シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
全220件中、181~200件目を表示
戦場カメラマンは、記録に徹するマシーンか、心を持った人間か。 赤サングラス男とラストの写真にアメリカを見る。
戦場カメラマンは、記録に徹するマシーンか、心を持った人間か。
ベテランカメラマンは、恩師の死を前に撮った写真を削除する。
若きカメラマンは地獄を見て心を塞ぎシャッターを切る。
これが成長というなあら何と悲しいことか。
彼女の撮った初めての大スクープ!
ラスト・カット、大統領と兵士の記念写真が衝撃的。
皮肉にも、いかにもアメリカと感じた。
物語冒頭では、内戦はすでに始まっており、政府軍は壊滅状態。
ジャーナリストの4人はニューヨークからワシントンD.C.を目指す。
道中で経験するのは内戦の現実。
赤サングラス男に、ここにもアメリカを感じた。
そして、最前線のリアルな緊迫感が凄い。(是非IMAXかドルビーで!!!)
これなら、莫大な製作費のかかる全面戦争のシーンも不要。
さらに、本作は「アメリカの分断は、ついに内戦を引き起こす!」と言う話かと思えば、さにあらず。
何とリベラル・カリフォルニアと保守テキサスが手を組んで、独裁者と化した大統領率いる政府軍を倒す正義の戦争の話だったのだ。
これは実に巧妙です。クレバーなアイディアです。
なぜ実際の大統領選を控えてこのような映画が子製作・公開出来るのか理由がわかりました。
それにしても、若き女カメラマンが同行した時点で、この先の展開もラストもベタな想像がついてしまうことは確かで、いささか残念。
案の定、突如として羽目を外したおかげで、これまた殺されるために途中で合流してきた中国人と香港人だけでなく、恩師まで死んでしまう。
そして、最後は無謀にも銃撃戦のど真ん中に飛び出し、そのせいで自分をかばって憧れのカメラマンだった女性が撃たれる。
ためらわずにその瞬間をレンズ越しに見つめ、シャッターを押す。
彼女はその成長を喜んで息を引き取ったのだろうか?
想像していた物とギャップがありましたが、、。
ネタバレ含みます。
戦場カメラマン主軸に、目的地目指してアメリカ国内を車で移動する最中に起こる出来事を見つつ、目的地に着いてクライマックスというかなりシンプルな作り。
政治的動きや誰が何をして、思惑だったり伏線とか
映画にある要素みたいなのは皆無で、内戦になるとこんな価値観が生まれ、現場ではこんなことになりそうだよね?って要素を道中に短編物としてぶち込まれてる感じ。
テレビサイズで観ると更に簡易的に見えると思うので
初見は映画館で見た方がいいと思います。
迫力あるシーンでかなりリアルで楽しめました。
観る人を選ぶ作品だと思いますが、A24らしい映画となっております。
オズの国
傑作だと思う。でもしばらくは、何でこの映画がこんなに不思議な魅力、不思議な余韻があるのか、自分でも良く分からなかった。
そのカギは映画のラストの写真に隠されているように思った。
次第に現像が完成し、絵があらわれる。
横たわる大統領、満面の笑みの兵士たち。
この不気味さ。このホラー的気持ち悪さ。
何か既視感がある。あっ! これはキューブリック版のシャイニングのラストだ。
最後の写真で、ジャックがホテルにとりこまれてしまったことが分かる、あのシーンと同じだ。
監督のアレックス・ガーランドは「エクス・マキナ」や「MEN 同じ顔の男たち」など、超現実的な舞台設定で現実を痛烈に風刺する作風なので、この映画を「リアルにアメリカが内戦になったらどうなるか」という物語だと期待して観てしまった人にはたぶんすごく評価が低くなってしまっただろうと思う。こんなんありえないでしょ、とか、内戦の原因が全然語られてない、とか。
プリンだと思って茶わん蒸しを食べたらまずくて食えたものじゃない、というのに似てる。茶わん蒸しだと思って食べたら美味しく感じる。だからこの映画がつまらないと感じてしまうのは、宣伝にも一端の責任がある(まあ、とはいえ、はじめから「茶わん蒸し」だと言ってしまったら売れないから、「プリン」だと言って売ることにしたのかもしれない)。
一見、この映画はリアル重視に作られているように見える。
主人公たちは戦場カメラマンで、この設定によって観客の映画への没入感がハンパない。どちらの味方というわけではなく、ただ記録することが使命、という客観的立場であることと、映画を観るだけという立場がすごく重なるためだ。そしてカメラワークがまさに主人公たちと一緒に行動しているように錯覚させ、心臓がバクバクなりっぱなしだった。「戦場」「命の危機の状況」という意味でのリアリティ、生々しさがむき出しにある。
