心平、のレビュー・感想・評価
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三人の言動も心情も痛いほどわかるし兄弟は強い
2024年劇場鑑賞65本目 傑作 78点
近年だと、死体の人やこいびとのみつけかた、ありきたりな言葉じゃなくてなどの邦画ミニシアターであったり、きみの瞳に問いかけているやグッパイクルエルワールド、春に散るなどの興行作品にも引っ張りだこな奥野瑛太主演で彼が作品を大いに引っ張っている作品
上記の邦画ミニシアター三作品で言うと、今作と死体の人は主演で、こいびとのみつけかたとありきたりな言葉じゃなくては存在感のあるちょい役として出演していて、主演作はどちらも彼ありきのキャラクターで、死体の人は社会や知識が乏しく純粋にまっすぐ育った役者志望の青年が何者にもなれずもがいている時期に出会う、同じく何のために生き続けているのか悶々としている女性と出会い、死体役者と現実の生死の意味の見出し方を織り交ぜ人生を演じていく主人公であり
今作は3年前に起こった原発事故により農業ができなくなり、食い繋ぐような暮らしを送る父と妹と軽度の知的障害を抱える奥野瑛太演じる主人公の3人の止まった時間が動き出すような、再生と絆を描いた作品
本作は3者のキャラクターの心情が痛いほど伝わるほどの設定と、それを純度100%で演じている役者陣には、日本アカデミー賞のような見る目ない祭典でない、日本映画の本物が集う祭典で、見る目がある人に評価されてほしい、そんな3人である
まず、父が農業を失い生きる希望もなく、ただ死なないだけのような日々を送っており、知的障害を患った息子に対して、彼の今後を想像し、自分より長い命がありながらも、公私共に苦労も社会からの仕打ちも待っていることが容易にわかるからこそ、せめてもの手向けじゃないけど、持て余す時間をパートにあて、それで得た小銭を息子にお小遣いと題して恵んでいるのが、悟りを開いた虚無感のようでなんとも居た堪れない
主人公の知的障害具合とその演じ具合が秀逸で、軽度だからなのか、幼少期から人の痛みに一定の理解があるからなのか、自分を中心に周りからの扱いや冷ややかな目、無言の暴力のようなものを、少し肌に感じているような様が表情やその後の気性を荒げる動作で伺える
心に秘めた恋心を所謂普通に伝えれないむず痒さや、その想い人も本来は心優しい人なはずなのに、人目で丁寧に接してしまうと同じように煙たがられ村八分にされてしまうと想像し、付き合う人を選ばざるおえない、これも悲しくも所謂一般的な選択に心が痛い
傘を川に放り投げるシーンや上手く自転車が漕げず逃げ遅れるシーン、そんな想い人といい顔して美味しいところを持っていく小林リュージが車内で見られていることをいいように心無い仕打ちを披露された現実を受けいらられないあのシーンなど、悲しく不器用な優しい主人公の悲しい現実を映し出すシーンのどれもがえぐられるように印象的である
上記二人の演技から設定まで紛れもなく秀逸だが、そんな二人よりも個人的に印象的なのが妹であるいちごだ
彼女が優位つ閉鎖された村の中で一般的な生活を送っており、仕事に家事など奮闘している
だが、そこには直接的には語られなくとも諦めた夢や苦い過去があるのは容易に想像ができる
それは未来を諦めた父と未来が暗い兄の面倒や尻拭いに追われ、女性として一番輝く20代を、棒に振るっているからである
本当は閉鎖的な村を出て境が広がる東京に出て、夢もあっただろうしいいものを身につけ(誕生日プレゼントにハイブランドの財布が欲しいとぼやくところから伺える)チヤホヤされてりいい思いもたくさんして、適齢期には結婚や出産もして、所謂わかりやすい女性の幸せを送りたかったに違いないのに、現実は父の自暴自棄じゃないけど、他者(特に妹に)に心無い言葉を放ったり、家事をしてあげているにも関わらず今父が不自由なく衣食住を送れている所以の妹に対して、早くここから出ていけなど(これもこんな先の見えない我々なんぞおいて1日でも若いうちに自分の人生を謳歌しろと愛の鞭とも取れる父の言葉だが、疲弊した女性の耳にはそのままの言葉の意味で通じるに決まっていて、思いやりが交差している)言われる始末
