劇場公開日 2025年6月20日

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「「人間が直視できないものは太陽と自分の魂」」メガロポリス neonrgさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 「人間が直視できないものは太陽と自分の魂」

2025年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

フランシス・フォード・コッポラが私財を投じ、40年越しに完成させた本作は、“純度の低いドラッグ”のような作品である。ヴィジョンの奔流と音の洪水に押し流されながら、観客はカオスと秩序の狭間に立たされる。だがその混沌の中に思想の核があるかというと、残念ながらそうではない。

物語は、崩壊しつつあるアメリカ社会を古代ローマ帝国の終末になぞらえて描こうとするが、その視座は凡庸で、既視感に溢れている。国家の衰退を「モラルの低下」や「移民の流入」といった要因に還元しつつ、そこからの再生を「新素材メガロンによる新制度=メガロポリスの建設」で乗り越えようとする構図は、皮肉にも物質主義によって物質主義を克服しようとする倒錯を示している。

主人公カエサルが語る「人間が直視できないものは太陽と自分の魂」という台詞が印象的だが、作品自体はその“魂の直視”を深めることなく、むしろ回避するように愛と救済の物語へと逸れていく。映像は圧倒的であるが、それが何を語っているのかが曖昧なまま終盤に突入し、和解と赦しによってまとめ上げる展開は、構造としての破綻すら感じさせる。

コッポラの野心とヴィジョンは確かに巨大だった。しかしそれが語るべき問いに届かなかった以上、本作は思想の不在を豪華な映像で覆い尽くした空洞の巨像として記憶されるかもしれない。

IMAXで鑑賞

55点

neonrg
ノーキッキングさんのコメント
2025年6月24日

まさしく思想の不在でした。

ノーキッキング