「同じく河合優実主演の『あんのこと』が辛かった人にこそおすすめしたい一作」ナミビアの砂漠 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
同じく河合優実主演の『あんのこと』が辛かった人にこそおすすめしたい一作
主人公カナ(河合優実)の視点で紡いでいく展開は、同じく河合優実の近作『あんのこと』をどうしても連想してしまいます。本作の主人公カナもまた、周囲の状況や関わりあう人々に翻弄され、苦しむ描写がある一方、その先の光明が見える部分もあり、『あんのこと』や、あるいは昨年公開の『市子』(2023・杉咲花主演)などの鑑賞体験が辛いものだった人にこそ、お勧めしたい作品です。
とはいえ、本作もまた気楽に観ることができる作品、というわけでは決してありません。山中瑶子監督の作劇は、何気ない情景や言葉の中に重要な要素をそっと差し込んでいくところがあり、油断していると次の展開の意図が分からなくなった……、という目にあうこともしばしば。見方を変えれば、繰り返し鑑賞することで、作品内容の理解をより深めていくことができる、奥行きのある作品、ということになります。
また山中監督の押しつけがましさほぼ皆無の演出だからこそ、登場人物の多様な人間性がにじみ出ています。例えば作品冒頭、友達の話を親身になって聞いているように見えるカナが実は別の会話に気を取られていて全く友達の言葉が耳に入っていない、というふるまいは思わず笑ってしまうし、独善的な言動が目立つハヤシが終盤にかけて見せる意外な一面にもある種の救いがありました。非常に解釈しがいのある作品なので、複数人での鑑賞もおすすめです!
コメントする