ナミビアの砂漠のレビュー・感想・評価
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女性監督の良さ悪さ
このご時世に性別を踏まえるのも適切でない自覚はありつつ、女性監督らしい作品を観たなあという印象でした。有名どころの名前を挙げさせていただくと、西川監督、河瀬監督、またエンタメ大作のラストマイルの塚原監督であっても同じことを感じるのですが、メッセージありきの画作りがちょっと過剰かつそのメッセージ自体は集中して画面を見て頭を回している私にとっては凡庸と感じる部分が多いです。ただし、その一方で恐らく監督がそんなに深く考えていないであろう部分で物凄く印象なシーンや役者さんの演技を見る機会が多く、この映画に関しても例に漏れずという感じでした。これは決して悪く言っているわけでなく、すぐ忘れる大作を見るくらいなら、一瞬でも忘れられない瞬間を見ることが映画だと思うので私は女性監督の作品というだけで価値があると思っています。すいません、全体としては好みの作品ではありませんでした。
山中遥子×河合優実による新風!
冒頭、河合優実演じるカナのキャラクターの解像度を上げていく演出がなされていき、
共感できる人ではないなと感じます。
友達と話していてもどこか上の空でヒトゴト。そこに共感する人もいるかもしれませんね。
カナと同棲している寛一郎演じるホンダは、カナに優しく接しながらカナのことは何でもわかっているつもりだけれど、
全然わかっていない悲しいヤツだったりして、そこから逃げ出すように金子大地演じるハヤシと付き合うようになるものの
カナとの生い立ちや育った環境が全く異なるハヤシとの生活は徐々にすれ違っていき、
カナは双極性障害になる程、精神的に追い込まれていきます。
自身がおかしくなっていることに気づき医者に診てもらう判断をするカナは
自身を客観視できるほどの冷静さを持っており、しかも、状態を良くしようと善処していくことに
人間的な強さを感じるものの、ハヤシへの暴力はやまなかったりして、なかなかに大変な状況になっていくのですが、
そういう演技をできる河合優実は本当にすごいと思います。
今作で体当たりの演技を見せてくれていますが、今後ますます活躍することでしょう。
最後半のキャンプやエアロバイクを漕ぐシーンなど、現実なのかカナの妄想なのかわからなくなりますが、
それでも生きていくカナに勇気をもらいました。
それにしても山中遥子×河合優実のケミストリーがハンパなく素晴らしい。
今後にも期待しています。
壊れていく
2024年。山中瑶子監督。仕事も順調で優しい彼氏もいる21歳の女性主人公。しかし、やりたいことがあるわけでもなく、人の欠点や社会の理不尽さはやたらと目についてしまい、満たされない日々を送っている。そんな中、彼氏とは別の男に徐々に惹かれていき、、、という話。
後半に精神科医やカウンセラーが出てくるように、徐々に壊れていく主人公(壊れていくことを自覚していく主人公)を描いている。恐ろしいのは、特にきっかけがなくても、普通に生きているだけで人は壊れていくという筋で展開していくこと。カウンセラーにも指摘されるように、主人公は内面化した理想を相手にぶつけ、自分にもぶつけて壊れていく。
そんな主人公が時々スマホで呆然と眺めているのが「ナミビアの砂漠」の水飲み場に集まる動物たちのようだ。生きづらい人間の世界と対比されているのは間違いない。
大共感
カナと同種の人間すぎて、前半の壊れる前のカナのシーンは、なんだか自分も落ちうる地獄を観ているようなしんどさがあったが
一度壊れてしまった方が、映画の世界にぐんぐん入っていけてある種の心地よさと、笑ってしまう感じでこの映画のことが愛おしくってしかたない。ってなりカナとどこまでも落ちていけるような気持ちになった。
映画はカナとゆうどこにでもいる女の子が緩やかな放物線を描きながら落ちる、そして緩やかな回復の間口に立ったところで終わる回復の映画だと思った。
