ガール・ウィズ・ニードルのレビュー・感想・評価
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1918風潮と貧困と混沌
1918年のデンマークの現実の中でおきた社会的大事件と捉えましたが、ダウマの犯行の決定的な動機は?貧困にあえぐシングルマザーの救済のためとはいえきっかけがが描かれていないダウマの娘らしき子とのラストも当然そうなるようになだらかに描いてほしかった一筋の光明ようだが、乳を与えた子を失い突然の方向転換ようにも受け取れる。
今年のベストの一本だろう
マグヌス・フォン・ホーンの長編監督第3作。第1次世界大戦直後のデンマーク🇩🇰で実際にあった犯罪を題材にしているとのこと。
想像を絶する展開だった。
想像を越える傑作だった。
戦場から帰らぬ夫、貧困から抜け出そうともがく女性カロリーヌ。働く裁縫工場の社長の子供を孕むも捨てられ、体を傷つけたが堕ろすこともままならない。
見世物小屋で再会した夫は戦争で深い傷を負い、顔が醜く変形し不能となった。
これでもかと畳み掛ける悲劇にゾクゾクする。
しかしそこからが本題だった。
貧しい母親たちが望まない子どもを里親に託す手助けをするというダウマとの出会い。
間もなくカロリーネ、そして観る我々はダウマの狂気を知ることとなる。
ダウマを演じたのは2019年の傑作「罪と女王」でイケメンの青年を食ってしまったデンマーク🇩🇰を代表する女優トリーヌ・ディルホム。ここでもドラム缶のように太った肉体をさらけ出し欲望と狂気を表現した。
そしてカロリーヌを演じたビク・カルメン・ソンネの圧倒的な個性と存在感。今年の主演女優賞候補だ。
本当の悲劇とは
生活の糧として、他人や自分を傷つける道具として、
針を様々な暗示、象徴としつつ、
モノクロの画像や雑音の多い音響も相まって
全編にわたり、暗い雰囲気で物語が展開する。
本作のクライマックスは、
養子縁組を取り持つダウマの秘密を巡るパートだと思うが、
個人的には戦争がもたらす傷や貧困、
そのような状況において、あらゆる市民(とくに女性)が生き残っていくために、
羞恥心を捨てて、いかにあらゆる手段を選択せざるをえなかったかという現実と、
それによって徐々に人間としての感情そのものを失っていく(仮面になる)過程を
本当の悲劇として捉えているように思った。
映画館の近くの席で、事前に楽しそうにお喋りしていた女子学生三人組が
どんな感想をもったのか気になった。
ひたすら落ち込む
仕事で悶々とすることがあり、映画でも観に行こうと急遽観に行ったが観なければよかった。そんな映画。
映像が白黒で、直接的な場面は出てこないが音や演出がとても生々しい。赤ん坊に手をかけるシーンは、思わず耳を塞ぎ目を瞑る。そんなシーンに耐えられなかったのか何人か途中退出した。久々に途中退出する人みたなあ。
何でもかんでも他人に身を委ねて自分の意思がないカロリーネ。裁判を傍聴し、彼女が最後の最後にした決断。ネタバレサイトには希望の光と書かれていたが、私にはそうは思えなかった。これはダウマへの復讐なんちゃうかな?
