「言論の自由をアクションで語る傑出したエンタメ作品」シビル・ウォー アメリカ最後の日 デッキブラシと飛行船さんの映画レビュー(感想・評価)
言論の自由をアクションで語る傑出したエンタメ作品
戦場カメラマンの視点からアメリカの分断と内戦を描いた物語。
キッカケさえあれば人間は簡単にモラルを失う。首都までの1300kmの道のり。進めば進むほど狂気の地獄が広がっていく。
まるでアメリカに舞台を移した現代版の地獄の黙示録を見ているかのようだった。
ただ地獄の黙示録と決定的に違うのは主人公が兵士ではなく記者だという事。そして旅の目的が将軍の暗殺ではなく、独裁大統領のインタビューだという事。
どんな過酷な目に遭っても、その目的を見失わない限り言論の自由が死ぬことはない。
ラストシーンで記者のジョエルが大統領から引き出した一言がそれを象徴していた。
兵士たちが大統領を撃とうとする寸前、ジョエルが大統領に今の思いを尋ねる。
それに対し、大統領は震えながら「私を殺させるな」と答えた。
大統領の人間の小ささと、そんな男のために戦争が起きてしまった悲しさが、その一言のインタビューがなければ誰にも伝わらずに終わってしまう。
記者たちの行動そのものが作品のテーマを体現しているように感じた。
脚本良し。演出良し。脇役良し。しかし残念ながら主演のキルステン・ダンストだけ演技下手。この人は昔も今も演技下手。
記者仲間のサミーが死んだシーン。写真を削除したのはその死を受け入れるのが辛かったからか、それともその死を仕事にしたくなかったからか、あの芝居では分からん。
権威主義と分断と暴力が蔓延する社会。それでも報道し続けることを諦めてはいけないというメッセージ。伝え続けなければ言論の自由が死に、民主主義が終わる。
つまり、この映画のテーマは一言で言うと言論の自由。それをエンタメとしてアクションで表現してる。ほんと傑作だと思う。