しかし、物語自体はリアルではない。むしろ童話のようだ。連想するのは「オズの魔法使い」。
主人公は住み慣れた農場から竜巻にとばされて、奇妙な「オズの国」に飛ばされてしまう。主人公は3人の仲間と合流し、それぞれは自分自身の望みをかなえるため、この奇妙な国を支配する「オズ」に会いに行くことにする。その過程で様々な国に立ち寄っていく。この話はロードムービーなんかじゃなくて、現代の童話なのだと思う。
2人の主人公、リーとジェシーがどちらも農場出身なのもそれを連想させる。
主人公を含めた4人は、それぞれ叶えたい願いがある。ある者は「平和なもとの世界に帰るため」、ある者は「功名心や自己実現のため」、ある者は「興奮したいから」、それらは、「オズ」(大統領)に会うことで叶えられると信じている。
旅の先々で奇妙な体験をする。ある町では、一見のどかだが、人が誰もおらず、家にはダミー人形が置かれている(無人の家にダミー人形が置かれているのは、核実験場でのダミーの町を連想させる)。ある町では、一見、内戦がなかったかのような平和な世界だが、実は単なる見せかけである。ある町では、人種が違うだけで人間扱いされずに殺される。
この世界は奇妙だ。大統領を殺せば、すべてが解決されると思い込んでいる。そんな単純なわけがないのに。童話の登場人物たちがシンプルにオズに会いさえすればいい、と考えているのと同じ。
主人公たちは、レイシストたちに生殺与奪の権をにぎられたとき、心の底から恐怖し、命乞いした。それなのに、命乞いをする大統領を殺すことに全く葛藤を抱かなかった。
そして最後の写真。「元の国」(平和なアメリカ)から来て、この「奇妙な国」(内戦状態の異常なアメリカ)を取材していたはずのジェシーたちが、この世界の一部に完全にとりこまれてしまった、ということを端的に示す。
ジャーナリストとしての良心と使命をもっていた、サミーとリーが死亡してしまったことは、今のアメリカにまともなジャーナリストがいない、ということの暗喩ともとれる。
戦争で人の感覚が麻痺するってどういうことか
日本人である私は、政治的メッセージを感じることはなかったのだが、アメリカ人だとやはりあるだろうな。それについては、ここではあまり触れない。
内戦に至った経緯が全く不明、何故、政治思想の異なるテキサス州とカリフォルニア州が同盟を組んでいて、しかもどうして政府軍に勝っているのか(州兵主体だろ?各州にある連邦軍の基地ごと寝返った?)とか、色々と設定には突っ込みたくなったのだが・・・。
そういう設定の現実味はともかく、内戦下の人間の生き様、死に様、戦闘のリアルを観させてもらった。有り体に言えば、それだけだった。
戦場ジャーナリスト、カメラマンという人たちは、ある種「不感症」で、「死よりも好奇心」が強くないとやっていけないと思うのだが、この作品の若きカメラマン、ジェシーが衝撃的な出来事を乗り越えて、そうなっていく様が描かれていた。
それと対比するように、数々の死を見てきた百戦錬磨のベテランカメラマン、リーが時折みせる苦悩や魂の抜けたような呆然とした姿に、リアルな人間の姿を見た。
リーが自分を庇って撃たれて倒れるまでのシーンを確実にフィルムに収めるジェシー。
そして大統領最後の見せ場を演出したジョエルとシャッターを切るジェシー。
仲間の死、罪なき多数の人々の死を目の当たりにしてきた彼らが採ったこの行動をどう評価するか?彼らもまた戦争で感覚が麻痺してしまったのか。大義があれば、許されることなのか(大義すらなかったように思うが)。
その他、印象に残っているのは、以下の2つのシーン。
・夜道、戦闘で森が燃える中を走る車中から見る(皮肉にも)美しい景色
・「おまえはどの種類のアメリカ人だ?」という戦闘員の台詞(私は、この台詞に特段深い意味はなく、どんな回答であろうと、気に食わない奴は即刻射殺するだろうと思った。それが戦争の狂気)
「内戦?関わりたくないね」と言って暮らす街の人々も、感覚が麻痺している。
果たして、こんな事態に日本が陥ったら、どうなるのか?
自分はどっち側の人間になるのか?なってみないとわからない。
人間ほど難しいものはない。
(2024年映画館鑑賞27作目)
A24の変化球
報道カメラマンの卵の迷惑行為のおかげで仲間が、次々に死んでいく話。A24、変化球投げすぎ。
アメリカの内戦でなくても全く構わないお話しでした。ジェシー役の女優のプロモーション映画なのかな?
