劇場公開日 2024年9月13日

「「おもちゃの拳銃」の価値」ジガルタンダ・ダブルX sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「おもちゃの拳銃」の価値

2024年9月23日
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鑑賞方法:映画館

導入は、ハッキリ言って、ちょっととっ散らかってるし、こちらも誰が誰だか違いも見分けられないので、頭の整理が追いつかなかった。だが、人物たちの関係が明確になってきてから、俄然面白くなってきて、3時間近くがあっと言う間だった。
主要な登場人物たちが、一部を除き、善か悪かのシンプルな二者択一ではないので、その複雑さが物語に深みを与え、後半の展開の面白さや感動につながっていったように感じた。
ラスボスは、まあ読めるといえば読めるのだが、あまり気にならない。それ以上に、イスラエルとパレスチナを思い起こさせるような、または身近でも日常的に見られるような為政者による人権侵害に対して、この作品が訴えるメッセージの迫力が優っているからだろう。
映画の中で、8ミリ映写機を「おもちゃの拳銃」に例える場面が出てくる。そして、拳銃と8ミリカメラを向け合うショットがポスターやパンフレットの見開きでも使われている。その8ミリカメラという武器が持つ価値は、監督が観客を信頼して初めて効力を発揮すると思うし、スッバラージ監督はその力を信じているのであろうことがストレートに伝わってきて、心を動かされる作品だった。
本編中でも、銅像がさりげなく登場するガンディーが訴えた「非暴力不服従」は、これも本編で描かれていたように、圧倒的な武力の前には余りに無力なように見える。だが、様々な人々がガンディーに学んだ非暴力不服従は、世界の至る所で花開き、現状を変えてきた。
例えば、今ならバンクシーの作品群が、社会に投げかける大きな影響力を持っているように、「芸術」という「おもちゃの拳銃」の持つ意味や価値が、そこにつながることを、この映画から改めて感じた。
クリント・イーストウッド愛にも溢れていて、そこも観ていて楽しい。インド映画が好きな方にはおすすめ。

sow_miya