タイトルにあるナミビアの砂漠の様に(映画のタイトルで私もずっと観てたあのライブ配信チャンネルじゃんって思っていたけど、そのものずばりだった。このチョイスもなんだがすごく現代的だなと思った)傷つき、動けなくなった人も、砂漠の水溜りに集まって休んで癒される野生動物の様に逞しさをもって生きていけるよ。と背中を押してくれる作品だ。
カナは暴力も振るうし、口も悪いし、無気力だし、優しい彼氏も大事にできないし、ほんとうに褒められた人間じゃないけど
だからこそめちゃくちゃに共感してしまった。
河合優実ちゃんは主演3本目かなと思うけど、彼女の歩き方、ものの食べ方まで作りこむようなその人にしか見えない演技力の高さが遺憾無く発揮されてるのもファンとしては嬉しい。
ハヤシの何喋ってもムカつく感じとかも、なんかいそう〜こんなやつ〜〜〜って思ってすごかった。
他人から見ると絶対優しくて大事にしてくれて、浮気もしない(?)ホンダの方が絶対に良いんだけど
自分を大事にできていない人間は、自分を大事にしてくれる人とは付き合えなくって、だからこそハヤシに対しては感情をぶつけられるし、喧嘩ができるのも分かる気がした。
ホンダの風俗行っちゃったくだりも、子供を降ろした嘘(ここもほんと酷い)のとこもホンダの純粋さゆえのおかしみがあって好きなシーン。
カナのキャッチに罵られてキレるのも、会ったこともない女性が降ろしたかもしれない子供について怒りを爆発させるのも、私としてはめちゃくちゃわかる〜
知らない女だとしても、自分もなりうる最悪なことを目の前の男が原因の一旦を担ってて、忘れてたわとか言ってたらね、最悪じゃんね。
ぶん殴りたいよ分かる。何がクリエイティブだよ?悪影響振り撒くなよな。
その怒りもカナ自体が破綻してるから、説教くさくない純粋な怒りとして映画に存在するのがいい。
濱口監督組の俳優がいっぱい出ていたけど
どの役者さんも、最高の働きをしていてめちゃくちゃ良かったなぁ
特にクズ界の新生だと思ってる(もちろん役として)中島歩のとこは声出して笑いそうだった…何?あのエジプト背景。
カウンセリングのシーンも良かったし、唐田さんの理解してくれる他者としての存在感とかよかったなぁ…
焚き火のシーンは邦画界に残る名シーンだと思った。
ハヤシと取っ組み合いしても、普通に買い物言ったり、でもそのあとボコボコに殴ったり
そんで脳内世界に飛んで、あーなんか疲れたな〜ってなんなの、この映画はすごい最高だった。
エンディングも良い。
人って単純じゃないよね
人って単純じゃないよね,人一人でも複雑なのに二人,三人…,と関わる人が増えていったらそれはそれは大変なことになりますよ.Complicatedですよ.っていうことを河合優実演じるカナを通して客観的に見ることができました.
人っていろんな顔を持っていると思うんですけど,カナって特にいろんな顔を持っていて,しかもそれがオセロみたいに正反対だったりします.ホンダの前ではワガママで自由奔放,ハヤシの前ではかわいいくて理解ある彼女,職場では無愛想・淡白,映画後半ではバイオレンスで躁鬱な一面も見られました.文章で書くと,この性質全部備わっているカナってやばくない?って思うかもしれませんが,全然そんなことなかったです.人によるとは思うのですが,私はカナのこの性質が好きです.普段は真面目に過ごしているけど,知らない場所で自由奔放に歩き回ったり,バイトでは無愛想だけど,就活では愛想良く振る舞うとか,いろんな顔をひょこひょこ取り出しては仕舞って,自分を生きやすくしたり生きづらくしていることに心当たりがあるな〜って人もそこそこいる気がします.私も心の中にカナがいます.
登場人物の性格と関係性も面白いなって思いました.性格は,カナは体たらく,その場しのぎ,調子良い,頑固,ホンダは面倒見良い,家事する,几帳面,弱気,ハヤシはボンボン,チャラい,高学歴,亭主関白という感じがしました.そしてカナとハヤシはそこそこ対等で,カナとホンダはカナの方が上みたいな力関係に見えました.だからカナと付き合えるのか〜と,カナに惹かれる男性二人の気持ちもなんとなく理解できるのもまた面白いですね.
