「法の無い世界、統制されない暴力に戦慄」シビル・ウォー アメリカ最後の日 yurimaripapaさんの映画レビュー(感想・評価)
法の無い世界、統制されない暴力に戦慄
インターネットの普及で、様々な情報を精査することが極端に難しくなったこの時代、世界中で民主主義が危機に瀕しているのは誰の目にも明らかだ。
これから私たちは何を最も恐れ、何を忌避すべきなのか。
この問いに対し、ガーランドから強烈なメッセージが届いた。
最近でも大統領選挙であらわになったアメリカ社会の分断を、内戦と言う極端な設定で描いて、サスペンスとしても一級の作品に仕上げているが、この映画で観るものを最も戦慄させるのは、統制を失った暴力の恐ろしさだ。
国家間の戦争であれば、国際法による最低限のルールがある(実際は守られないことが多いが)。しかし、内戦となれば話は別で、文字通り無法な空間となる。
国家は、個人の自由を制約することと引き換えに、ゲバルトを集中管理し、国民の安全を保障するが、そのリバイアサンが一時的にせよ機能不全になったとき、ゲバルトを統制する力はもう何処にもない。
カオスの中で、体験したことのない、或いは想像すらしたことのない、むき出しの暴力が充満する世界を、我々は生きなければならない。
それがどれほど恐ろしいことか、この映画で改めて痛感させられた。
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