、イヤホン無料貸出。
「リッチランド」は「オッペンハイマー」と同じ年に作られたがアプローチが違う。
マンハッタン計画でのプルトニウムを製造するためにアメリカ政府はワシントン州南部の先住民族の土地を取り上げ、核燃料生産拠点ハンフォード・サイトで働く人々とその家族ために街を作りリッチランドと名付けた(「オッペンハイマー」のロス・アラモスを思い出す)。
長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはここで精製されたものだ。終戦後は冷戦時の核兵器の原料生産を行い、現在は国立歴史公園に指定され多くの観光客が訪れ写真を撮っている(「関心領域」のアウシュビッツ博物館を思い出す)。
施設では膨大な量の核廃棄物の処理と除染が行なわれている事が説明されている。
放射能汚染で死んだと思われる子供たちだけの墓地もある。防護服も無く作業に従事してガンでなくなった住人もいる。
除染作業は今も続いており、放射線が消えるのは10万年後である(「100,000年後の安全」を思い出す)。
思えば「100,000年後の安全(2010)」は放射性廃棄物処理に関する素晴らしいドキュメンタリーだった。
リッチランド高校の校章は、Rの文字にキノコ雲である。このキノコ雲は街中のいたる所に掲げられている。従軍した老人は「原爆が戦争を終わらせた」といい、日本からキノコ雲のマークを変えろと言われれば「戦争を始めたお前らが言う事か」。
アメリカ人にも多くの核廃棄物による被爆者(死者も出ている)がいて、現在も除染作業が行なわれている。それなのに核廃絶など議論もされない。
色々な事実が抱合されていて興味深いのだが、如何せんドキュメンタリー映画としての完成度が低い。広島被爆三世の川野さんが現地の集会に登場しても尻切れでまとまりがない。ラストに彼女の作った実物大のファットマンのモニュメントをリッチランドに飾ったのも狙いが不明(説明不足)だ。
映画としての出来、不出来はともかくも、観てその内容は把握して欲しい、と言ったらおかしいか。
原爆を作って落とした側も、原爆を落とされた側も、そしてそれ以外の国も、原爆(核兵器)に対して次のステップ(核兵器廃絶)へ踏み出そうとしていない(むしろ使用をチラつかせている国がある)現状が一番絶望的か。
そこに暮らす人々の奥底にある感情を淡々と引き出している。とても好印象の映画。
最終日にやっと行けた。一緒に行ったお二人もとてもいいと評価。両面性のある住民の意見や歴史について丁寧なインタビューと音楽、詩、アートで、普通に人々の言葉を繋いでいく。押し付けがましくもなく、その奥底にある感情を淡々と引き出している。女性のアイリーン・ルスティック監督・製作・編集。
★長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはハンフォード・サイトで精製されたもので、そこで働く人・家族のために作られた町がリッチランド。
リッチランド高校の壁に描かれている大文字の「R」から噴き出すキノコ雲、高校のフットボールチーム「リッチランド·ボマーズ」や、町中にあるatomicの名前を使ったいろんな看板、Tシャツなどは、このまちを誇りに思っていることを象徴している。
だが、リッチランド高校の学生たちが自由にキノコ雲や町の歴史について語りあるシーンは、若い自分たちが何か変えられるのではと思う反面、何も変わらないと思うなどのやり取りがあり、とても印象的だった。
★リッチランドはもともと先住民の土地だった。その先住民の嘆き悲しむ声。除染作業に従事する人々。快適な町だが、川の魚は食べないと語る人。放射能汚染被害者への僅かな補償、そもそもそれは問わないという取り決め。当初の劣悪な仕事環境。「亡くなる直前、『信じる相手を間違えた』と父は言っていた」と父親の被害を語る女性。多くの幼児が眠る墓所。音楽も合唱曲やギターデュエットなどでその思いを表現。
★ポスターとなっているインスタレーションは、広島の被爆3世であるアーティスト·川野ゆきよが、リッチランドを訪れ、祖母の着物をほどいた布を、自らの髪で縫い上げ、長崎に落とされた「ファットマン」の造形を実物大の大きさで形作ったもの。
今日、8月9日は長崎の原爆投下の日
長崎に生まれ育った者としては、義務感に駆られて鑑賞。
予告編で学校の校章にキノコ雲を使っているアメリカの都市があると知って、何でそんな悪趣味な事をするのかと許せませんでした。
学生達がキノコ雲の校章を変える事の是非について語っていたが、
「 校章を変える事に反対する人もいるかもしれないね?」
って、呑気に語っているとこが何かズレていると思う。
ラストシーンでは、ポスターにもある通りファットマンの模型を現地に展示するのだが、
「 何でそんな被爆者の神経を逆撫でするような事をするんだ?」
と思い、模型の製作者を調べてみたら、広島原爆の被曝3世のアーティストだった。
悪いけど、このアート、Chim↑Pomeが広島の上空に「 ピカッ」 の文字を浮かべたのと同じにしか思えない。
原爆製造の影響で、赤ちゃんが死亡したり川の魚が食えなくなったりと何故この汚染された土地に住み続けているのかが理解できない。何とも後味の悪い映画でした。
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