皆様、どう思います?
タイトルなし(ネタバレ)
他国の戦争に介入してばかりの米がもしも分断してしまったらというお話
いや今でも州格差激しくて充分分断してますけど
正直地図で勢力図解説無いと分かりにくいと思いました
ほぼ戦場カメラマンのお話、それも迂回してる間にまんまと特ダネ逃してしまったという
ただ人が死んでいく中でも撮り続けるという厳しいお仕事なのは伝わった しかも実際もあんなにやれ危ないと引っ張り回されているんですかね
期待したような展開はラスト30分だけだった
大統領ってもっと警護固くて上手くトンズラだと思うんだけど...
【ネタバレ注意です】戦争してる国の指導者に観てもらいたい映画でした。
トーホーシネマズにて、TCXスクリーンDolby-ATMOS字幕版で、10月5日11:55〜13:55の回で視聴しました。
幕間の予告編からも気になっていた作品であり、期待度高めに劇場へと足を運びました。
前半は、後半の為の時間という感じだったので、退屈な時間が多かったです。予告編の雰囲気が微塵にもなかったので、騙された…?と思ってしまいましたね。笑
中盤にかけては、戦争による治安悪化や政府軍VS西部勢力(と思われる)の武装民間人の戦闘、唐突に政府軍VS西部軍の戦闘に巻き込まれたり、戦争を楽しむ系のキチ西部軍に会ったりと、戦争をリアルに描いており『映画を作ったというより、実際の戦争をドキュメンタリー』したかのような感じでした。死亡シーンもリアルできつめなので注意が必要です。
後半〜クライマックスにかけては、映画を終わらせにいっており、中途半端で不完全燃焼ということもなく、とてもよく考えられていました。戦闘車、戦車、ヘリコプターもカッコよくて良かったです。海外なら旧式兵器を買い取れるはずなので、実際のものなんでしょうかね?
ただ一つ残念なことがありましたね。なるだろうなとは思ってましたが、リー・スミス(役:キルステン・ダンスト)を殺す必要ありました?ジェシー・カレン(役:ケイリー・スピーニー)が最後に成長して、リーからジェシーへと時代が変わったというのを描きたかったのは分かります。ただ、身近な人が自分のせいで死んだのに平気でいるのを見ると、急に現実に引き戻されてしまいました。映画だな…と。
ドキュメンタリーは好みではない自分が良かったといえるような作品でした。星5を言い渡せます。見てない人は一回でいいから見てほしいな。色々と考えさせられましたよ。
戦争してる国の指導者に観てもらいたい映画でした。
面白いです!フィクションを創り出す圧倒的な力を感じます。
平日、朝9時からの劇場鑑賞。1〜2割程度の入りで中高年男性が一人で来ているのがほとんど。アーミールックの人もいたりして軍事マニアか戦争映画ファンなのでしょうね。
ところが映画は、後半残り45分ぐらいまで、戦場記者たちの道行きが割と淡々と描かれる。もちろん戦闘シーンもあるのだけど、何やら「マリウポリの20日間」のようなドキュメンタリー風。
でも安心してください。ニューヨークから出発した彼等が最前線のシャーロッツビルに到達する直前、というよりは赤いサングラスの男(ジェシー・プレモンスなんですね。いや嬉しい。)に遭遇したところから一気に筋運びのスピードが上がります。「地獄の黙示録」のようにヘリが勇壮に飛び立ち、「プライベート・ライアン」のように派手な市街戦があります。
ちなみに赤いサングラスの男に対して、ジョエルが最初、嘘をつきます。大学の取材に来たと。これはシャーロッツビルに名門バージニア大学があるから。
さて、この映画の凄まじいところはフィクションを創り上げるにあたっていままでのアメリカ映画のタブーを楽々超えてきていることです。
一つ目はアメリカに内戦が起こること。
二ツ目はアメリカ合衆国が戦争に敗れること。
三つ目は戦争に敗れた合衆国大統領が処刑されること。
一つ一つはSF映画とかで設定されたことはあるかもしれないが三つ揃ってということはまずない。
内戦がいかなる経緯で始まったのか、どのように推移したのか、大統領がどんな国家指導をしたのか、ほとんど詳細は明らかになりません。
わずかに言及される西部連合はカリフォルニア州とテキサス州から構成されているという話、その両州が組むはずはないというレビューもありますが、そんな細かいことはどうでもよろしい。またドラマ部分が基本的には新人カメラウーマンの成長譚でややぬるいってところもありますがそれも別に関係ない。ドラマが乗っかっているフィクションの状況設定が有無を云わせぬ迫力を持っているからね。
