「晩節を汚す」メガロポリス タカシさんの映画レビュー(感想・評価)
晩節を汚す
藤本壮介×イーロン・マスク×前田久吉みたいな話。それにトヨタのwoven cityも入ってるような話。周辺エピソードだけで、彼の建築家としての仕事は一切でてこない。そりゃ愛の力で仕事を突破するとかもあるだろうけど、それはあくまで仕事の周辺情報だ。途中の未成年フェイクニュース部分は老害として、セックススキャンダルなんて作家にとって気にすることじゃないという話かな。だとしたら出し方が中途半端過ぎる。カジノや木を使った建設など、中途半端に現実とリンクしてるのも興ざめだ。夢をあきらめるな、進めってそりゃそうだろうけど、そんなメッセージ誰だって言っている。後半は「時を制御」できなくなってダラダラして、気がついたら全部の問題が解消していた。スペシャルサンクスにブラッド・バードの名前があったが、ブラッド・バードが監督していたらもっとはっきりとした能力主義の映画になっていただろう。このぼんやりしたつまらない造りよりは絶対に面白いと思う。(キツい思想も相当含まれるだろうけど。。)ブラッド・バードの傲慢さを隠さない態度は、見ていてどこか気持いい。ダサい意味でのビジュアル主義になぜ陥ったのかについても考えたい。キャメロンもビジュアル主義だが、キャメロンのほうがアクションに対する感度が鋭いのかな。それと年老いたアメリカ人はヨーロッパに被れてしまうのかな。このヨーロッパ被れの引用も申し訳ないがカッコ悪い。大仰で偉そうで、偉く見られたいだけに思えてしまう。アメリカ人は年老いてからの歴史への関心の持ち方が難しいのかもしれない。それこそもっと歳下だがコーエン兄弟はユダヤルーツに関心を伸ばしてきた。それが今では批判の対象になってもいるが、もっと板についている。
思いついたから書くが、立ち飲み屋で隣の爺と喋っているうちに隠居の分際で「若いんだから頑張ってよ」と声を掛けられることがある。そんな時はその場に緊張感をもたらしてでも「僕は頑張ってます。頑張れってこれ以上何を頑張れっていうんですか?」と絡むようにしているがそれを思い出す。年金制度により現世の労働市場から隔絶していながら、昔のままの認識でとりあえず若い人は叱咤激励すれば良いという舐めた態度の老人がこの世にはいる。コッポラはそんなサビた老人にすでになっていると思う。