「考えてしまう、日本のシビル・ウォー」シビル・ウォー アメリカ最後の日 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
考えてしまう、日本のシビル・ウォー
【シビル・ウォー】
トランプの出現以降露わになったアメリカの分断が更に進んで、遂に国内で武力衝突となる戦争映画なのかと思っていたら少し違っていました。アメリカ大統領の独占インタビューを取る為に、戦火にある国内をワシントンに向けて移動するジャーナリストが各地で遭遇する、露骨なヘイト感情・差別・分断・容赦のない暴力・殺人、そしてそれを助長する無関心がむき出しになるロード・ムービーというが本作の骨格でした。その一つ一つが、すぐ手の届く未来の姿の様に見えて恐ろしい、恐ろしい。
現在は民主党の牙城と思えるカリフォルニア州と逆にガチガチの共和党州であるテキサスが本作ではなぜ同盟関係にあるのか、そして、何が争点となって内戦に発展したのかは本作では一切語られません。また、あちこちで現れる武装兵が政府軍なのか同盟軍なのかも分かりません。その事が不気味さを増すと共に、背景説明に要する時間を割いて物語を深める事に成功しています。
それらがあればこそ、終盤のホワイトハウス攻撃の凄まじさが際立ちました。
アメリカの人々はこの映画をどの様な気持ちで観ているのでしょう。エンタメとして楽しんでいるのかな、リアルな近未来劇に見えるのかな。翻って、同じように分断が進む日本はと考えると、こんな内戦にはならず、もっと陰湿な形で内部崩壊していくのではないのかなと陰鬱な思いがするのでした。
コメントする