とにかく感受性が強い人には絶対おすすめしない。精神的にほんまによくない。
画像から想像できる臭気
モノクロで描かれているので、より想像力が刺激されるのですが、モノクロ故に主人公のカロリーネの年齢層が分からず40代ぐらいと思って観てしまっていました。途中であれれ?ってなりました。
その時代のその場所の臭気を感じるような気がしました。後からじわじわと恐怖を感じる映画です。
興味深く観たけどハテナもだいぶ
やや暗い話題ではあるがおすすめ枠か。
今年137本目(合計1,678本目/今月(2025年5月度)22本目)。
※ 時間調整のために「プリンセス・プリンシパル」を見てからになりますが、憲法論的な解釈が存在しない映画は観てもレビュー対象外です(しかも60分ほどで、いわゆる「つなぎ」的なストーリーだったのでちょっとがっかり)。
こちらの作品です。
2025年に放映される映画で、しかも大手の映画館でオールモノクロというのはものすごく珍しい(大阪市でも好んでモノクロ映画を流す映画館はありますが(シネヌーヴォ等)、それはただ単にフィルムの問題に過ぎない)のですが、本映画は作品自体が復刻版ではないので、狙ってそうなのだろう、というところです。
第一次世界大戦の戦中戦後のデンマークがテーマですので、このあたりの知識に明るいと有利かな、といったところですが、なくても「何とか」なります。この時代のデンマークですので、男女同権思想は「この時代を考えれば」まだ(当時の年代基準を考えれば)先進国ではあったものの、いわゆる男女同権思想の話は全く出ないわけではないものの、それを全面に押さない点はある意味びっくり。
全般的に重苦しい、あるいは「みていて憂鬱になる」映画のタイプで、また明確に「誰が悪い」ということを「一概には」論じにくい(この点は当時の人権感覚等も考えたときのお話)点もまた、フランス映画っぽく「結論は自分で考えてね」みたいな論点があり、決してこう、爽快感がどうこうというような映画ではないですが、そのように問題提起型の映画、あるいは「考えるのが好き」という方にはおすすめといったところでしょうか。
採点上特に気になる点までないのでフルスコアにしていますが、デンマークの戦中戦後の歴史があればベスト、第一次世界大戦の一連の流れを理解していればベター程度なので、ある程度の知識を仕入れてからの視聴をおススメします(パンフレットを買おうと思ったら、大阪市でも超絶賛放映中の「うたのプリンスさま」が放映しすぎて売店にすら入れなかった…)。
ペーターは必要だった?
日本でも太平洋戦争直後に寿産院事件というのがあったわけですが、寿産...
日本でも太平洋戦争直後に寿産院事件というのがあったわけですが、寿産院に関しては積極的にというよりは放置していたという違いはありますが、混乱期には世界中同じようなことが起こるのですな。
情報は予告編以上のものは入れずに観に行ったのですが、ゴシック・ミステリーという触れ込みだったけどミステリーというよりは社会派ドラマという感じでした。ただ正直主人公中心の前半は眠いけど、中盤殺人鬼の中年女性が出てくると異様な迫力で面白くなってきた。子殺しの直接的な描写はないけど泣き声だけでもきついな。
モノクロでのサーカスの描写はトッド・ブラウニングの『フリークス』を彷彿とさせるし、リュミエール兄弟の『工場の出口』まで引用されてるし、ドイツ表現主義みたいなところもあるし映像的にも面白かったですね。
タイトルなし(ネタバレ)
第一次大戦末期のデンマーク、コペンハーゲン。
縫製工場に勤めるカロリーネ(ビク・カルメン・ソンネ)は極貧。
家賃を滞納した部屋を追い出され、凄まじい雨漏りがする屋根裏部屋へ引っ越すことになった。
しかし、悪い事ばかりではない。
工場主の男爵家子息の目に留まり、愛人関係となる。
妊娠。
工場主の男爵家子息はカロリーネを連れ、母親の男爵夫人に引き合わせるが、「家を出て女と暮らすか、家で暮らすか」と迫られ、当然にしてカロリーネは棄てられてしまう。
自身で中絶するしかないと決意したカロリーネは、公衆浴場で編針を手にして堕胎しようとする。
それを助けたのは、砂糖菓子屋を営むダウマ(トリーヌ・ディルホム)だった・・・
といったところからはじまる物語。
とにかく、今年いちばんの陰鬱映画。
謳い文句にある「ゴシック・ミステリー」的娯楽性は皆無。
社会派歴史ものである。
ただし、その社会性は現代にも通じるもの。
望まぬ妊娠・出産をめぐる社会ゆえの事件。
モノクロ画面が陰鬱さを増長。
事件の全貌は少しずつ明らかになりますが、下水道の開いた蓋(公衆便所かもしれない)のカットだけでも吐き気を催すでしょう。
連想した映画は『真夜中の向う側』『主婦マリーがしたこと』。
重い社会派ドラマだった
予想外の展開ですが見応えあり!!
