シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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戦争のリアルを巧妙なプロットで描く大傑作~
米国は世界各地に押しかけて戦争を直接・間接問わず仕掛け、世界の秩序を言い訳に豊富な資金を背景に捻じ伏せてきた。だから北米本土においての戦争は南北戦争にまで遡らなければなせない、すなわちそれ以降は国土が戦争によって汚された事はない。本作は「IF」の前提ではあるものの、近年の社会の分断を背景にあり得るIFを描いてみせた。だからラストシーンで米国大統領自身が「殺さないでくれ」の最後の一言もむなしく、あっけんからんと女性兵士によって銃殺される。そんな馬鹿な?って思うのは甘すぎます、さんざ他国でこれをやってきていたのですから米国は。おまけに死体を前に笑顔の記念撮影! これが戦争なのです。
ハリウッド映画でさんざ描いてきた第二次世界大戦でのヨーロッパ各地での戦争のリアル。のどかなフランスの田園地帯でナチスか否かで疑心暗鬼なシチュエーションで、突然の銃撃の雨と爆撃される家々。それをそっくりそのまま現代の米国の豊穣な農園で展開される恐ろしさ。モールは廃墟と化し遠雷のように戦火が飛び交う。ここはイラクか? ゲームスタジアムはさながら難民キャンプの様相で、遭遇した民兵のような輩に「WHAT KIND OF AMERICAN?」と聞かれる恐怖。同じアメリカ人なんて意識は、もはや通用しない。50年代?と思わせるローカルな商店街で聞かされたのが「関しないようにしている」と。無関心でいられる次元は遥かに超えてしまっていると言うのに。
しかし作者は実に巧妙で、民主党・共和党と2分する現実を取り込まず、カリフォルニア州とテキサス州の西部連合が立ち上がる設定を編み出す。そんな組み合わせあり得ないのが現実だからこそ、架空として観客は受け入れられ、しかも諸々の経緯も一切省略で兵器に訴える結論で本作は始まる。前提条件を描いていたら総ツッコミ必定ですから。描きたいのは本土での戦争そのもの。で、何が起こるか? 極限状態での人間の変わりようなのです。もっとも象徴的なのが赤いサングラスの野郎なのです。アウシュビッツ強制収容所さながらの累々たる死体を前にした狂気の様相なのです。
しかも、ニューヨークがスタート地点で、目的地がワシントンDC、ふたつの市街戦に挟まれるロード・ムービー仕立てってのが冴えてます。狂言回しに戦場カメラマンを据えて、その功罪をも内包し、さらに縦軸にカメラマンの先輩と後輩を配し、軟弱カメラマンを一丁前の報道カメラマンへの成長談として描く巧妙さ。さらにですよ、ピュリッツァー賞のような全世界へ発信する写真の筈が、妙に「その瞬間」のようなタブロイド調に陥ってしまったような描写が一筋縄でゆかない困難さをも描く。
IМAXでの鑑賞ですが、見事に縦も天地までのラージフォーマットで、耳をつんざく銃声の激しさには身が震える程。その銃声飛び交う音響はやはりIМAXならではのド迫力。静逸な田園風景の直後の銃撃音の鋭い事。監督・脚本のアレックス・ガーランドってこんなに巧かった? ドレスを試着する辺りの鏡を多用した撮影は、小娘にほだされる照れまで巧く伝わりました。ラスト近くでは広大な緑地の軍事キャンプでの夥しいヘリコプターや戦車など、相当に大掛かりなロケーションの大作感に酔いしれますが。これで製作費5,000万ドルとは「デューン 砂の惑星PART2」の4分の1とは驚き。
スパイダーマンに逆さキスをされてたキルステン・ダンストがすっかり貫禄増して驚きました。小娘に対する苛立ちを上手く表現して、演技も相当に成長です。その五月蠅い程にハラハラさせ、あまつさえ師匠筋にあたる先輩の死が自らに負うているにも関わらず、その瞬間を撮って悦に入る小娘がケイリー・スピーニーなんですね。「プリシラ」での美少女が、色気もない「エイリアン ロムルス」の少女と同じとは思いもよらず、本作観てやっと繋がった。あちこちで拝見する名優スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンが単なる抑えの役割に留まらない工夫もいい。
そしてなんといっても前述の赤サングラスの男に扮したジェシー・プレモンス(クレジットに記載なし)が圧巻です。近頃いい役で出まくりで「憐れみの3章」でも大活躍。より白っぽい白人でブロンドとくると、往々にして理性を逸脱した〇〇主義者みたいな役が多く。亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンのポジションに収まったかのよう。イケメンとは程遠くアメリカのど真ん中あたりに生息していそうな迷惑男にピタリ。そして彼が実生活では主演のキルステンの夫ってのが凄いよね(結局夫婦愛出演)。
米国本国でも無論ヒットしてますが、今一つ評価が上がらないのは、それはもう我が身を突っつかれている訳で、大統領(3期目とセリフにあるってことは独裁に入ったのでしょう)が情け容赦なく殺されるのもひっかかるのでしょうか。ラストのホワイトハウス攻防は当然に生々しい共和党による襲撃を連想しますが、桁違いの重火器による激しい戦いです。どんな大義も完全無意味、人々は虫けら同然に殺されるのが戦争なんです。
何故内戦を描いたのか?
