「途中で主人公の印象が180度変わった」サブスタンス リコピン大王さんの映画レビュー(感想・評価)
途中で主人公の印象が180度変わった
観た直後は後頭部をぶん殴られたみたいな感覚で圧倒されてしまった。とにかく最高!
ソリッドな絵作りやエアロビ、TV文化、スマホが混ざった架空の時代設定のような独特の世界観をはじめ、
キャラクターの造形も展開も全てに隙がなくパワフル。
ただノリや雰囲気だけの映画ではなく、
主人公に自分を重ねて色々考えたり、シーンの意味を深読みしたくなったり、
映画の全てに監督の意図があり、文学的な奥行きもある。
冒頭、主人公が年齢を理由にクビにされる所は本当に同情するけど、
その後の彼女の行動はどんどん自分で状況を悪くしてしまう印象。
若い時の活躍だけに囚われて視野が狭くなっていて、
若くて美しくないとダメだという思い込みで余裕が無くなり判断能力を失って
サブスタンスとかいういかにもヤバいものに手を出してしまう。
途中デートに誘われても連絡もせずキャンセルする感じ、
すごく自分勝手だけどそうなってしまう気持ちも分かるからこそ、
あちゃーって感じで引き気味で見守っていた。
途中、寝ている方の身体を隠す部屋を作るシーンで
主人公が信じられないほどのDIYの才能を発揮するのは
ギャグっぽく描かれているけど
あれすら主人公は外見に固執しなくてもそれ以外の才能があったって事なんじゃ?と深読みしてしまう。
とにかくスー編までは、クビは可哀想だけど、
その後彼女を追い込んでいるのは、彼女自身の自己中心的な考えや視野狭窄が原因に見えて、
こうなっちゃいけないな…と教訓のような事を感じながら観ていた。
多分ここで終わっていたらよくある教訓話風の作品で終わっていたと思う。
でもこの映画を唯一無二のものにしてるのは、最後のモンストロ編。
若さや美しさに囚われて暴走してついにモンスターになる所までいった時は、
衝撃も受けつつ、もはや開き直って行き切った謎の爽やか感。
スー編まではエゴに取り憑かれて勝手な事をしてる主人公に呆れてたけど、
若さや栄光は彼女にとっては全てを失っても良いから手に入れたかったものだったし
それがない人生なら生きてても仕方ないって主人公は自分で分かってたのかも。
そう思うと必死な気持ちが伝わって切なくなった。
多分あのデートに行ってたとしても、そこに主人公の幸せは無いし、
その事に自分で気付いたから主人公は泣いてたし無意識に死を覚悟したのかも。
最後のシーンで彼女はキラキラの幻想を見ているから、爽やかな気持ちで死んだと思うとホッとした。
人生で一度でも栄光時代があるってことは、その後の人生が苦しくても最期のご褒美になるのかもしれないと思った。
めまぐるしい映画体験だったけど、鑑賞後には
人(観客)からどう見られようと自分を貫き通した主人公の生き様や強さに元気や勇気を貰えた。
ありがとう、モンストロエリザベスー!!
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