この映画の観るべきところはフィクションの骨格部分をつくったA24という映画会社の企画力と突破力です。メジャー映画会社にはおそらくできなかったでしょうね。
追記
戦場ジャーナリストについて触れているレビューが多いので一言。
中立、公正であるべきという教科書通りのジャーナリズムを体現するのはサミーとリーの2人。でも大統領と対面する以前に命を失った。最後まで大統領を追うのはジェシーとジョエルの2人。彼らはすでに大統領を処刑する意図の兵士たちと一体化してしまっている。ジェシーはカメラを銃のように扱い、兵士のような身のこなしで。ジョエルはジェシーをかばいながら踊るようなステップを踏んで。
そう最後のシーンは、ムッソリーニやチャウシェスクのように、民衆が大統領を殺すシーンである。
アメリカの大統領は、国父という以上にアメリカそのもの。だからこの映画ではアメリカ人によるアメリカ殺しが描かれる。そして、そこにはジャーナリストも加担しているのである。
センスは受け継がれる(プレスの心得)
キルティンダンスト演じるプレスの戦場名カメラマンである。ある少女と出会うことで戦場でのカメラの技術的とプレスの心得を少女に教えていく。ある時仲間の車と鉢合わせして少女は楽しそうに仲間の車に乗り込んで先に車路を飛ばして乗っていく。
プレス章なしだったので、案の定兵士に捕まってしまう、目の前で仲間(香港人)を射殺されてしまう。プレスだと言って助けに行くが、兵士もきがおかしくなっており、
助けにきた仲間の出身地を聞き1人が香港だと言うと容赦なく射殺されつしまう。
最悪のトラウマを植え付けられる写真プレスマンを目指す少女。
間一髪全員射殺されると思った瞬間、車内に残っていた高齢者のお爺さんが車でおかしくなった兵士を引き殺して事なきをえたかにみえたが、残りの兵士の銃撃により、高齢者のお爺さんは銃弾に撃たれて、出血してしまう。急いで仲間の兵士がいるキャンプ場へ向かうが、出血多量でなくなってしまう。
そして大統領がいるホワイトハウスへむさうのだが。
このけつまつは劇場にてご覧ください。
※内戦のシーンがかなりリアルなのでおきおつけください。
※ポストカードがもらえるところがあるようです。
近代の南北戦争とは‥
この映画は終わらない週末を見たあとに
見ると来るものがあります
派手な戦争映画ではありません
ドキュメンタリーのようなリアリティを体感できます
かと言ってジャーナリスト目線のストーリー
にはちゃんと映画的な展開も散りばめられ
デラソウルもかかります
最後の突入は退役のネイビーシールズが何人か
出ててガーランド監督の本気を感じます
うーーん
何故戦争になったかの説明無し。テキサス・カリフォルニア・ワシントン以外の州がどうなっているのか不明。大統領が殺されるぐらいの内戦なら米国を2分する戦争になってるのではないのかな。戦闘シーンは迫力はあるが、陸軍だけで数十万人がいるはずなのに、コンバットのサンダース軍隊レベルの小規模の戦い。個々の戦闘のリアルさはあるが、規模のリアルさは全くなし。巨大スクリーンで砲弾・銃弾の迫力を楽しむ映画。
後味の悪さが残る
戦場ジャーナリストから見たアメリカの内戦を描いた作品。
内戦が起こったきっかけなど詳細については何も説明がなく、23歳の駆け出しの写真家が憧れのジャーナリストに付いて、大統領のインタビューに向かう危険を伴うロードムービーの様相で物語が始まる。
ジェシーを庇ってリー・スミスが撃たれてからのラストまでが腑に落ちない。
まるで、リーがそこに存在しなかったかなようだ。
説明的な描写がないだけに、観客に解釈を委ねているのか。
「関心領域」と同様、後味の悪さが残った。
今まさに起こりえる現実 ジャーナリズムの重要性が今こそ問われるとき
報道カメラマンのリーは言う。紛争地域で写真を撮り続けたのは祖国に警告するためだと、こうはならないでくれと。内戦が勃発しすべてが無駄に終わった時、彼女は報道の意義を見失う。
