「亡き父に扮した娘、そしてその母は…」マルチェロ・ミオ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
亡き父に扮した娘、そしてその母は…
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あまりにも亡き父マルチェロ・マストロヤンニの面影を求められる娘キアラが、それなら望みどおり父になってしまえと男装して街に繰り出したら…という、現実とフィクションの境界を進むコメディ。実母カトリーヌ・ドヌーヴを筆頭に、キアラの元夫バンジャマン・ビオレまで出演しているのだから、実に太っ腹というかシャレが分かるというか。
改めて観ると、母よりも父にそっくりなキアラ。特に横顔なんか生き写し。娘の奇行に最初は戸惑っていた母だが、そのうちその姿に元パートナー(未入籍だった)の面影がダブって感傷的になっていく件などは、演技でなく地ではと思わずにいられない。マルチェロが出演した作品のオマージュが盛り込まれているので、ファンなら楽しめるはず。実際TIFFでは大笑いしていた客もいた。もっともその大半がイタリア人のようだったが。
正直今年のTIFFは全体的に地味なラインナップだったと思う(『グラディエーターⅡ』はテコ入れ上映だろうなあ)。本作もクロージング作品といえ、内容的にもシネフィル向けだし、往年のイタリア映画を観ていない若い観客には食いつきが悪かった。それを補うべくマルチェロ・マストロヤンニ作品を併映していたけど、ま、それでも…という印象。決して悪い作品ではないだけにその点が惜しまれるし、勿体なかった。
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