「『メガロポリス』──時よ止まれ、これは祈りと希望の映画だ」メガロポリス レイトショー浪人さんの映画レビュー(感想・評価)
『メガロポリス』──時よ止まれ、これは祈りと希望の映画だ
86歳のフランシス・フォード・コッポラが私財1.2億ドルを投じて完成させた “映像詩 × 超娯楽大作”。近未来〈ニュー・ローマ〉を舞台に、才能・政治・資本が利己へ傾いた瞬間に文明が瓦礫へと転落する様を、IMAXスケールのセットと時間停止VFXで暴力的に可視化する。バロック建築のような巨大都市、凍結した瓦礫を見下ろすドローンショット、管弦と電子音がせめぎ合うゴリホフの音楽──眼と鼓膜が歓喜する一方、観客の胸に残るのは**「これから人類はどう生きるのか」**という根源的問いだ。
◾️コッポラが投げかける核心はシンプルで深い
• 文明と利己心は必ず腐敗を招く。
• 対抗策は “愛” と “共有された未来ヴィジョン”。
• 倒れても立ち上がる信念と、夢に賭ける覚悟こそが未来を動かす。
この大命題を観客に届けるため、コッポラは“圧倒的に面白い”を先に用意した。巨大政争、ロマンス、暴動、カタストロフ──怒涛の快楽のあとで、いつのまにか思想の核心に引き込まれている構造が見事だ。
◾️「時よ止まれ」は監督自身の魂の叫び
作中最大のキーワード “Time, STOP!”。都市の時間が本当に静止するあの瞬間は、昨年逝った最愛の妻エレノアと共有してきた理想都市のヴィジョンを「映画という時間停止装置」に封じ込めたいという監督の祈りに重なる。エンドロール冒頭の献辞 “For my beloved wife, Eleanor” が、その証しだ。娯楽と哲学と私的ラブレターが一枚のフィルムに融け合う様に、ただ圧倒される。
◾️アダム・ドライバーという触媒
癖強監督御用達俳優の面目躍如。狂気とカリスマを自在に切り替え、物語のテンションを最後まで張り詰めた。「変態監督コレクター」の称号は伊達ではない。
◾️総括
娯楽であり、哲学であり、愛の告白でもある。それを2025年にこのクオリティで観られる奇跡。未来は想像する者の手にある──その力を信じろ。創り手の背中を全力で押す一本。