「久しぶりのレビュー」かなさんどー shi-naさんの映画レビュー(感想・評価)
久しぶりのレビュー
映画.comで久しぶりのレビューです。
初めてレビューしたのは、照屋監督の『洗骨』でした。
6年ぶりの最新作ということで、私も映画.comレビューに戻ってきました。
沖縄県内の映画館公式サイトでは「みたい」の数1495人(2025.3.1夜時点)となっており、会員の注目度No.1です。
上映を心待ちにして沖縄先行上映から2日後に観に行きました。
第82回ゴールデングローブ賞で、浅野さんがテレビ部門の助演男優賞を受賞した後の沖縄先行上映でもあったため、主人公・美花を演じる松田るかさんよりも "俳優浅野忠信が観たい" という思いが強くありました。
母・町子(堀内敬子さん)の亡き後、父・悟(浅野忠信さん)と美花は絶縁状態だったのですが、悟の元部下(親戚?)から悟の余命がわずかであるとの連絡が入り、7年ぶりに故郷の伊江島に帰ることに。
娘として父の最期をどう看取るか・・・過去を辿りながら家族の姿を描く物語。
短めの映画となっておりますが、観終えた後の感想は「長い。。。(悪い意味で)」でした。
家族愛を描くのが上手い照屋監督ですが、今作は何かが違いました。
お笑い芸人としての "笑い" も必ず入れたいのはわかるのですが、今作では全ての笑いが余計でした。
笑いはなくてもいいくらい。詳しくは下に書きます。
先ず・・・主人公・美花ですが、常にイライラしている短気な女性にしか見えなくて、職場でやらかしていたり周囲の人たちへの態度も悪く、気が強くて怖いイメージしか残りませんでした。
沖縄の女性で、あそこまでイライラしている人を見たことがないです。
また、母親への優しい思いを父親にも同じように思いを向けることができないのは、娘としてどうだろうか。。。
父が運転する車で、病気である母の病院に3人で向かうシーンがあるのですが、父と母が嘘話で盛り上がる中、父の創作話を真実だと思ってしまった美花は後ろから運転席を蹴り父に怒りを露わにします。
行儀が悪い上に悟はヘラヘラ笑っているだけだし、娘を甘やかして育てるとこうなるという悪い見本でしかないです。
実際には、沖縄の男性は厳しい父親の方が多いです。
また・・・町子は妻として、悟が外で女遊びしようが夫のために尽くす妻なのですが、美花は母の父への思いに苦しみながらも理解しようと努力します。
夫婦のことは子供が立ち入れないこともあります。
町子の思いはわかりますが・・・美花の方が女性として賢いとしか思えません。
私からするとできすぎる妻(母)は、家族を居心地が悪い場所にしてしまうからです。
妻の姿を美談として描かれていますが、夫婦ってそんなものではないと思います。
台所での母と娘のシーンでは、お涙頂戴な気がして逆にしらけてしまいました。
父の最期に娘が出した答え・・・感想は人それぞれだと思います。
私には全く刺さらなかった。
美花のことを町子だと思っている認知症の父のために、派手な服装にばっちり化粧と髪をセットして病院へ会いに行ったり、ビーチで色気たっぷりだったり・・・
認知症であっても父の前で女としての色気を出す娘とか・・・気持ち悪さしかないです。
そこを "笑い" として描かれているために、全然笑えなかった。
町子と悟が若い頃の出来事だから、綺麗な思い出であるはずなのに。。。
7年の間に悟がどう過ごしていたのか・・・町子への深い愛情はあっても美花への思いが描かれていないため、物語の最後まで父親らしさが感じられなかった。
沖縄民謡歌手 前川守賢さんの『かなさんどー』を歌う松田るかさんの声はとても綺麗な声で感動しましたし、だからこそ・・・今作は残念の一言に尽きました。
結果的に、美花は母・町子として父の最期を看取ることとなり、娘として父と和解できぬまま物語は終わります。
年若くして両親を失うこととなり、父との和解はなかった美花の今後が心配でしかなく、すっきりしない終わり方でした。
照屋監督・お笑い芸人ゴリさんが好きだからこそ、次作に期待して辛口評価になりました。