「ファンにも新規にもオススメなオリジンストーリー!」トランスフォーマー ONE 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)
ファンにも新規にもオススメなオリジンストーリー!
玩具メーカーであるハズブロ社とタカラトミーによって展開され、アニメ、コミック、ハリウッド実写化と様々なメディア展開で、誕生から40年経った現在でも世界的に大ヒットしている『トランスフォーマー』シリーズの3DCG作品。
後に正義のロボット軍“オートボット”と、悪のロボット軍“ディセプティコン”に分かれ、銀河の命運を賭けた戦いへと身を投じていく事になるそれぞれの軍のリーダーが、かつては親友同士だったというコンセプトで描かれるオリジンストーリー。
私自身は、幼少期にアニメ版をチラホラ、主にハリウッド実写シリーズをメインに追ってきた身なので、本作で描かれる様々な要素が新鮮で楽しく映った。また、実写シリーズを追っているだけでも、「あれ?コイツって確か?…ですよね〜w」と、楽しめる要素満載の作りになっているのは嬉しかった。
“オートボット”のリーダー:オプティマスプライムとなる若き日のオライオンパックス、“ディセプティコン”のリーダー:破壊大帝メガトロンとなる若き日のD-16。それぞれが偉大なリーダーや悪のカリスマとなる以前は、トランスフォーム(変形)に必要な“コグ”というコアを抜き取られ、トランスフォーム出来ない落ちこぼれの作業用ロボットだったという設定。この作業用ロボットという設定は、実は40年前に既に誕生しており、2010年頃に改めて整理された基本設定から来ている様子。
また、冷静沈着な頼れるリーダーであるオプティマスが、かつては少々楽観的なお調子者。冷酷残忍な悪のカリスマ、メガトロンが仲間思いで真面目な優等生タイプというギャップも楽しい。
しかし、その楽観的ながらも希望を持って前へと進む姿勢が、オライオンに“リーダーのマトリクス”を与えて“プライム”の名を冠するオートボットのリーダーに。真面目故に、信じていたセンチネル・プライムに裏切られ、深い絶望と復讐心から破壊衝動を爆発させ、D-16は破壊大帝メガトロンへと変貌していく事になってしまう。この両者の対比が見事で、特にメガトロンは闇落ちする理由に共感出来、彼の新たな魅力が追加されたように思う。
個人的には、ディセプティコンのNo.2であるスタースクリームが、かつてはサイバトロン星の親衛隊隊長(No.1)だったという設定に驚いた。しかし、やはり彼は永遠のNo.2であり小物。D-16を挑発して潜在能力を引き出させた途端、彼にリーダーの座を奪われてしまう呆気無さが堪らない。声の出演であるスティーブ・ブシェミの特徴的な声も相まって、格好付けてもキマらない所も◎。
側近であるサウンドウェーブとショックウェーブに対する、ビーの「“ウェーブ”多くない?」という視聴者目線のツッコミにもクスリとさせられる。
「親友と袂を分かつ」という王道一直線の作品ながら、随所に散りばめられたイースターエッグについて調べたりと、鑑賞後も楽しむ事が出来る厚みのある一作。実写化シリーズの方は、『ビースト覚醒』によって仕切り直された世界観に、新たにハズブロ社のG.I.ジョーが参戦する事が公式に発表されたが、本作もアニメ映画シリーズとして更なる展開を期待したい。