「Z世代の女性を繊細に描きながら、それ以外の幅広い層にも共感を抱かせる強い力を持った映画」ナミビアの砂漠 ハモニカ犬さんの映画レビュー(感想・評価)
Z世代の女性を繊細に描きながら、それ以外の幅広い層にも共感を抱かせる強い力を持った映画
演出、撮影、照明、録音、音楽、演出すべてにおいてレベルが高い。俳優陣、特に河合優実の素晴らしさは言わずもがな。
特に録音、音響の素晴らしさが映画を成り立たせていた。この映画、意外と主人公のセリフが少ない。それでも観客に主人公の心理が伝わるのは、河合優実の計算された声色や身体表現、そして音響設計。冒頭の喫茶店のシーンから環境音の大きさで主人公の意識の向きを分かりやすく表現しているが、そういった音響による主人公の心理描写は全編に渡って細かく設計されていた。
ドキュメンタリー的な絵作りなので、照明が難しかったはずだが存在を隠しながら素晴らしい仕事をしていた。撮影も良い。冒頭のズーム、中盤の手持ちでのズーム、真後ろから撮る側転、寝転んだ河合のクローズアップ、焚き火で踊る幻想的なシーン、唐突なワイプ、テーブルを挟んだ2人の中盤とラストの対比など、素晴らしいショットの目白押しだった。
河合優実に頼り切ったようにも見える演出だが、強い信頼関係で築き上げた演出プランだったはず。河合優実が手足を動かすだけで素晴らしい絵になっていた。
Z世代の女性を繊細に描きながら、それ以外の幅広い層にも共感を抱かせる強い力を持った映画だと思う。
コメントする