夜明けのすべて
「サマーフィルムにのって」で認識して「愛なのに」で虜になった河合優実サマ。いまやドラマでもバリバリご活躍されて嬉しいやら少し寂しいやら苦笑
「あんのこと」に続いて難しい役どころ。というか「そろそろ少し纏めて休んでは如何?」と思う位に際際なキャラクターを演じる事が多いですよね。そこが素敵とも言えるのですが、ガス抜きもしっかりして頂きたいと思う次第でございます(何様?笑)
映画本筋の物語よりも「脱毛」に関するアレコレがずっと頭の片隅から離れない作品。なんならずっとその会話メインで展開してくれてたらめっちゃ好きだったかも笑 それじゃあ何も纏まらないでしょうけども。ファンタジーな男子が二人出てきますが、後々思ったのが「この作品の視点てずっとカナの心象風景なのかな?」という点。そうするとなんだか奇妙な人物像や展開の繋がりなんかも彼女の"脳内"と捉えられなくもないわけで。そんな感じで、観た時の感想と日々思い出して出てくる感想が変わっていく"自分の脳内映画"として楽しめる側面もあるのかもしれません。わかりませんけども笑笑笑 インディーズ映画調なので取っ付き難さはありますが、触れて、考えてみるのも一興だと思える作品でした。
タイトルなし
河合優実が素晴らしい俳優という事。cmで歌も歌っていますが下手でホッとする。投手休んでる大谷翔平ぐらい「良かった。この人も人間なんだ。無理な事あるんだ」って感じる。
最近ずっと共感できて理解しやすい恋愛もの、青春ものの邦画しか存在しないようなので、
なんだか理解しきれないけどわかるような気がする、器の大きい、規格外の表現、つまりTVではなく「芸術」、「映画」らしい映画
がまだ完成できた事を幸運に思うべきかも。濱口竜介と三宅唱に並べていい程度には才能がある監督だと思うし、こういう作品が海外の賞に関係なくホイホイ形になるような邦画界であってほしい。
じゃないと地味に「日本で、映画が映画じゃなくなってる」
映画じゃないなら作らなくていい。
邦画が死にかけてるからなあ。
まあよくわからなかったけど。
女の子の日常って、本人が思ってるほど面白くないんだよなあ。生き物って大変。
ナミビアに行ってほしい。
ナミビアの砂漠って映画なのでナミビアって何処?と調べると、アフリカ南西部にある国であり大西洋の海岸線沿いに広がるナミブ砂漠が有名。さまざまな野生動物が生息しており、中でもチーターの数が多いことの事。河合優実が鼻ピアスしてるし、きっと彼女は何らかの理由で「ナミビア」に行くんだろうなぁ〜と思ったが、全くそんな話ではなく、全編を河合優実にフォーカスしたドキュメンタリー風の群像劇だった。
映画を見た頃は「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の再放送を観てたので、私の中では河合優実はちょっとドジだけどどんな困難も明るく真っ直ぐな気持ちで克服する七実ちゃんだし、その前の「あんのこと」では、とんでもない境遇から必死に抜け出そうともがき苦しむ杏ちゃんだった。しかし今回のナミビアの砂漠は真逆のキャラクター。
カナは心優しいホンダの気持ちを振り切りちょいカッコいいクリエイターのハヤシの元に走るものの、カナに対し特段悪いこともしてないハヤシが癇に障り大喧嘩をして階段落ちの大怪我をしたにも関わらず、更に喧嘩を仕掛け、遂には少し精神も病んでしまう。
こんな女嫌だ〜の典型なのに、何故か憎めない。
多分、地頭は良いのだろうから、ホンダも振り切り、ナミビアに行ってチーター並みの俊敏さでビジネスでも始めたら成功するんじゃない?とかも思う、。
監督・脚本の山中瑶子さん、カンヌで賞も取った若手。本格的長編映画の第1作。面白い映画ありがとうございます。次回作も期待してますよ!
