ガール・ウィズ・ニードルのレビュー・感想・評価
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モノクロ映像がリアルな雰囲気を醸し出し、とてもよく出来でいる映画。
実話を元にしている。冷静で冷徹で、モノクロ映像がリアルな雰囲気を醸し出している。とてもよく出来ている映画。
第一次世界大戦後のコペンハーゲン。世界に貧困が蔓延している時代。恋人に捨てられて貧困のために赤ちゃんを養子に出さざるを得ない主人公と、養子斡旋をする女性の話。
顔が戦争で滅茶滅茶になった男(元夫)の話も絡んでくる(いつも仮面をつけている)。
美醜、善悪など二元論で語りきれない題材をリアルに抑えた映像で描いてゆく。
養子斡旋をしていた女性は、実は殺していた。その彼女を酷いと言えるのか。貧困から堕胎できず、結局産んでしまった貧困の母親の子を「善意」で処理していた彼女(養子に出す母親には「正しいことをしたね」と伝えていた)は、罪悪感はあったようだが(モルヒネらしきものを常習して現実逃避的な快楽を得ていた)自らが信じる正義で、預かった子を何人も殺して来た。我々は、彼女を本当に一点の曇りもなく非難できるのか。
様々のことと考えさせられる題材を、緻密な画面構成で切り取ってゆく。モノクロの映像は美しさすら感じる。
ラストにちょっと救いがある(ただ何も解決していない)。
幸せになれなそうな気配
社会と女性の生きづらさ
紛れもなく鬱映画。でも私は勇気をもらったような不思議な気持ちになりました。
男性の権力がより強い時代に、夫や社長に振りまわされたカロリーネ。
葬られる子供達。
古今東西、女性の受難とは変わらないものだと思った。
多様性が認められる現代でも「子がいらないので、手放す」というのはなかなか憚られるもの。
産まざるを得なかった人、産んだけどいろいろな理由で育てられなかった人。子を持つことが必ずしも幸せに繋がるわけではない。
ダウマの行った行為は、親の最後の良心を踏み躙ることだが、いずれは誰かがやっていたことだろうとも思う。
裁判で最後にダウマの言った「私は誰も出来なかったことをやった」。
母親達に投げかけ続けた「あなたは正しいことをした」
その発言の全てが、絡まって、心に突き刺さる。
きっと生涯子を持たない私は、この映画を観て、勝手に赦された気持ちになった。
映画として気になった点は、
・カロリーネの身勝手さ。もう少し愛せる主人公だとよかった(わざとなのかな)
・美しい映像にこだわった結果、何かのマネのような軽く見える部分も多々あり(美大生の映像作品のような…)
・ラストシーンに繋がるカロリーネのエピソードがもう少し欲しかった
・全体的に、ダウマ以外の登場人物がやや薄っぺらく感じた
・予告編やコピーが内容とマッチしていないと思った
残酷な生と儚い死の狭間
第一次世界大戦後デンマーク。縫製工場で働くカロリーネ。貧困にあえぐ彼女は、借家を追い出され、恋人に裏切られ、妊娠の中、絶望の淵にいた。そんな折、表向きは砂糖菓子店、裏は育児放棄された赤ん坊の養子縁組の仲介をしている女ダウマと出会う。カロリーネはダウマの仕事を手伝うにつれ、彼女の恐ろしい真実を知ってしまうのだった。
モノクロ画とディストーション音は、残酷な生と儚い死の狭間を観客に想起させる。現代の価値観で測られない残酷さがテーマで、救いがない。仏教でいうところの「無間地獄」だ。詳細は避けるが、当時の市井の人々の語られぬ真実とその語られぬ社会の綻びを誰が縫うのか、そして背負ってしまった「夜叉」を誰が救えるのか、観客に問いかける。
救いと言えるかわからないが、主人公カロリーネは善人ではない。おそらく当時の価値観でも結構な「ガタピシ」さんだと思う。おかげで感情移入が出来ず良かったかもしれない。
映画としての完成度は非常の高いと思いますが、テーマが重く、残念ながら鑑賞後のスッキリ感はありません。幕が下りた後の劇場からの「持ち帰り割引ポップコーン」のCMに救われる、そんな一本でした。
モノクロが美しかった
戦争で夫を失った女たちの正しい選択とは?