内戦を招いた元凶である大統領のインタビューを取るために首都へ向かう途中でリーたちは国内の惨状を目にする。拷問を行う者、ただ通りすがりの人間を狙撃する者、虐殺した大量の遺体を埋めようとする者、それらの光景は過去そして現在も世界中の紛争地域いたるところで繰り広げられた光景だった。異なるのはそれらの光景が自分たちの国で行われていたことだった。報道カメラマンは皮肉にもパスポートなしで紛争地域に足を踏み入れることができた。
それら惨状を目の当たりにして、また自分たちの命が危機にさらされリーの心は絶望感に苛まれていく。逆にリーが若き日の自分と重ね合わせていたジェシーは生死の境を体験して肝が座っていく。
目的地のワシントンD.C.にたどり着いたとき、その激しい戦闘の中でかつて戦場カメラマンとして名をはせた彼女の姿はもはやどこにもなく、ただその場にうずくまりおびえるだけだった。逆に修羅場を潜り抜けてきたことで成長したジェシーはひるむことなくカメラを向け続ける。
ホワイトハウスに潜伏する大統領にまであと一歩と迫った時、リーはジェシーをかばい銃弾に倒れる。ジェシーは倒れたそのリーの姿に動じることなくそのまま撮影に向かう。まるでリーの魂がジェシーに乗り移ったかのように。
リーの役目は終わった。彼女の意思はジェシーに引き継がれたのだ。リーの撮り続けた写真をもってしてもこの祖国の内戦を止めることはできなかった。これからは自分に代わり写真を撮り続けろ、このような悲劇が繰り返されないためにも。そんなリーの意思がジェシーに引き継がれたかのようだった。
最近のアメリカの世論調査では内戦が起きる可能性があると答えた人は実に4割にも上るという。近年国内では連邦議会襲撃事件をはじめミシガン州知事誘拐暗殺未遂事件などSNS上での陰謀論に端を発したテロ事件が頻発している。これらの元凶はトランプ元大統領であったり、Qアノンのような陰謀論者であったりと様々だ。事件を起こしたのもトランプの熱狂的な支持者たちだ。
いまやSNS上では偽情報やデマが飛び交っており、それらの情報をただ無防備に信じ込む人々が多いことには驚かされる。確かに何が正しい情報なのか、その情報の出どころはなんなのか、いまや生成AIによる偽画像までが出回る中で何を信じたらいいのか。如何にして誤情報に惑わされないようにすべきなのか。
ただ一つだけ言えるのはこのような誤情報やデマは巧妙に人間の心の隙を突いてくるということだ。とかくこのような誤情報やデマを信じる人間は元々バイアスがかかった人間が多い。楽をしてお金を儲けたいと考える人間がたやすく詐欺に引っかかるように例えば差別主義者ならば有色人種にとり不利な情報ならば信じやすかったりする。そういう先入観や偏見を持つ者にほど誤情報やデマは何の抵抗もなく伝播しやすい。それらの情報は自分たちにとって都合がいいからだ。
現在のアメリカは白人の割合が減少しており、彼ら白人至上主義者たちは危機感を抱いている。もともと自分たちの国だったはずがいまや移民などの有色人種に乗っ取られようとしているという危機感を。だからこそ彼らは移民排斥を唱えるトランプを支持する。議会襲撃事件を起こした人間はほとんどが白人で比較的裕福な層の人間たちだった。彼らの意識の根底には人種差別意識が根強い。
ただ過激思想は今や極右に限らない。不当な政治を排除するためなら暴力も許されるという考えがそれを許さないという意見よりも多いことがトランプ暗殺未遂事件で明らかになった。もはや過激思想は右派左派関係がない。そんな過激派たちや一般人によるテロ事件が頻発する中では先の世論調査の結果も頷ける。そして不満を抱く彼らにSNSでの誤情報がさらに油を注いでいる。それはまるで心の隙を突いて人間を惑わす悪魔のようだ。
こんな時代だからこそジャーナリズムの重要性が問われている。人々の心を惑わせる偽情報を一蹴するだけの正しい情報、信頼できる報道機関による信頼できる情報が。
リーやジェシーたちは自分の命も顧みず真実を伝えようとした。それは今この世界各地で起きている現状を世界に知ってもらいたいという強い思いからだ。彼女らは自分の親たちのように見て見ぬふりをできない。同じ国で起きている内戦を他人事のようにそ知らぬふりをする街の人々はまさに世界中で起きてる紛争に無関心を装う人々の姿そのものだ。
リーたちジャーナリストは偽情報を拡散して人々を混乱に陥れる者たちとは真逆であり、リーたちが発信する情報こそ世界中の人々に真実を伝え、世界中の人たちの架け橋となるものだ。無関心な人々の目を向けさせようとするその努力は徒労に終わるかもしれない。それでも彼らは情報を伝え続ける。
