「遊星からの物体X?」サブスタンス たけはちさんの映画レビュー(感想・評価)
遊星からの物体X?
この映画についてはあまりに多くの情報が溢れていて、何を書いても今さら感が拭えないのだが、確かに噂に違わぬショッキングな映画でした。
デミ・ムーア演じる若かりし頃スターダムに上り詰めながら、老いとともに凋落する人気と衰える美貌に苦悩する主人公スパークルが、危険なドラッグ「サブスタンス」に手を出したところ、別の若い自分スー(マーガレット・クアリー)が現れ、自分の身代わりに新たなスターとして戦列にデビューするものの、彼女との二重生活を送る中で、お互いの存在に亀裂が生じ、やがてドラッグの恐ろしい副作用から醜悪なモンスターに変身してしまう…。
コラリー・ファルジャによるこの映画は、フェミニズム映画の系譜として「哀れなる者たち」「バービー」や最近のディズニー作品にも連なる女性の美醜を巡る存在論的な作品でありまた、愚劣なプロデューサーハーヴェイ(デニス・クエイド)に象徴される、男性からの搾取についての映画でもある。
とはいえ、個人的にはそうしたフェミニズム的側面よりも、全編に流れるスラップスティックな面白さや、女性監督にも関わらず(かもしくはだからかも)、必要以上にセクシュアルに描かれるスーのダンスシーンのヤバい程のエロさに驚きと笑いを感じた。
全体には、キューブリックが撮った「遊星からの物体X」のような作品であり、想像以上にB級特撮映画への愛と執着が感じられる作品で、二日前に観た「ガール・ウィズ・ニードル」と同じく、デビッド・リンチ的な可笑しみにも満ち、ブラックな笑いに包まれる映画でした。
それにしても、老いゆく女優を演じるデミ・ムーアはもちろんの事、その若い鏡像であり、おじさん達のアイドル足るスーを演じるマーガレット・クアリーのスタイルと確かな演技には驚いた。
今日的でありながら、どこか懐かしさを感じるのが最近の映画の傾向かもしれません。
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