「総じて面白いけれど、食事しながら見るものではなかった」サブスタンス ジユージンさんの映画レビュー(感想・評価)
総じて面白いけれど、食事しながら見るものではなかった
全体として非常にグロテスクな作品だったが、“美”も存在していた。肉体の変容や痛みにまつわる描写は多く、観ていて生理的な不快感を伴う場面も少なくなかったが、それらの表現は単なるショック演出ではなく、意図的に美と醜、快と不快の境界線を揺さぶるものだったように思う。
今回はダイニングシアターでの鑑賞だったが、正直、この作品は食事をしながら観るにはやや不向きだった。私自身は汚いもの以外なら、食事しながらでも問題なく鑑賞できるが、一般的には血飛沫が舞う映画を見ながらサンドイッチを食べるのはどうなのだろう。これをダイニングシアターで上映した理由を知りたい気もする。
印象に残ったのは、エリザベスが元同級生らしき男性から、君は昔と変わらず(世界一)綺麗だねと言われる場面。彼女がその言葉をどれだけ嬉しく感じたかが伝わってきた。エリザベスは熟年の女性だけどこの時だけは少女のように愛らしく見えた。
一緒に年を取ってきた人(同級生)からしたら、エリザベスは本当に昔と変わらないマドンナだったのだろうし、その小さいけれど本質的な幸せや満足を素直に受け入れるべきだった。
この瞬間が一つの分岐点だったように思う。エリザベスはどちらを選ぶべきか、どう選択をすれば自分が幸せになれるか本当は理解していたのではないだろうか。しかし彼女は、結果として別の道を選んでしまう。それはおそらく、個人の本心よりも、社会通念や内面化された価値観に従ってしまったからだろう。
結末は幸福とは言い難いものだったが、その選択の過程には人間らしい弱さや迷いがあり、作品全体に深い余韻が感じられた。
『サブスタンス』は、単なる身体的な恐怖ではなく、“美しさとは何か”“誰が何を見ているのか”といった問いを観る者に突きつけてくる。強烈でありながらも静かに記憶に残る作品だった。
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