そんな彼らに受け取る側も真摯に向き合う必要がある。自分たちの聞き心地のいい真否不明の情報に飛びつくのではなく、何が正しく何が正しくないのか真実を見極める目を養うことで彼らの発する情報がはじめて生きてくる。それが情報を受け取る側の義務だ。
本作での内戦の理由は大統領の独裁が直接の原因とされているが、今現在起きるかもしれないとされている第二次南北戦争は差別がその根源にあると言われている。かつての第一次南北戦争も奴隷制廃止に抗う南部とそれを支持する北部との戦いであり、やはり差別が根底にあった。
映画「福田村事件」の原作者はこのSNS上に飛び交うデマ情報に翻弄される人々の姿を見て、再び過去の惨劇が起きるかもしれないという危機感から本を執筆したという。
イギリスでも先日デマ情報によりイスラム教徒へのヘイトクライムが起きたばかりだ。これはけしてアメリカだけでの問題ではない。「過去を忘れる者は再び同じ過ちを繰り返す」、その言葉通り過去を忘れる者たちによって歴史は繰り返されてしまうのだろうか。
リーは紛争地帯で写真を撮り続け祖国に警鐘を鳴らしたが、リーの願いが叶うことはなかった。本作の監督は警鐘を鳴らすために本作を撮影したという。果たして監督の願いはかなうのだろうか。
敵か味方か
全く判別のつかない世界で、いくら報道のカンバンがあっても、戦場へ突入していくのは、死と隣り合わせなので、怖い物ものがありますね。実際に回りで人が亡くなって行く訳だし。タイトルのみで見るとアメリカを2分した戦いの物語だと思いましたが、それに伴う報道希望の少女の成長記でしたね。
”ギレアド”の前日譚のように思いながら見ました
Huluの「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」はアメリカの内戦後に、全体主義の国家、ギレアドが出来る(詳細略)話なんですけれど、勝手にその内戦ってこんな感じだったのだろうと思いながら見ました。深い意味はないんですが。
ベテラン戦場カメラマンのリーと、駆け出しのジェシーの描き方、対比が面白いと思いました。デジカメとフィルム、カラーとモノクロみたいな。
ジェシーのカメラの腕も、構図も、どんどん上手くなっていくのだけれど、なんというか、戦争をアートとして捉えているというか、アメリカ的な、対岸の火事的な性格も、見ていてイライラはしつつも、ジェシーはアメリカのことを意味しているのかなと。
並走する車を乗り移る場面が一番イライラMAXだったけれど(ジェシー・プレモンスに捕まって当然ね、くらい)、これも、戦争に対するアメリカの比喩なのかも。だとすると、リーは何の比喩だろう。
ユダヤ人とか、黒人とか、人種で攻撃されるのではなく(香港で撃たれてたけど)、ネブラスカとかフロリダとか、出身の州で敵対するんだなぁ、へー、と思った直後、今でも会津の人は長州をよく思っていないっていうから、そういうことかと妙に納得してしまいました。
ウオームービーかと思ったらロードムービー? 追記:赤いグラサンの男は…。
10月4日(金)
公開初日の「シビル・ウオー アメリカ最後の日」をフォトグラファーの友人とユナイテッド・シネマ浦和のIMAX(字幕)で。
状況の説明は無い。いきなり内戦下である。大統領が何をしてどういう理由で内戦になったかは、描くと政治的にも色々まずい事があるからだろう。テキサス州とカリフォルニア州の同盟を主軸にした西部勢力(WF)と政府軍が対立している。WFが優勢でホワイトハウスへ向かうのを追って、先を越して14ヶ月取材を受けていない大統領の単独インタビューを取ろうとするジャーナリスト・ジョエルとカメラマンのリー(キルステン・ダンスト)、記者のサミーに23歳の若いカメラマンのジェシー(ケイリー・スピーニー)が加わる。
ここからは完全にロードムービー、ワシントンD.C.へ向かう4人だったが、給油に寄ったスタンドでは私刑にした友人を吊していたり、途中で政府軍とWF(民兵?)の戦闘に遭遇し、銃弾飛び交う中で戦闘の状況をカメラに収める。
リーがキャノンやソニーのデジタルカメラを使っているが、ジェシーはNIKONのフィルムカメラを使っている。SONYのロゴが消されているのはコロンビアに対する忖度か?