この作品を見て若いカメラマンが憧れのカメラマンの取材に同行しカメラマンとして成長していくストーリーだと浅はか丸出し感想を書いてしまうとは?何故内戦を描いたかと?対立軸をあえて明らかにしないイデオロギーでの東と西の分断の不明瞭差が言いたいところ。互いにどうでもいいところ共産主義とか極右とか罵りあってるとこんなこと事のななるかもよ?って。
娯楽アクション作品ではない。冷たい報道物
109分
おまえはどのアメリカ人
ソウルの春
割と普通
音響がすさまじさが際立つ戦闘シーンはもちろん、写真家映画としても優れた一作
現実には絶対党派性が一致しそうにないテキサス州とカリフォルニア州が同盟を結び、アメリカ全土が内戦に突入する、という設定だけ聞くと、トンデモ近未来SFみたいですが、変容したアメリカをジャーナリストと戦争写真家の視点で描いた本作は、戦争映画というよりもむしろ、ロードムービーに近い内容となっています。
「内戦」であるため誰が敵なのかも判然とせず、そもそも内戦の状況はどうなっているのかすら分からない中での首都・ワシントンへの旅は、不穏な雰囲気を全編に漂わせていますが(各所での評価通り、ノンクレジットで出演したジェシー・プレモンス演じる赤いサングラスの男の恐ろしさは、やはり際立っています)、その描写は「漂泊するアメリカ」を描いたケリー・ライカートを想起するような、美しさも併せ持っています。
現実の戦場に肉薄した音響を実現したという戦場の場面はもちろん凄まじい迫力で、身がすくむような恐怖すら感じるほどですが、同時に主人公、リー(キルステン・ダンスト)ら戦場写真家が収める写真の美しさが心に焼き付きます。写真という表現媒体の持つ力強さを実感する場面であると同時に、武器も持たず戦場に身を投じ、死にゆく人々を写し取ることへの葛藤と陶酔という、写真家の心理にも迫っていて、戦場写真家の映画としても鋭い作品となっていました。
報道雑誌を連想させるようなパンフレットは、シビル・ウォーの背景を理解するうえで役立つマップや、要所要所で非常に効果的に用いられている楽曲解説など、資料としても非常に優れているので、劇場で販売していたら、購入をお勧めします(品薄とのこと)。
また、本作を通じて戦場写真家について興味が湧いた人には、伝説的な写真家ジェームズ・ナクトウェイの、文字通り彼自身の視点に近接して描いたドキュメンタリー、『戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界』(2001)をおすすめ!
