劇場公開日 2025年5月16日

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「美への依存症映画」サブスタンス エルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 美への依存症映画

2025年12月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

デミ・ムーアの鬼気迫る演技がまず素晴らしい一作。

作中にはエリザベス演じるデミ・ムーアの裸が度々登場するのだがおそらく撮影時期的に60歳前後だろう、なのにも関わらずこれが想像以上に美しい。
なんだ本人が言うほど老いてもいないじゃないかと、なんならミスキャストまで一瞬頭をよぎるが、
ここで若い方担当のスーを演じるマーガレット・クアリーの美しいこと!
さっきまで全然気にすることないじゃんと思ったエリザベスの体が途端にたるんでみすぼらしく見えてくる。
主人公の異常な美への固執に、展開の妙により見事に納得させられた。

この美醜の差は、本作で偏執的なまでに取り扱われ、カメラが捉えるポイントである。
それは節くれ立った指先、大胆なドレスにより見せつけられる背中のシミ、首元の些細なたるみ。
エリザベス単体なら言うほどは気にならない、むしろ美しいじゃないかと感じさせるほどなのだが……
ここで対比としてスーを立たせるといかに衰えているかを残酷なまでに暴き立て、映えさせてしまう。

そして、この差がエリザベスの感じている世界だ。
自分一人だけの時は諦めて受け入れざるを得なかった老いが、
スーのせいで際立たせられてしまう。エリザベスでいることに耐えられなくなる。
だからこそもっとスーでいさせてくれと暴走を繰り返してしまうわけである。
美醜のコントラストを偏執的に撮ることでこの点に的確に説得力を持たせているのが、この作品のすごいところだと思う。

いくら化粧をしても納得出来ず、鏡の前で狂ったように顔を塗りたくる場面は、
美にすがり老いに追い詰められる女性の悲哀がこれでもかと詰め込まれた名シーンだ。
終盤の展開のすごさから、そこが取り沙汰されがちだが、
こういうひとつひとつの丁寧な精神的な追い詰め方こそ真骨頂に感じる作品だった。

『賞賛』という名の麻薬の依存症になった女性が、
一時の快楽の為に後先考えず行動し体をボロボロにさせていく、そんな映画。
グロいものを見たくなったときにお勧め。

エル
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