「島に帰ってくる訳あり娘」かなさんどー TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
島に帰ってくる訳あり娘
前作『洗骨』が大変素晴らしかった照屋年之監督。新作と聞いて必ず観たいと思っていましたが、諸々の事情で公開3週目にようやく劇場鑑賞です。サービスデイの本日、TOHOシネマズ日比谷SCREEN13(旧みゆき座)は3週目にしてはまぁまぁな客入りです。
さて今回は感想から言うと、期待に裏切らず「笑えて、泣ける」ハートウォーミングな作品に仕上がっています。前作『洗骨』では(失礼ながら)思いがけない感動に観ながら涙腺崩壊してしまいましたが、今作は時系列を行ったり来たりさせながら過去と現在を交互に見せることで、じんわりと心情に訴えかける作品性に巧さを感じさせます。
そして前作に続き今作も「島に帰ってくる訳あり娘」と「島時間」で生きる島人(しまんちゅ)のやり取りが常に面白くて最高。美花(みいか)を演じる松田るかさんは沖縄出身と言うこともあって、完璧なイントネーションにセンスあふれるツッコミの間が天才的。母・町子(堀内敬子)の死をきっかけに父・悟(浅野忠信)と仲違いして島を離れた美花。そんな美花を説得し続けるキーマン・小橋川(Kジャージ)との二人のやり取りは、漫才さながらの可笑しさで飽きることなくずっと観ていられます。そして、知らなかった父と母の過去を遡りながら、余命僅かな父を母の元へ送る「儀式」をする美花と小橋川たち。ラストに準備されたクライマックスシーンは、今回もやっぱり涙なくしては観られない感動の仕掛けで優しさに溢れています。
映画のタイトルでもある主題歌・前川守賢さん作の「かなさんどー」や、ポンコツさも愛らしい真っ赤なセリカ、それだけで特集を組んでもらいたい旨そげなローカルフードの数々、そして美しいテッポウユリの花畑等々の印象に残るツールも満載。また何と言っても伊江島の美しい自然がたっぷりな映像を見ているだけでも癒されます。勿論、観れば必ず自分の親を思い出してしまう作品。中高年の皆さん、来場の際はハンカチを忘れずに。照屋監督、今作も大変に良かったです。