「難解な「リアル・ペイン」。ヨーロッパのアジア諸国に対する歴史観を知る旅。」グランドツアー minavoさんの映画レビュー(感想・評価)
難解な「リアル・ペイン」。ヨーロッパのアジア諸国に対する歴史観を知る旅。
19世紀以降本格化したヨーロッパによるアジア諸国への植民地支配。日本の第二次世界大戦参戦の目論見は様々あれど、東南アジアの人々にとってはヨーロッパからの独立のきっかけになったことは確か。でも、第二次世界大戦はアジアを植民地支配していた側がアメリカを抱き込み、日本が敗戦国になったのはご存知の通り。
アメリカにもフィリピンという植民地があったので、無関係ではなかったものの、結果的にアメリカが日本に制裁を下すという結果になった。
こういう歴史の流れの中で、ヨーロッパの人々が日本やアジア諸国の国々に、どういう感情を抱いているのかということが、少し気になっていた。
この映画は、1918年のイギリス人のカップルがアジアに新婚旅行に行くという形をとりながら、当時のアジアの文化、生活レベルか、現代の都市まで映し、現代に繋がる歴史を振り返る。
平たく言えば、アジア諸国を植民地化したヨーロッパからみた、現代に至る歴史観の総括のような映画だった。
登場人物たちも、いきなりカンツォーネを歌い出す人はイタリアの孤立を示しているように、ヨーロッパの国そのものを象徴するかのように機能する。
日本だけがヨーロッパの植民地にならなかったことに対する畏敬の念があることが合掌造りの村での禅問答から伝わる。日本の知性が侵略を阻んだのだと。
実際、ザビエルのキリスト伝来から日本への侵略を画策してたと思えば、キリシタン弾圧、鎖国など、日本の政策の先見性が理解できる。
中国に対してもアヘンなどを持ち込み、国家の機能不全からの侵略を画策したが、パンダの存在、宗教感の違いなどから大国への理解度不足から、侵略に失敗したことが描かれる。
逃げた婚約者を追いかける女のメタファーだけが、いまひとつ理解できなかったが、ベトナムでウェスタンシャツを着た男(アメリカ)とうっとりダンスするシーンから、文字通り抱き込んだつもりが抱き込まれたといいたいのかと思った。
特徴的な女の笑い声も、明らかにおかしなタイミングで発しており、ブーイングにも聞こえたから、侵略の歴史に対する自戒の念を感じさせた。
エンティングロールの最後は日本の尺八で締められ、日本は他のアジア諸国と比べて特別な国だというメッセージが伝わった。
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