最後まで
根底にある恐怖
日本での公開は一年遅れという記事をみた。アメリカ大統領選を間近に控えた今、公開としてはちょうど良いタイミングだったのかもしれない。余談やけど、日本公開に尽力した関係者の方には毎度感謝しかない。
特に内乱が起きた経緯とかは描かれずいきなりスタート。銃撃の音が足元にも振動として伝わってきて、こちらまで戦地にいるような気持ちになる。ただ、普通ではないのがアメリカの中で起きているということ。あんな光景を間近で見続ける記者もまた気持ちを押し殺して、自分の使命をまっとうするために闘っているんやろう。
人間は自分とは異種のものに恐怖を感じると何かで読んだことがある。その恐怖はやがて嫌悪となり憎しみの元になると。アメリカの歴史もまた差別との戦いであったり、他国と戦争をしたり、根底には恐怖という存在が常にあるのかもしれない。自由の国といいながら、自由を維持するためにルールが多いのもまた然り。
次々と死んでいく人たちを横目に記者たちがみる最後の光景は?それはぜひ劇場で!これは映画館で観るべき映画です🎬
ジャーナリストの成長物語
カリフォルニアなどがUSAから独立することを、ジャーナリストをストーリーテラーとして展開していく映画だと思っていました。
しかしそうではなくて、アメリカ内戦を取材する若手ジャーナリストの成長を描くものでした。
最初のうちは凄惨な現場に嘔吐していたのが、後の方では死を前にしても平然とできるようになりました。
映像は生々しくて戦いの悲惨さを訴えていましたが、どことなくジャーナリストの「偽善」のようなものを感じてしまいました。
ベテランの女性ジャーナリストが終始無表情でしたが、もしも一回でもフンとでも笑ったらそれはある有名な(猛暑日を伝えたディレクターにレポートを続行するよう促した)女性アナウンサーになるのでは?と思ってしまいました。
最後にはベテランの後を継ぐジャーナリストの成長で終わりました。
未見の方は若手ジャーナリストの成長に目を据えて観ることをおすすめします。
迫力は満点以上で、ビーストとハマーの激突はすごかったです。
残るのは瓦礫と死体の山と勝敗だけ
惜しい、ツメが甘いな
現代アメリカの内戦が舞台である必然性がないです
一言で言うと、若い戦場カメラマンが、悲惨な戦場の光景や仲間の死を乗り越えて、一人前のカメラマンへと成長する物語です。
現代アメリカの内戦が舞台である必然性はありません。他国の戦争が舞台でも構わない。まあ、政府軍か反政府軍かもわからず、ただ銃を打ちまくっている人とか、どっちにも属さない町が出て来たり、バラバラなところがアメリカらしいのかも知れませんが・・・
でも、カリフォルニア州とテキサス州が一致団結して、ワシントンを襲撃するとか無理ですよね。ママさんバレーの大会なら、州の代表チーム同士で対決とかあるかも知れませんが、同じ州に住んでるからって、政府側か、反政府側のどっちかに、住民全員の意思を統一出来るわけなく、それだけで住民選挙になったり、デモが起こったり、大騒ぎになると思います。
それと、ホワイトハウス襲撃って、いくら混乱の中とはいえ、最後は、数名の兵士だけで突入ってことないでしょう。残りの兵士はどこへ行った? しかも、銃撃戦ですか? 今の時代、大統領の居場所を突き詰めて、ミサイル一発撃って終わりじゃないですかね? 米軍が中立で、州の軍隊だけで戦っているなら、そんな高度な武器はないのかもしれませんが、戦闘機も飛び回っていたはず・・・
そういうところが、気になるので、舞台は、架空でもいいので、どこか小さな国の内戦とかのほうが、戦場カメラマンの成長物語には向いている気がしました。
歴史的傑作であり渾身の警告
かなり期待してたんだが、その期待をも上回る歴史的傑作来た!
現代に蔓延る分断の行き着く先にあるのがどんな地獄なのか、我々にとっても近しいアメリカを舞台に見せる地獄巡り。我々にとっての「神曲 地獄編」であり「地獄の黙示録」だが、戦場を巡りきっているベテラン3人に同行する観客は若きカメラマン ジェシーに感情移入出来る親切設計でもある。
そして、我々が訪れたことがあったり、ニュースや映画、ドラマなどで慣れ親しんだアメリカの光景のなかで行われる内戦…
マンハッタンの街中で星条旗を掲げて行われる自爆テロ、普通の大学らしき建物での銃撃戦、普通の農場に埋められる無数の死体、カレッジフットボール場の難民キャンプ、見知らぬ国で行われていた内戦とはこういうことだったのだな、と気付かされ震えてくる…
そしてワシントンD.C.包囲戦の迫力たるや…
ドラマで見慣れたホワイトハウスを高く囲うバリケードとそれを撃つ戦車、突入する軍隊、xxと写真を撮る兵士たち。いつかどこかで見た内戦の光景…
こんな世界にしてはならない、というアレックス・ガーランドの叫びが聞こえてくるよう。特に、アレの最後の台詞が出色。
音響が特に素晴らしかった。銃声のショッキングさ、無音、ポップミュージック、最大限の効果であり得べき世界を「体験」させられた。
今度の大統領選でトランプが選ばれても、選ばれなくてもこの未来に辿り着きかねないことが本当に恐ろしい。
演者も皆素晴らしい。初めてキルステン・ダンストを良い役者だと思った。また、特に素晴らしかったのはジェシーを演じたケイリー・スピーニーの段々と変わってゆく顔付きと、普通のアメリカ人をやらせたら右に出るもののないジェシー・プレモンスの『What kind of American, are you ?』。
どんな国だって分断が進めばああなる可能性があるんだ、という渾身の警告。
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