本題に入る前に本作を見て思い出した
「火垂るの墓」のあるシーンについて触れたい。
両親を亡くした清田と節子は親戚の家で
世話になるのだが、
二人はそこの家庭の子供と食事の内容が
まるで違うというあからさまな差別を受ける。
では、この食事を出した叔母は責められるべきか?
きっとこの叔母は戦前は優しい人物だった筈だ。
だが戦争が彼女を変えた。
十分な食料があればこんなことはせずに済んだ。
大人になってから本作を見返すと
清田と節子を追い詰めた彼女もまた
戦争の被害者であることが分かる。
銃弾が飛び交う戦場を描かずして
生み出された反戦映画の傑作。
「火垂るの墓」がそう賞賛される理由が
僅か数分の食事シーンからも垣間見える。
本作「ガールウィズニードル」は
モノクロによるグロテスクな作風で
残酷な描写ばかりが話題になりがちだが
その奥にはこのような高尚な演出により
人間そのものを描き出すアプローチが見えてくる。
続きはnoteにて
ほぼ100%スタジオセットでの撮影で、Poland映画風ではあるけ...
ほぼ100%スタジオセットでの撮影で、Poland映画風ではあるけれど、やはり北欧出身の監督はシンプルを志向している気はする、それはそれで分かりやすくていいのかもしれない。
個人的には、テーマのわりにはぬるい印象しか残らなかった。音入れも冒険なく、妙な雑音を入れたりして映像を含めて小技ばかりが鼻に付く映画に仕上がっていました。
誰が正しいって!!
この映画のポスターには何かしらの”引力”があった。それでもしばらく無視していたが……やはり観てしまった。
根源的な深いテーマを投げかけられる。
ちびた石鹸で簡単に身支度を済ませる主人公。モノクロのリアリズムかぁと思いきや、こんなの映さなくても……の描写。バケツのトイレ、脱糞、放尿、風呂場で堕胎の試み、出血、そして出産、授乳まである。この女優の今後が心配。(愛のコリーダみたいに)
やはり、えーとこのボンボンは、こんなオカンがおったら結婚できまへん。経営者の頭もあるのにねーわかりそうなもんだけど。
帰還したカロリーネの旦那のくだりは”哀れをさそう”というより痛すぎる!
砂糖菓子店を隠れみのにするダウマが乳母車で行く先は、てっきり怪しい医者の所で、何かの実験用に乳児を売りに行くのかと思って、おぞましいカルト的な展開がよぎった。しかし、依頼者から金だけ取って殺して捨ててしまうだけ。『正しいことをしたね!』ダウマの常套句はもちろん、自分自身に言い聞かせるもので、常用するエーテルと同じく罪の意識を紛らわせるものだ。
『あんたらの出来ないことを代わりにやってやったんだ!』ダウマが開き直ると、”自称被害者達”が一斉に糾弾する。この対立に割って入って正論を操れる者は少ないだろう。
よくわからないのは、贖罪と悔恨の情が昂じたカロリーネが店に居た少女(ダウマの娘?)を養子に迎えるラストだが、いつそんな余裕ができたんだろう?いい服着てるし!見世物小屋の旦那の所へボロボロになってたどり着いた後の話が省略されてるのかな?
