劇場公開日 2024年10月4日

「地獄の黙示録+ キルステン・ダンスト」シビル・ウォー アメリカ最後の日 Yukさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5地獄の黙示録+ キルステン・ダンスト

2024年10月4日
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近現代に内戦を経験した国なんてのは結構あるが、これを現代のアメリカに当てはめると背筋がゾッとするものがある。アメリカで分断を促すことをやっている人にはこれを見てほしい。あなたたちは、こうなってみたいのかと。

観始めるとパーソナルな映画だと気づく。内戦の行方を描くポリティカル・スリラーな盛り上がりを期待したら全然違った。登場人物の心象描写を切り取った内省的なロードムービー。予告編とは全く違う。「アメリカ最後の日」というサブタイトルは完全なミスリードだ。

そして、映画をある程度観ている人ならおそらく途中で気づく。これは「地獄の黙示録」(=コンラッドの闇の奥=ダンテの地獄巡り)の焼き直しじゃないかと。
4人の記者が車に乗りワシントンでの大統領のインタビューを目指す。これがベトナムの川を遡りカーツ大佐を目指す旅に重なる。70年代風のロックが流れ、プレイボーイショーや民間船の殺戮、フランス人植民地、それぞれをモチーフにしたかのようなシーンがあり…本作とは無関係だが、キャメロン・クロウが「地獄の黙示録」を撮り直したらこんな感じになるのでは。そんな作風を感じる。

キルステン・ダンストは有名な戦場カメラマンという役柄(カメラの”SONY”ロゴを消しているのは何故だう?”NIKON”はそのまま)。
散文的なシーンが多くて脚本は薄めである。キルステン・ダンストの無言しかめ面カットも多い。もう少し彼女が何かを語るシーンがあっても良さそうだが。因みに、赤サングラスの兵士を演じたのはキルステンの夫、ジェシー・プレモンスだそうで。

地獄巡りの終着。反政府軍に同行した彼らはワシントンの凄惨な銃撃戦に飛び込む。ホワイトハウスを攻撃するというシチュエーションもあってかなりの緊張感。ゲートに戦車砲を撃ち込み、抵抗するシークレットサービスをなぎ倒し、強大なアメリカの力の象徴が崩れる現場を目の当たりにする。

Yuk