予告やポスターからホラーテイストの作品かと思ってばかりいましたが、若干のサスペンスやミステリーの要素はあるものの、しっかりと見応えのあるヒューマンドラマでした。
歴史と格差に翻弄された女性が追い込まれていき、辿り着いた場所も決して安住の地ではなく……。そこで起きたことも悪意からの犯罪ではなく、困った人たちのため、やむに止まれず行っていた必要悪のようなもので……。
主人公が最終的に掴んだものは、先々多難ではあろうが希望でもあることが救いではありました。
社会に追い詰められる女性たちの叫び
サスペンス・ミステリーというよりは、連続殺人事件に至る思考と背景を明らかにしていく内容で、ほぼホラー。
陰鬱で重く、こわい。
映画の舞台となった1918~24年くらいのデンマークでは、女性の人権概念もなく、女性への抑圧が当たり前であり、男無しでは女は困窮する時代だった。
そんな国で戦争がもたらす悲劇。
女性たちが人として何の権利も補償もない社会に追い詰められていく、悲痛な叫びを描いた作品でした。
観ながら、現在の日本って、法的にはともかく、社会的な同調圧力の存在や、セクハラパワハラおじさんが跋扈していて、この第1次世界大戦後のデンマークに似てない?とか思っちゃいました。
正しいこと
大戦後のコペンハーゲンにて、妊娠したものの恋人に捨てられ、その子を手放そうとした女性が、養父母を探してくれる親切な人に出逢い…といった物語。
終始、陰鬱さと不気味さに溢れた作品。
序盤は戦後生活の悲惨さが映し出される。
夫さん…。この仕打ちはあんまりですよね。
再会の場がまた…。
目を覆いたくなる現実だが、生きる為にはこれしか…。これが国を守るために命を懸けた男の末路なのかよ。
程なくして、カロリーナとダウマの出逢い。
まぁ…予告編の時点で予感はしてたがやはり…。
正しいこと…。人助け…。力強く響くその言葉に戦慄がとまらなかった。
でも、ワタクシの記憶違いだろうか?「望まれないから」と孤児院に送られた子もいたような。そこを分けるのに意味はあったのか?
んで、確かにこりゃあ酷い話ではあるが、気が変わった!…なんて言う奴も大概…。
そして最後。これは狙い打ちしたのか?
だとしたらちょっと話が出来すぎなような…。
いずれにせよ、色々な手法(?)で気分が悪くなるし、そういう意味では見応えのある作品だった。
正しさとは…。本気でそう思っているのなら、これ程恐ろしいことはないですね。。
分かってはいて、いつか誰かが描くであろうという地獄がここに。 ある...
