「「本質」をさらけ出すもの」サブスタンス レントさんの映画レビュー(感想・評価)
「本質」をさらけ出すもの
けやき坂や乃木坂のような女性アイドルはなぜだか遅くても二十代半ばくらいでみんな卒業してしまう。中には三十路を超えて頑張っていたAKBの娘もいたが、結婚してまで続けていた女性アイドルは記憶にない。
でもSMAPや嵐はいくつになろうがアイドルは卒業しないし、結婚してもやめることもせず四十超えてもアイドルのままだ、解散はしたけどね。この違いは何なのだろうか。
男性優位社会、特にショービジネスの世界などでは女性は常に性的対象としてしかその価値を見出されてこなかった実態がある。若くてきれいなうちは周りからちやほやされるが、旬を過ぎたらお払い箱。
本作の主人公エリザベスもその例外ではなかった。かつてはオスカーを受賞したほどの女優が今ではろくに役も回ってこず、朝のフィットネスのコーナーで踊るしか仕事がない有様。
ワインシュタインの様な下劣でデリカシーのないプロデューサー、その名もハーベイからクビを宣告され彼女は絶望のあまり危険な賭けに出る。それはあまりに怪しい薬品投与による若返りの手段だった。
思えば彼女も外見だけで女性を判断する男社会の価値観にどっぷりとハマっていた。かつてのオスカー受賞が若さだけでなく彼女の実力で勝ち取ったものなら今からでもオーディションを受けるなりして役をつかみ取り返り咲きを狙うべきだった。実際に今回の主演を演じて返り咲いたデミ・ムーアのように。しかし彼女は外見だけで人の本質を重視しようとしない男たちの考えに染まりすぎたために危険で安易な方法へと向かってしまう。
薬の効果で若くて美しいもう一人の分身が生まれ、その分身スーはたちまちハーベイの目に留まり、スターダムへと駆け上がる。彼女はかつての栄光を再び手にしたことに酔いしれた。しかしその栄光は彼女の本質を評価したものではない、若さと美貌だけを重視した男社会の虚飾に満ちた栄光でしかなかった。そんな酔いしれた彼女はいつしか醜い本来の自分に嫌気がさしてルールを破ってしまう。
スーは自分の欲望のままにオリジナルのエリザベスから精力を奪い続ける。その姿は女性を搾取してきた男たちと何ら変わらなかった。
自分が生みだした分身に自らの人生が乗っ取られてゆく恐怖。このままではエリザベスはスーに自分が乗っ取られてしまう恐怖を感じる。
唯一今の自分のありのままを認めてくれた同級生との食事の約束をした彼女だが、スーの巨大広告を見てその美しさと自分を否応なく比べてしまう。
彼女が引き返せるチャンスはこの時だけだった。外見ではなく今の自分の本質を認めてくれる人こそが彼女にとってはなにより大切な存在だった。しかし彼女はそのチャンスを無にしてしまう。
彼女はもはや後戻りはできない。スーの欲望はとどまることを知らずエリザベスから精力を奪い続けた。
老婆のような姿となったエリザベスは強制終了を決断するが、やはりスーの美しさを前にして躊躇してしまい逆にスーに殺されてしまう。
いわゆるドッペルゲンガーを扱った作品としてはここまでは誰もが予想できる展開だが、本作はこの後のおまけともいえる展開が凄まじい。
自分のオリジナルを殺したスーはあくまでも影法師であり、破滅するしか道はない。しかし彼女は観客誰もが予想した通り規則を破る。
初回の一度だけ使用する薬をもう一度注射してしまうのだ。ここからの展開はまさにクローネンバーグの「ザ・フライ」を彷彿とさせる。
その後のステージでの大混乱ぶりは本作のテーマをこれでもかと描ききった。彼女のモンスター化したそのおぞましき姿はまさ男社会の欲望が創り出した象徴的な姿ともいえる。ご丁寧に鼻からオッパイを吐き出していたし。
本作は男性優位社会がいままで女性に対して人としての価値を評価せず、ただ外見ばかりを重視してきた結果生み出されたモンスターの姿を通して彼ら男社会の本質、サブスタンスを見事にさらけ出した。
痛烈な風刺が込められた怪作。あのモンスターはそんな男社会の犠牲となった悲しきエリザベスの姿に他ならない。
そういえばフジテレビの今回の不祥事で過去にカトパンが面接のときにセクシーポーズを要求されたという話を聞いたが、まさにさもありなん。
日本にはいまだミートゥー運動が海流に乗ってたどり着くことはなさそうだ。
レントさんに合ってますか?
自分はハズレでした。中盤までは○終盤は✕ なにもクローネンバーグやることはないでしょう。あとはキャリーですかね。レビュー断念です。
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