”今”を感じる映画
タイトルは、おそらくカナがスマホで見ている風景のことで、その風景(ナミビアの砂漠)に癒しというか、逃避というか、そんなものを抱きながら現実社会を生きているっていうことなのかなって思った。
カンヌでなんかの賞を取っていて、若い監督で、役者も新進の若い役者で、”今”を感じたくて観たという感じ。
2024年にわたしは43歳になる。大学卒業して、社会人になってちょうど20年。
カナが生まれたのが2002年とか?映画内現代が何年かはわからなかったけど、たぶん2023とか2024で、その現代の21歳だからたぶん21世紀生まれ。
寛一郎演じるフラれる同棲彼氏の感じは、20年前にはいなかったタイプだなーとか、
エステ脱毛はまた生えてくるらしいよねとか、
今の若い子もたばこ吸うんやなとか(若いから吸う気もする、それは私もそうだった)
イルカの入れ墨の彼氏は、裕福なおうちの子で、絵コンテとか持ってたから映画作りたい人なのかなとか、
思った。
カナは如才なく軽い仕事をして軽い人付き合いをして、恋愛は適当で衝動的で、
という感じなんだけど、入れ墨彼氏の持ってた胎児のエコー写真あたりから様子が読めなくなる。
同棲彼氏が縋ってきた(公道でうずくまって泣くところすげー)とき、あたし中絶したんだよねって、ゆってたのは同棲彼氏との子じゃないよね。本当に中絶したかもわからない。
でも、そのあとの入れ墨彼氏とのケンカを見ている限り、もっとほかのだれかに望まない妊娠をさせられている可能性がある気がした。
それは、ひとりである家の前まで行って、家には訪ねず引き返したあたりから、そこが実家な気がして、で家族が頼れないっぽいし、お母さんは中国系で中国の親戚んちにいる?みたいだった。
で、カウンセラーにロリコンのたとえを出していたので、父親に妊娠させられた?という嫌な想像をした。
その真偽は不明だし、そこを描く話ではないので分からないままでいいんだけど、そうなのだとしたら、
カナの不安定な感じはわかるかもって思った。
感じたいと思った、”今”は感じられたし、監督と役者の個性も味わえて楽しかった。
とはいえ、21歳なんてもう全然戻りたくないねって思う。
ちゃんと大人というか中年、老いた人になれてよかったって思った。
なんかしてるのに何にもしてない、なにをしているのかわからないまま何かに駆られるみたいな感じ、
(自分と彼氏がけんかしてるところをピンクの部屋のジョギングする機械でスマホ画面からカナが見てる感じがまさにそれっぽい)
あの制御不能さは、遠くなったけど遠くていいやって思った。
観客は、その映画館ではほとんど見ない、若い人達が多かった。
とりわけアート方面のとんがった風貌の若者が目につき、新鮮だった。
わかる人にはわかる系
揶揄するわけではなくて、印象としてはそんな感じ。脚本も演者も良かったと思う。カメラワークだけが自分の好みではなかった。かまってちゃんというよりは、境界性パーソナリティ障害の話ではあると思うけど、隣人や自分に心当たりがあると心がえぐられるような感覚だった。今も昔も実は身近にある話なのではないかなと思った。
漂う21歳の都市生活者
21歳のカナは、優しく世話を焼いてくれるサラリーマンのホンダと同棲中ながら、脚本家志望のロマンチストのハヤシと浮気中。どちらにものらくらと良い顔をしながら、浮遊するように生活する。初対面の男達との飲み会に友達を置き去りにし、エステ脱毛なんて意味がないと思いながらバイトしている。
ハヤシに乗り換えてまた同棲するが、喧嘩が絶えず大騒ぎ、きっと隣人の女性にバレている。
怪我したのを利用して、ハヤシをホンダのように自分に従属させるように仕向ける。
カナに未練を残し泣く前彼に困惑してヘンナヒトと呟き、どれだけ弱さを見せられても自分は決して本音を言わない。大声を出される事に恐怖を感じるカナは、育った家庭に問題があった事が示唆される。精神科にかかり、自分が病気である事で許されようする。