美しいモノクロ映像の美
個人的な趣味から言えば物語や脚本は苦手な部類な筈でしたが、それを超えたいい映画でした。
監督・脚本のマグヌス・フォン・ホーンはかなりのシネフィルであり、写真好きと見えて、ドイツ表現主義的なモノクロ映像と、ダゲレオタイプに通じるフィックスショットの美しさで、暗く陰惨な物語を飽きさせることなく牽引していた。
特に、凶行を行うダウマ(トリーネ・デュアホルム)営む、砂糖菓子店(実は秘密の養子縁組所)の毎回同じアングルからのショットの古典的な美しさと、主人公カロリーネ(ヴィク・カーメン・ソネ)が働いていた工場から、仕事を終えた人々が大勢出てくるシーンの、まさにリュミエール「工場の出口」のアプロプリエーション足る撮影手法などは本映画全体に渡る写真・映画的様式美の象徴的な表れと言えよう。
里親斡旋に見えて、実は乳児連続殺人犯だったダウマ。しかしその犯罪は、当時の時代性と社会の暗部をあぶり出すようで、誰しもが必ずしも糾弾できない二面性を持つ。終始一貫してカロリーネの視点で描かれる物語は、その他者視点とモノクロの映像美に支えられて、現代にも通ずる社会的弱者へのいたわりの心すら感じさせる。
ホラー映画ジャンルらしい本作だが、印象としてはアンゲロプロス的な叙事的な物語と思えた。見世物小屋のシーンや、冒頭とラストにある、二重露光のようなある種PV的な衝撃的なシーンには、初期デビッド・リンチ作品が思い出された。
監督はインタビューで、ホラージャンルへの関心として、黒沢清や三池崇史の名前を挙げていたが、溝口健二等の邦画からもインスパイアされてるのかもしれない。
最近なかなか観ることのない、美しく構築性の高い映画でした✨
主人公カロリーネは折れやすい針から折れにくい針になった? ラストで見せた人生初の能動的な選択
第一次世界大戦直後のデンマークを舞台にしたモノクロ作品。モノクロームか、まあたまたまだけど、今年はよく見てるような気がするなと感じたので、私が2025年に映画館で鑑賞したモノクロ作品を挙げてみます。
『敵』1月に鑑賞 吉田大八監督
『TATAMI』3月に鑑賞 ガイ•ナッティブとザーラ•アミール•エブラヒミの共同監督
そして、今回の
『ガール•ウィズ•ニードル』5月に鑑賞 マグヌス•フォン•ホーン監督
と半年間で3本、2ヶ月に1本のペースで観ておりました。あくまでも私ひとりの個人比になりますが、2024年に映画館で観たモノクロが『WALK UP』(ホン•サンス監督)、2023年が『せかいのおきく』(阪本順治監督)の1本ずつだったことを考えると明らかに多いです。まあだからどうしたといったレベルのお話なんですが、私個人の印象ではこれらの作品群(それぞれモノクロにした意図も感じられますし、なかなかの名作揃いといった感じ)の中でも特にモノクロにした必然性、モノクロにした効果、ともにいちばん強く、大きく感じられるのがこの作品『ガール•ウィズ•ニードル』です。撮影における技術的な面が素晴らしいことはもちろんのこと、モノクロームにしたことによってこの作品の物語性、寓話性がかなり高められたと思います。
本作の監督、マグヌス•フォン•ホーンはスウェーデン生まれだそうですが、本作がデンマークで実際にあった事件を基にしてデンマーク語で語られた物語であること、名前に”フォン”が入っていることから、あのデンマーク生まれの鬼才ラース•フォン•トリアー監督が想起されます。実際にフォン•トリアー監督から少なからず影響を受けているそうです。そう言えば、本作のヒロイン カロリーネは過酷な運命に翻弄され続ける点においてフォン•トリアー監督の代表作である『ダンサー•イン•ザ•ダーク』のヒロイン セルマによく似ています。以下、両作品のネタバレを防ぐために少し曖昧な書き方をします。どちらかというと鑑賞者に同情されやすいタイプのセルマのほうがずっと受け身で過酷な運命の波に飲み込まれていったの対し、鑑賞者に同情されにくいタイプのカロリーネはずっと受動的で仕方ないからそうするみたいな行動を繰り返していたのですが、ラストで人生初と言ってもいいほどの能動的な選択をして前を向きます。ただし、それがその後の彼女の幸福に繋がるかどうかは定かではありません。このあたりのところから、単純にハッピー•エンド、バッド•エンドの二分法では割り切れない映画的な興趣が煙のように立ち昇り、それがたなびいて余韻を残す、そんな感じがしました。
いずれにせよ、マグヌス•フォン•ホーン監督はこの作品の完成度からいって近い将来、カンヌのパルムドールを獲るような作品を生み出すかも知れないと思いましたのでチェックを入れておきました。
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