ジェシーが撮ったフィルムを携帯キットで現像していたが、一緒に観た友人によれば、実際戦場カメラマンはああいった携帯キットで現像するものらしい。でも現代のUSならデジタルだろう。二人の違いを際立たせる演出か。
民間人の死体をトラックに一杯積んでいる武装集団と遭遇する。赤いサングラスをした男(ジェシー・プレモンス)は「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」途中で合流したジョエルの友人二人は彼らに射殺される。リーやジェシーやジョエルも危なかったが、車に潜んでいたサミーが彼らを車で跳ね飛ばす。しかし、彼らの仲間に銃撃されてサミーは息絶える。
WFの基地でサミーの遺体を降ろした一行はWFと一緒にホワイトハウスへ向かう。
ここからがウオームービーだ。ホワイトハウスを包囲したWFは一斉攻撃をかけ、邸内に突入する。突入のため戦闘する兵士を撮影するが、リーには躊躇いが見られるがジェシーは肝が据わったようにシャッターを切り続ける。
そして、大統領執務室へ突入する際にリーはジェシーをかばって銃弾を浴びる。リーに構わず兵士を追うジェシー。遂に大統領は確保される。ジョエルが大統領に何か一言と問えば「私を殺させるな」ジョエル「それを聞けば十分だ」WFの兵士により合衆国大統領は射殺される。
同じ国の兵士同士が、自国内で戦い、殺し合う。そして、大統領を殺して笑って記念写真を撮るのだ。そのモノクロの記念写真が現像されてはっきりとして行くところで映画は終わる。
「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」自分と違う種類のアメリカ人は躊躇無く射殺する。惨憺たる思いである。今回の大統領選挙後にこうならない事を祈るばかりである。
ベテランジャーナリスト・サミーを演じたスティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンに助演男優賞を。
追記︰映画が終わって劇場を出るとロビーで「憐れみの3章」の予告編をやっていた。あれ、この人は赤いグラサンの男では?
赤いグラサンの男を演じたジェシー・プレモンスは、カメラマンのリーを演じたキルステン・ダンストの夫で、当初別の俳優だったが出演出来なくなり妻からの連絡で急遽出演したらしい。拘束2日でギヤラは無し?私は気が付かなかったがクレジットに名前が無いらしい。あのシーンから明らかに雰囲気が変わったし、あのシーンの後で俳優たちも休養が必要だったと監督が語っている。ある意味、この映画のハイライトだった。
有りえるかもしれない現実
これまで独創的な作品を創ってきたアレックス・ガーランドが今作では米国の内戦をリアルに描く。
この作品は米国では4月に公開されたが、少し前の12月にはNetflixでは「終わらない週末」という作品が配信された。これも米国での内戦をテーマにしている。
不思議なことに映画という物は同時期に同じようなテーマの作品が重なる事がある。公開日を見据えてその時の情勢などを監督が未来視するかのように作品を創るのである。
この米国の内戦というテーマは来月11月に控えている大統領選挙を見据えての事なのだろうか。
内戦に至った経緯は詳しくは描かれないが、3期という有り得ない期間の任期を務めている大統領の独裁ともいうべき政府に痺れを切らしたのだろう。
大きくは政府軍と西部部隊の衝突だが、厄介なのはそれらに属さない独自の部隊である。彼等の思考は曖昧で、気に入らないものは排除するような対話が成り立たない、ある意味前線よりも危険な地帯がそこら中にあるのである。
もう一つ今作の特出すべき点としては、近年の作品の中でも群を抜いてサウンドデザインが素晴らしい事だ。
プライベート・ライアンやブラックホーク・ダウンなどの戦闘シーンはよくリファレンスにも挙げられるが、それらを凌駕する程である。
毎回必ず1つはトラウマになるシーンがあるアレックス・ガーランドの作品だが今作もテーマ性の強いリアルな描写はトラウマに匹敵するようなものかもしれない。
どの種類のアメリカ人だ⁉️
この作品は星の数ほど製作されてきた過去の戦争映画とまったく同じ‼️戦争の理不尽さ、虚しさ、残酷さ、そして恐ろしさを戦場カメラマンの視点で描いております‼️ちょっとオリバー・ストーン監督の「サルバドル 遥かなる日々」を思い出しました‼️しかし今作が決定的に違うのは、アメリカの内戦を描いているという事‼️内戦に至る経緯が詳しく描かれないので、いまいちピンと来ませんが、アメリカの市街地での戦闘シーンやホワイトハウスで大統領が殺害されるシーンは、ホントに迫力があり戦慄でした‼️キルスティン・ダンスト扮するリーを主人公に、報道仲間のジョエル、そしてケイリー・スピーニー扮するジェシーら4人のジャーナリストがワシントンDCを目指すロードムービーの形をとっているのですが、道中、兵隊二人に殺害されるそうになるシーンは強烈で、掘られた穴に多数のアメリカ人の死骸がトラックから無造作に捨てられ、ジェシーは恐ろしさに泣き震え、リーとジョエルが必死に助命を訴える中でのやりとり「同じアメリカ人だ」「どの種類のアメリカ人だ?」が印象的‼️そしてラスト、ホワイトハウスで夢中でシャッターを切るジェシーが撃たれそうになり、その身代わりにリーが撃たれる姿を、ジェシーのカメラ越しにモノクロに描いたショットは素晴らしかったし、倒れたリーをジョエルもジェシーも気にすることなく先に進む姿に、戦争の真の恐ろしさを見せられた気がしてゾッとしました‼️
ボーはおそれているで大赤字ぶっこいたA24が巨額の制作費をかけて制作した
映画冒頭から小一時間、ニューヨークからワシントンまで車で向かう従軍記者達。
何も起きない旅で、新人ジャーナリストの少女はデジカメが主流の今、あえてフィルムカメラにこだわり屋外で現像をしているが、これがEDロールの薄気味悪い映像の伏線だったとは予想外でした。
ずっと、地味なロードムービーが続くので、これのどこにお金がかかっているのか疑問だったが、最後の最後でワシントンをぉー、ぶっ壊す!ここで、制作費をぶっ込んだのかぁ。
本当に現地で撮影したわけないから、巨大セットだったのでしょうか。やっぱ、映画監督だったら大都市を破壊してみたいよね?
