「史実をエンタメに昇華!」アンジェントルメン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
史実をエンタメに昇華!
作品の詳細情報は知りませんでしたが、アクション系の洋画は好きなので、公開初日に鑑賞してきました。なかなかおもしろい作品で満足度は高かったです。
ストーリーは、第2次世界大戦中、ドイツ軍により劣勢を強いられていたイギリス軍から特殊作戦執行部に呼び出されたガス少佐が、障害となっていた北大西洋に展開中のドイツ軍のUボートを無力化せよという極秘任務を命じられ、選りすぐりの部下と共に、敵にも味方にさえも見つかることが許されぬ非公認ミッションを遂行する姿を描くというもの。
戦時中の極秘任務ということで、複雑な駆け引きが描かれるのかと思いきや、アクションを主体にしていることで、とても見やすく痛快な作品に仕上がっています。軽いノリでサクサクとドイツ兵を血祭りにあげていくのは、少々緊迫感には欠けますが悪くないです。特に、チームの重要メンバーとして迎えるべく、敵に囚われている男を救出するためにある島に向かうのですが、ここでの戦闘が最高です。その場のノリで作戦を変更し、白昼堂々と襲撃し、敵を完全に翻弄する姿が痛快です。
チームメンバーもキャラが立っていて、それぞれの得意技を生かした見せ場が用意されているのもいいです。中でもラッセンは、見た目のインパクトもさることながら、弓矢の精度と破壊力がすさまじく、ナイフを持たせれば容赦なしのメッタ刺しで、本作きってのヤバめなキャラとしてかなり印象的です。
また、別動隊として情報収集にあたるマージョリーとRHの活躍も見逃せません。列車内で巧みに情報を入手し、即座に打電するシーンは、なかなか見応えがあります。美しさ、賢さ、大胆さに加えて卓越した銃の腕前をあわせもち、女スパイのお手本のように描かれるマージョリーが、とても魅力的です。
そして、なんと言ってもこれが実話ベースというのに驚かされます。もちろん多分に脚色されているとは思いますが、非合法に組織された、国家による保障や後ろ盾が何もないチームが、高難度任務を成し遂げたという事実にびっくりです。ほとんどの登場人物には実在のモデルがいるようで、さらにガスは007ことジェームズ・ボンドのモデルにもなっているらしいです。なるほど確かにそんな匂いを感じる人物像です。
本作は、実際の作戦に即して描かれるため、聞き慣れない地名も多く登場します。ですが、地図で勢力範囲や進行ルートを表示してくれているので、とてもわかりやすく、当時の状況に詳しくない自分でも、チームの狙いは理解できました。逆に、マージョリーとルアー大佐の会話はよく理解できないところもありましたが、まあストーリーからおいていかれることはなかったので問題ないです。
本作のように歴史に埋もれそうな史実にスポットを当てた作品は、本当に勉強になります。鑑賞中に、以前に観た「オペレーション・ミンスミート」を思い出しました。確かあれも、第2次世界大戦中にイギリスがドイツに仕掛けた作戦を描いていたと思います。後世に残すべき史実を、エンタメ色を強めて世に知らしめるというのも、映画の重要な役割の一つではないかと思います。今後もこのような作品が作られ続けることを期待します。
主演はヘンリー・カビルで、大胆不敵なガスを好演しています。脇を固めるのは、エイザ・ゴンザレス、アラン・リッチソン、アレックス・ペティファー、ヘンリー・ゴールディング、ティル・シュワイガーら。
「オペレーション・ミンスミート」面白かったですね、あんなバカバカしい作戦を大真面目に遂行した結果、大成功でドイツ軍まんまと騙された、事実は小説より奇なりってこういうことだなと思いました。
本作もそんな奇想天外さがあったら良かったのに、と思いました。