劇場公開日 2025年7月25日

「インド映画の新たな息遣い」私たちが光と想うすべて La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)

未評価 インド映画の新たな息遣い

2025年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 そう、こんな映画を観たかったんだよな。

 少なくとも日本で公開される限りはインド映画と言えば、歌って踊って血まみれで殴り合うという作品が多くを占めます。でも、インドの人達だって日本人と変わらず様々な環境・状況・地方で様々な思いを抱いて生きており、その数だけ物語がある筈だし、社会に向かって訴えたい事だってある筈です。

 親が勧めるまま会った事もない男と結婚したものの、夫はドイツに出たっきり音信不通になった妻。イスラムの恋人がいるがヒンドゥーの家族には打ち明けられず親から別の結婚を勧められる若い女性。ムンバイで働く二人の看護師女性が、女性への押し付けがまだ強く残るインドで自分の生き方を見つけようとするお話です。それを、まだ三十代の若い女性監督が撮ったというのも注目点です。

 まず、仄かな明かりを模索する様なこのタイトルがいいですよね。原題も同じ、”All We Imagine as Light" です。夜のムンバイ、雨の街、緑豊かな田舎町を映す映像も美しく、物語も決して大声で語られる事はありません。だからこそ、しんみり心に染みて小さな灯りを抱きしめる事ができます。

 そして、スケベなオヤジである僕は驚いたのですが、女性の肌をここまで見せるインド映画は初めて観ました。この女優さん、私生活で強いバッシングを受けるんじゃないのかなと要らぬ心配までしてしまいます。これも新しいインド映画の証なのかな。

 更に、「こんなしっとりと落ち着いた映画が、インド社会ではどれだけ受け入れられているのだろう」と、気になりました。調べてみるとインドに約1万近くある映画館で本作上映館は僅か27館だったのだそうです。日本国内ですら50館近くで公開ですから、インド国内では興行的には失敗作とされるのでしょうか。でも、そんな映画でも日本に渡って来たのは、先のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたからという実績があっての事です。そう考えるとカンヌにも感謝です。

La Strada