道中、おじいちゃんがずっと、
「 ここは、危険だ...」
と、呟いているがあんまり相手にされない。途中、謎の車が煽り運転をして逃げようとしたが、ジャーナリスト仲間が、おふざけで追いかけていた事が分かる。
旧知の仲間も増えて楽しいドライブになる。緊張感が和らぎ、このまま、平和にワシントンに到着すれば良かったのだけど、
途中、立ち寄った広大な広場に到着する。広場には大きな穴が掘られていて、その穴には大量の死体が山積みになっていた。
穴の側には、ライフルを構えたエルトン・ジョン似の赤いサングラスの男。男は一向にこう質問する。
「 お前は、どの種類のアメリカ人だ?」
何を答えれば正解なのか、分からないが何とか答える一向。
この後の展開は見てのお楽しみだが、少女は助かるが死体の山に転がり落ちてしまう。
初めて死体に触れてショックで車の中で吐いてしまう。この程度の事で吐いていたら、ジャーナリストやってけないじゃん?
だが、少女は最後の最後に起きた事件がきっかけになって、死体に慣れてしまう...。これが、切ないんだよなぁ。
さて、いつも通り話しは飛ぶけど、自分も葬儀屋に勤めていた時は、水死体とか、首吊り死体とか、腐乱死体を見た時はくるもんがありました。
ところが、昼勤務の正社員達は変死体に慣れてしまいすぎて、人としてありえない発言をします。
自分が葬儀屋の夜勤の宿直をしている時に限って遺体の搬送の電話がかかる事が続いた時期がありました。
いわゆる「 引きが強い」 というやつで、一晩に二回引いて、やっと帰れると思ったら早朝に県またぎの移送があったりして、葬式が出来る部屋が二つしか無いのに、ばんばん引きまくって、もう葬式をする部屋が無い状態になって、
いっぱい、いっぱいになってしまった、とある日、いつも通り、夜勤の出勤時間になり引き継ぎをして、
「 もし夜間に移送が入ったら、最短の葬式は何日ですか?」
と、聞いて何日かを確認した後に、引き継ぎだった支配人代理がこう言いました。
「 今晩、引いたら殺すよ?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「 次に引いたら殺すよ?」
は、支配人も言っていた言葉で、死体で飯食っているのに何を言っているのか理解不能で、こんな人非人な発言をする人達が恐ろしくて、恐ろしくて。
でも、こんな人格なのに遺族には評判が良かったんだよなぁ。遺族の皆さん、裏ではコイツらこんな事言ってたんだぜ?
さて、ワシントンに到着してご一行は戦火の中に飛び込む。ロケット弾飛び交う中、大統領が大統領専用特殊車両三台で脱走するも集中砲火にあい、特殊車両は大破して停止する。
大統領は無事なのか?
最初に少女のフィルムカメラの伏線があると書きましたが、デジカメ世代には分からない人もいるかもしれないけど、フィルムカメラは写真の絵が、じわじわ見えてくるのだけど、
EDロールで、何の写真か分からないピンぼけ( 何て言うんだっけ) の写真がフィルムカメラのフィルムが現像されるように、じわじわと見えてくるんだけど、その写真の後味の悪いことといったらないです。
後味悪い系の映画が好きな人にお勧めの映画です。
全220件中、181~200件目を表示