若い女にありがちな不安定さと残酷さと愚かさをうまく描いている。だが、そこに強い思いが無い。
これだけの時間を使って丁寧に物語るのに、カナの劇的な変化も、本音も見せないままで終わる。
これだけ悪辣な事をしても、可愛いから許されてしまう。本当に孤独になる事は無い。
なぜかカナは映画の中で守られる。そのせいか、力作ではあるが、感動しなかった。
若さ
40代も半ばを過ぎた私からすると、何で寛一郎と別れるの、もったいないって思うんだけど、よくよく思い出したら、私にもあのような事があったような。
終盤の不安定さも、あそこまでじゃないにしてもあったような。
河合優実と金子大地は似合いすぎなの。素敵💕って思っちゃうもんね。
付き合い始めが盛り上がったカップルこそ、ああなりがち。
父親に対する気持ちがあるからこそ、何かあの写真の事許せなくて辛くなってしまったのか。
それにしても、ボーっとしていらん事言ってしまった内容が真意で笑えた。
トイレのシーンはおばちゃんには全く理解不能や。
冒頭のシーンは何か分かるな。あるよ、ああいう時。
トップレスのシーンはいらんかった。そういうの求めてないの。
これはもはやファンタジー
思ってもいない展開。観る人を選ぶ作品になった。自分的には今年の日本映画のベストワン候補だ。
河合優実さん演じる主人公のカナ。
わがままで奔放なイメージでスタート。
Mな自分は気持ち良くもあり。
とことん尽くすタイプのホンダ(寛一郎くん)からクールな印象のハヤシ(金子大地くん)に同棲相手をスイッチ。ハヤシに対するあざとさにカナの別の一面を見る。恋のマジックというべきか。
堅いものほど折れやすい。
カナの尖った部分が社会と抵触した。
カナの心の振れを逃げずにグッと受け止めたハヤシにびっくりした。もっとチャラい奴だと思ってた。
後半は「ぐるりのこと。」や「生きてるだけで、愛。」を思わずにはいられない展開。カナの心が静まれとひたすら祈った。
ちなみに中島歩さんが演じたメンタルクリニックのクソのような医師がリアル過ぎた。実際こんなクソばっかなので治るもんも治らん。
と激怒していたら天使のような医師と遭遇。「悪は存在しない」に続き渋谷采郁さんの神がかった言葉に癒された。手を合わせて拝みたくなった。カナがお茶☕️に誘ってしまうのもやむを得ず。
もう一人の天使は唐田えりかさんが演じたお隣さん。とてつもない優しさでカナを包み込んだ。二人で焚き火🔥を跨ぐシーンはビクトル・エリセの「ミツバチのささやき」。この世のものではない天使だったのかも。
思えばカナには決して見捨てないハヤシと二人の天使がいた。これはもはやファンタジー。甘過ぎるかも知れんけど甘過ぎていい。
听不懂
河合優実さんファンとして新作は観に行かねばと思いつつ人が少なくなったタイミングを見計らっての鑑賞。
ポスターや予告の感じからあまり得意なタイプの映画ではないんだろうなと思いつつも、若手監督がどんなものを作り上げているのかの興味もあって期待半分不安半分で観に行きましたがガッツリ不安の方が的中しました。
初っ端から友達の話は真面目に聞かない、酒に酔っての暴言、タクシーからの嘔吐、2人の男をたぶらかしていたりと人間性にかなり難ありな人だなとは思いつつも人間の正直な部分を集結させた様な人だなと思ったら案外飲み込めました。
ハヤシとは浮気をしていて、後々彼氏になってという結滞な流れからのダラダラとした関係性、対面座位で一緒にトイレをするところとか日常生活を過ごしていてこんなシーン思う事今まで一回も無かったなと新体験でした。
ホンダは彼氏だけど優しさが先行しすぎて人間味が無く、それにカナもどこか飽きてるのかな、依存させたいのかななんて思うくらいのっぺりとした人でした。
優しいだけじゃダメっていう意見が飛び交うんですが、それってあまりにも求めすぎでは?とバラエティなんかを見て思っていたんですが、ホンダはそれを体現した様な存在だったのでこの描写だけは良かったと思います。