一番近くで過ごしてきた兄の本質を知っている所以、きるにきれず村の人々も心平に対して優しくしていてもそれは偽善というか、本当に思いやっている人は彼女だけなので一緒にになって未来を照らしたいと考えている
だけどふと我に帰り私ずっとここで誰のためになんのために何してんだろうと虚無に駆られ、幸せを志し半ば諦め、ある種一番未来があるにも関わらず自らの正義でそれを閉ざしてしまった彼女の秘めた葛藤が、個人的に今作の一番の胸グソであり最も悲しポイントであった
最後、3人の思い違いや優しさが届かないやるせないを抱えながらも、外部には到底理解できない当事者にしか心が通わない楽園を見つけた時に、少しだけ救われる、通い合えるラストにたくさんのことを考えさせられました
是非
心平。なあ、おまえはここに居ればいいんだよ。
ここで生きていく、なのか。ここでしか生きられない、なのか。
ラストシーンを見るかぎり、ここで生きていこうとする心平の決意は感じるが、はたして彼ひとりで生きていけるのか不安は拭えない。結局誰かの助けは必要で、でもその助ける誰かも誰かの助けは必要で、結局社会は、何人もの人のつながりで成立しているのだろう。人それぞれに性格や能力があるように、人それぞれに社会における役割がある。心平は、心平のできることをやればいい。これは、閉塞した今の日本の過疎で日常的に起こっている問題。障碍者、高齢者、、社会の弱者はいくらでもいる。年老いた父と障碍をもつ兄を持つ妹のいちごだってその一人だ。
日本全国旅をしてもかつての繁栄の面影はいくらでも目にするが、華やかな未来を予感させる風景(それは大都会東京も含めて)はひとつもない。この先、日本はどうなってしまうんだろうという不安しかない。
先日、与党総裁選におけるニュースで、かの若手候補が「年金受給は80歳を越えてからでもいいのでは」と言ったそうだ。日本の男性の平均寿命は81歳なんだぞ?40年近く(もしかしたらそれも延ばすのか?)払ってきて、たった一年しか年金がもらえないってことか?
また、東大の授業料も来年から2割増し(54万5800円→64万2960円)だそうだ。国立最高学府はまったく縁はないが、それでも気の毒に思えてしまう。タダ同然でさえいいと思うのに。
国は、なにか方向性を誤っているよな。なあ、心平。
いちご。
震災から3年後の福島で暮らす35歳の知的障害を持つ35歳の男とその家族の話。
仕事が続かず父親から小遣いを貰っている心平が、帰還困難区域よ空き家に入って空き巣を繰り返し…というストーリー。
知的障害を持つ主人公が題材とはいえ、倫理的どうなんだろうと思っていたけれど、一応心平の理屈は筋が通っていてちょっと安心…まあ最低だけどねw
それよりも一平は自分がこの先働けなくなった時のことをどう考えているのかがまるで画かれず、モヤモヤモヤモヤ…いちご頼みですかね?
いちごが結婚しないのか出来ないのかは判らないけれど、心平のことの影響はありますよね。
ということで、寧ろ主人公は妹なんじゃないかという感じ。
重い空気感になっていなかったのは良かったけれど、もうちょっとテンポ良くみせて欲しかったかな。
家族
心平がどうのというより、 震災後の福島の人たちの日常生活、みたいな...
心平がどうのというより、
震災後の福島の人たちの日常生活、みたいな映画だった
そのせいか、
心平の症状とか態度とかに一貫性がなくて、
場面場面での都合通りの存在の仕方だったけど、
この映画の場合はそれでいいかな
いちご、がんばれ!
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