リッチランドのレビュー・感想・評価
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『オッペンハイマー』が描き切れなかったものが描かれている
原爆開発のために作った町の今を追うドキュメンタリーという、日本にとっては他人事ではない作品だ。この町の繁栄は、核兵器開発によるもので、人々はそれを誇りに思っている。高校の校章はキノコ雲だし、町にはいたるところに原爆にちなんだショップ名を冠した店がある。しかし、人は放射能汚染を恐れてもいる。事実、多くの人が健康被害にあっている。そして、映画は土地を奪われた先住民にもスポットを当てる。先祖から受け継いだ土地を奪われたあげくに、ほとんど永遠に清浄化できないほどに放射能汚染されてしまった。
ノーランの『オッペンハイマー』が描くことをしなかった側面が数多く取り上げられている。広島の被曝サバイバー3世のアーティスト川野さんのアートが映画のラストに出てくるが、非常に力強いイメージを映像に与えていた。多方面に思慮深く作られており、日本人にとって観る価値ある内容だ。アメリカというもう一方の原爆当事者の表と裏を見られるという点で、非常に貴重な作品だと思う。快不快を超えて、きちんと他者を知るために、この作品は広く見られるべきだ。
きのこ雲の校章
コンセプトは良いのだけどキレイに作ろうとしすぎた感があるなぁ
問いつづける
今から80年近く昔、原爆開発のマンハッタン計画の一端として放射性核物質製造基地としてワシントン州の砂漠に建設された街リッチランドでは長崎に投下された原爆のプルトニウムを製造し、戦後も核化合物製造の道を歩んで来ました。
街の人々は原爆開発に寄与出来た事を誇りに思い、地元の高校の校章は何とキノコ雲であり、フットボールチームの愛称は「Bombers (ボンバーズ:爆撃機)」、ボーリング場は「Atomic Bowl」、通りには「Nuclear(核)street」の名が付けられています。まず、そんな街があり、その名がRichland (豊穣の土地)であると言う事に驚きます。
一方で、核物質製造の過程で生じた廃棄物を無秩序に地中に埋設廃棄して来た為に、広い土地が汚染され立ち入り禁止になっています。また、その土地そのものが元々アメリカ先住民の土地だったのに米軍が勝手に接収してしまったという暗黒史もあります。
そして、街の人々の考えも錯綜しているのです。古くから核施設で働いて来たお年寄りは、原爆が終戦を早めたと確信しており、
「日本から街の名称やシンボルを変更するよう申し入れがあったが、『戦争を始めたお前たちが言う事か』と言ってやった」
と語ります。それはアメリカ人の偽らざる思いなのでしょう。
また、キノコ雲の校章は変えるべきだと言う若い人も、「では、日本への原爆投下は正しかったと思うか」と問われると言葉を濁してしまいます。これもまた偽らざる思いなのでしょう。
それはまた、「核兵器廃絶」を唱える日本の人々が「では、アメリカの核の傘から逃れるのですか」と問われると妙に言葉を濁す事に通じるものだと思います。広島選出の議員である事を表看板にしながら、原爆記念日の挨拶では毎年変わらぬ抽象的な空言を繰り返すだけの首相の顔が思い浮かびました。
マンハッタン計画
日本人からすると信じられない!
絶望的な気持ちになるドキュメンタリー
8/6,9前に観ておきたいと思い、また、宮崎キネマ館さんの支配人からオススメいただき鑑賞しました。
率直に申し上げて、絶望的な気持ちになりました。
原爆・平和については、いろんな人のいろんな立場、考え方によって、意見が異なるし、
それは正義が異なっているとも言え、
人間がこの先、本当に平和的な世界をつくり出せるのか?は甚だ疑問になりましたし、
少なくとも私が生きている内に、そんな世界を見ることはないだろうという
絶望感でいっぱいになりました。
いろんな正義がある以上、世界は平和にならないのかもしれませんが、
平和にしていくことを諦めたら、そこで終わりだと思うので、
人間が学ぶ生き物であることを信じて、自分ができることをやっていきたいなと思った次第です。
私は恵まれている
美しい街の持つ語りがたい歴史
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