導入自体はまだ良かったんですが物語に起伏もなく淡々と進んでいくもんですからダラダラしていますし、喜怒哀楽の怒の部分ばかり描かれるもんですから観ていて気持ちのいいものではないですし、それによって考えさせられる事も見応えがある部分もとても少なく辛いところが多かったです。
中盤から後半にかけてはもうハチャメチャ滅茶苦茶で、ただただカナとハヤシが取っ組み合う様子を見せられてもうほとほと呆れながら観ていました。
なんで2人は同じ空間に住んでいるんだろう、なんで離れないんだろう、取っ組み合ったあとなんで普通に会話できるんだろうと未経験なものが目の前で繰り広げられているのを加味してもこの2人の心情が全く読めず気持ちが悪かったです。
ハヤシの仕事を物を投げて邪魔したり、中絶した人の事について無関係のカナが攻めたり、衝動的になってすっ転んで怪我したりと、ハヤシにも問題があるにしろ、当事者ではないカナがなんでそんなに頭突っ込んでいくのかがさっぱり分からず、それが後々精神的な病気だと分かってもやはり理解するには遠く及ばずでした。
ホンダも情緒不安定になって怒鳴ったり、ストーカー紛いの事をしたりするので、優しい人の面の皮を被っていただけというのが分かってからのホンダがもうグチャグチャに倒れ込んだりするのを笑って見てるカナの底意地の悪さよ…と引きながら観ていました。
2人が取っ組み合ってるシーンをランニングマシンで走っている脳内のカナが映されるシーンもこれまた唐突で、脳内で淡々としたテンポで自分を見つめているという比喩表現なのは分かるんですが、それをわざわざ物語を中断してまで挟み込む必要性があるのか?とそのシーンが映った時は本気で思ってしまいましたし、これを撮ってる時の河合優実さんは一体どんな心情だったんだろうと思うところがたくさんありました。
邪推な見方をしてしまうんですが、制作チームは河合優実さんのキャリアと体を汚したかったんじゃと思ってしまうくらい彼女だからできた演技だけど彼女を起用してまでやる事ではないと思うところが多かったです。
自分と近しい世代の人物はこういう風に見られているのかと思うとショックですし、真っ当にしっかり生きてる人間も多いはずなのにZ世代だなんて囲まれているのには少し怒りを感じてしまいした。
今年はワースト近辺は例年に比べればまだ平和だなと思っていたところに今作が来てしまいました。
何度も劇場を出ようかと迷いましたし、自分の周りに劇中の人物の様な人がいないというのもありますし、確実に相性はあると思うんですが、自分には全く合わなかったです。いやーキツかった。
鑑賞日 9/25
鑑賞時間 18:05〜20:30
座席 E-12
現在地。
何故このタイトル?というのは謎だったが、主人公が見ていたあるモノからとったものだった。
自分から遠くにあるモノ、彼岸にあるモノは客観視できるし、他人事だけど。近くにある、此岸にあるモノは自分事となり、突き放して考えられない。
主人公のカナは刹那的に今を生きる若者だ。出自が一般的な日本人と異なることもあってか、自身の内に秘める物事が多いのか。そして、内と外の解離があるためか、感情のコントロールが不良であり、それが言語的・身体的表現となって、身近な他者である交際相手、パートナーに向かってしまう。彼女にとっては日常なのかもしれないが、パートナーだったらと思うと堪らないし、私なら耐えられない。しかし、本作のパートナー(達)は、そんな彼女の振る舞いを受け入れ、日々を過ごしている。
どんな人にも相応しい人がいるものだ、と言われればそれまでだが、本当にそうなのか。一人になる不安から、色んな言葉を飲みこんでいるだけなのか。若くルックスも魅力的な異性の魅力に抗えないだけなのか。
若さや外見はいずれ劣化する。そのとき、彼ら・彼女らは何を思い、どのような選択をするのだろうか。どこにも辿り着かない、日本の現在地を切り取った物語だった。
河合優実ありき
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