劇場公開日 2025年4月4日

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「イアン・フレミングは只者ではないという話」アンジェントルメン Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5イアン・フレミングは只者ではないという話

2025年4月6日
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感想

イアン・フレミング、ダブルオーセブンシリーズの原作のキャラクター設定や基本プロットは原作者自身がそれ相応の経験を踏まえないと創造し得ないと感じてはいたが、第二次世界大戦時の実話として英国紳士の鏡とされる大英帝国軍人が作戦行動上非紳士的な規定違反を犯し、且つ組織的にも異端行動を貫きながら世界の歴史をも変える事になった重要なミッションを達成して知られざる英雄譚の中心人物となったジェームス・ボンドのモデルと言われるガス・マーチ=フィリップスと英国陸海軍切っての精鋭中の精鋭であるその仲間達に彼が秘密作戦を指令し、危険をも顧みない一見して無謀な策だが実は全て緻密な計算に基づき構築され、さらに現場での大胆な作戦変更判断をしたというエピソードに改めて驚愕すると同時に想像を遥かに超えてくる話が大変興味深く面白さに満足しながら鑑賞することができた。

寄港地の島に駐屯しているドイツ兵とイタリア船乗組員が弱すぎるというレビューに対しては違う見解を持っている。殺しのプロフェッショナルが何人も集まり一つの目標に向かい計画的に結果を出す姿は監督ならではの趣向でまんざら大袈裟な演出になっている事も多少は有ると思うが、今回はどちらかと言うとよりリアルさを追求したのではないかと観ている。実戦時に船舶強奪後、短時間に一気に双方向(①船舶内にいる敵兵駆逐、②港湾部の機関砲台占拠と歩哨駆逐、高射砲台の破壊)に進出すると決めた場合、音も無く進出するその場に現れた人間は全てサイレンサー付きの機関銃と弓矢で敵をばったばったと忽ち薙ぎ倒してしまう描写は充分に有得る話である。公開されている事実情報を読んだ訳では無いが作戦の詳細な経過と発生した問題についての分析、さらに作戦行動全体についての結論的アナライシスは出ており監督とスタッフは読み込んでいるのではないか。相手が弱すぎるのでは無く、其処の暗闇にいる訳のない敵が突然現れて不意打ち喰らわせてくる雰囲気を映像的に上手くリアルなアクションとして表現していたと感じる。決して寓話的な展開を意図して創り上げている映像だけには見えなかった。

製作・演出・脚本・音楽
製作
「トップガン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」
シリーズのジェリー・ブラッカイマー。
昔はチャラい新進プロデューサーという印象であったが、着実に経験を重ねて今や流石と思わせる名作の製作に顔を連ねる常連のハリウッドの名プロデューサーとなったという印象。

監督・脚本
ガイ・リッチー
「コヴェナント」「コードネームU.N.C.L.E.」
今回は2016年に英国諜報機関(元英国海軍諜報部・特殊作戦執行部)から正式に発表された事実資料を元にして本作の脚本が構成されている。内容としては事実であるだけに話は骨太の内容で各登場人物の会話の一つ一つまでにリアリティを感じられる素晴らしいものであった。演出的にはエンターテイメント性を重視した今時の映像創りでアクションとしても充分なデフォルメが成されていてガイ・リッチーらしい作品に仕上がっている。往年のJ・リー・トンプソンやガイ・ハミルトンの正統なる後継者としての地位を揺るぎないものにしてきていると感じる。新しいダブルオーセブンが製作されるとすれば彼の他にはJ ・ J・エイブラハムズ、またはジェームス・マンゴールドと言った辺りが挙げられるだろうが、ガイ・リッチーは監督として最適任者と勝手に思っている。

配役
ガス・マーチ=フィリップス役のヘンリー・カヴィルはアクション映画での定石俳優になりつつある。
イアン・フレミング役でエドワード・フォックスの息子であるフレディ・フォックスが出ており時の流れを感じた。他、頭脳明晰な精鋭軍人ジェフリー・アップルヤード役をアレックス・ペティファーが演じている。そつがない演技で印象に残る。今後の活躍が期待される俳優の一人と感じる。

音楽
クリストファー・ベンステッド
エンニオ・モリコーネのマカロニウエスタンのostを彷彿させるイメージで斬新な印象を受けた。スラブ系JAZZ曲調の要素があり素晴らしいostだと感じる。

バランス良く面白かったので⭐️4.5
文面追加訂正2025.4.8

Moi
トミーさんのコメント
2025年4月27日

共感ありがとうございます。
最近のガイリッチー作品はダークさが薄れた気がしますが、英国風味はまだ強いですね。しかし茹でザリガニは不味そう、コレも英国味?

トミー
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