にんげんが、いる
にんげんの、いとなみがある
にんげんは、おもいついたことをなんでもやってのける
全編不穏
映画はいろんなことを教えてくれる
しんどい…
ニードル、の時点でイヤな予感はしてた
縫い針の先を歩く
「ゴッドランド」以来のファンのヴィクトリア•カルメン•ゾンネ主演、作品もアカデミー賞国際長編映画賞ノミネートとくれば、これは見逃せないと思っていました。
もっとホラー寄りの作風かと考えていましたが、ことのほか真面目で見応えありました。
悲しみを抱えた人ばかり登場します。貧困に苦しむ主人公カロリーネ、戦争で顔に酷い傷を負った夫ペーター、望まれない新生児の養子縁組を世話するダウマ、その娘、縫製工場の社長、その母親、ダウマの元へ赤ちゃんを託しにくる若い母親たち。
なんとも陰鬱でやり切れない描写が続きます。光と陰、画角の様式美を意識した素晴らしい撮影が、このつらい雰囲気をさらに強調していきます。
長い長い不幸な時間が経過しますが、カロリーネには中毒症状から救ってくれる夫がおり、ラスト 母性に目覚めた彼女が意思を持って一歩踏み出す勇気に、希望の薄日が差してきます。
望まれない新生児と同様、昨今も物議のある人工妊娠中絶。ダウマの行為は論外なのですが、この問題と彼女の主張が重なるところもあります。中絶の権利を認めると同時に、男女問わず(いや特に男性側に)教育や予防を徹底して説いていく必要があると思います。
誰もが必死…
1918風潮と貧困と混沌
今年のベストの一本だろう
マグヌス・フォン・ホーンの長編監督第3作。第1次世界大戦直後のデンマーク🇩🇰で実際にあった犯罪を題材にしているとのこと。
想像を絶する展開だった。
想像を越える傑作だった。
戦場から帰らぬ夫、貧困から抜け出そうともがく女性カロリーヌ。働く裁縫工場の社長の子供を孕むも捨てられ、体を傷つけたが堕ろすこともままならない。
見世物小屋で再会した夫は戦争で深い傷を負い、顔が醜く変形し不能となった。
これでもかと畳み掛ける悲劇にゾクゾクする。
しかしそこからが本題だった。
貧しい母親たちが望まない子どもを里親に託す手助けをするというダウマとの出会い。
間もなくカロリーネ、そして観る我々はダウマの狂気を知ることとなる。
ダウマを演じたのは2019年の傑作「罪と女王」でイケメンの青年を食ってしまったデンマーク🇩🇰を代表する女優トリーヌ・ディルホム。ここでもドラム缶のように太った肉体をさらけ出し欲望と狂気を表現した。
そしてカロリーヌを演じたビク・カルメン・ソンネの圧倒的な個性と存在感。今年の主演女優賞候補だ。
本当の悲劇とは
生活の糧として、他人や自分を傷つける道具として、
針を様々な暗示、象徴としつつ、
モノクロの画像や雑音の多い音響も相まって
全編にわたり、暗い雰囲気で物語が展開する。
本作のクライマックスは、
養子縁組を取り持つダウマの秘密を巡るパートだと思うが、
個人的には戦争がもたらす傷や貧困、
そのような状況において、あらゆる市民(とくに女性)が生き残っていくために、
羞恥心を捨てて、いかにあらゆる手段を選択せざるをえなかったかという現実と、
それによって徐々に人間としての感情そのものを失っていく(仮面になる)過程を
本当の悲劇として捉えているように思った。
映画館の近くの席で、事前に楽しそうにお喋りしていた女子学生三人組が
どんな感想をもったのか気になった。
ひたすら落ち込む
仕事で悶々とすることがあり、映画でも観に行こうと急遽観に行ったが観なければよかった。そんな映画。
映像が白黒で、直接的な場面は出てこないが音や演出がとても生々しい。赤ん坊に手をかけるシーンは、思わず耳を塞ぎ目を瞑る。そんなシーンに耐えられなかったのか何人か途中退出した。久々に途中退出する人みたなあ。
何でもかんでも他人に身を委ねて自分の意思がないカロリーネ。裁判を傍聴し、彼女が最後の最後にした決断。ネタバレサイトには希望の光と書かれていたが、私にはそうは思えなかった。これはダウマへの復讐なんちゃうかな?
とにかく感受性が強い人には絶対おすすめしない。精神的にほんまによくない。
画像から想像できる臭気
モノクロで描かれているので、より想像力が刺激されるのですが、モノクロ故に主人公のカロリーネの年齢層が分からず40代ぐらいと思って観てしまっていました。途中であれれ?ってなりました。
その時代のその場所の臭気を感じるような気がしました。後からじわじわと恐怖を感じる映画です。
興味深く観たけどハテナもだいぶ
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