「ソレンティーノにしか作れないぶっ飛んだ"わが街映画"」パルテノペ ナポリの宝石 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
ソレンティーノにしか作れないぶっ飛んだ"わが街映画"
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監督のパオロ・ソレンティーノによると、ヒロインの名前、パルテノぺは彼の故郷、ナポリの前身である古代都市の名前だとか。前作『The Hand of God』('21年)が主人公の少年に自身の青春時代を投影したのは違い、監督にとって初めて女性を主役に据えた最新作は、強いナポリ愛を主人公に映し替えた、若干イメージ先行のファンタジードラマになっている。
イメージ先行とは言え、パルテノぺを介して描く禁断の愛憎劇や、宗教批判、そして、ナポリのシンボルと思しき人物に意外なナポリ感を吐き出させたりと、細部に強烈な毒を盛るあたりは、さすがにイタリア映画を背負う奇才だけのことはある。前作ほどではないが、あまり見たことがないナポリの風景もしっかりサービスしてくれる。その代表例が、海辺で行われる水球だったりする。海があるなら使えばいい。イタリアは知る人ぞ知る水球大国なのだ。
パルテノぺを演じるのはこれが映画デビューのセレステ・ダッラ・ポルタ。次々に出会う人々や巻き起こる出来事に、たじろぐでもなく、それを自然に受け止め、揺蕩うように生きていく姿は、恐らく監督が意図したナポリそのもの。あらゆる意味でパオロ・ソレンティーノしか作り得ないけっこうぶっ飛んだ" わが街映画"を、どうか冷静に受け止めて欲しい。
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