「2時間に収まってない笑」メガロポリス ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間に収まってない笑
ラジー賞 最低作品賞ノミネート、見事最低監督賞受賞という前評判が最悪な本作「メガロポリス」笑
映画界のゴッドファーザーであるコッポラが自腹を切って製作をしたという作品は本作に限らずあったことだが、自慢のワイン畑の大半を手放して何とか捻出したという制作費。
1.2億ドルも払ってラジー賞受賞というアメリカ映画界の容赦のなさはまるで本作の描くディストピアのようだ笑
さらに出演する俳優陣も超豪華で主演のアダム・ドライバーもコッポラ作品に主演ということだが容赦なく高額な出演料だったそう笑
構想40年という長きにわたって作りたかったという本作。コッポラが描きたかったのはもちろん総合芸術としての映画、映像としての素晴らしさもそうだが、そこに自信の哲学的なテーマを盛り込みたかったということだ。
マルクスの引用やコッポラ自身の問題提起も何となくわかるが、寓話として描いた古代ローマとニューヨークをミックスさせた退廃的な世界観が、格差の広がる現代社会の皮肉としても捉えられてしまい、よくある風刺映画的なテーマにも見えてしまうのは少し勿体無く感じた。
また、コッポラが長年に渡り描いてきた権力争いと家族の物語から浮かび上がらせるアメリカそのものの姿。義理と人情の家父長制社会か、血も涙もない資本主義か。「ゴッドファーザー PART Ⅰ, PART Ⅱ」を通してまさにアメリカの過去と現実を垣間見た。
本作では往年のコッポラ作品らしく、銀行家の家に生まれた建築家カサエルを中心とした兄弟間の権力争いや、汚職にまみれた政治家などが描かれ懐かしさを感じたが、あくまでも記号的な役割になっており、やはり「ゴッドファーザー」ほどの深みはない。
長年フィルム撮影にこだわってきたコッポラだが、前監督作でエル・ファニングちゃん主演のホラー映画「Virginia/ヴァージニア」からデジタル撮影で3Dに挑戦したり、ノーランほど頑なではなくなっている。
しかし、本作の映像はまるでフィルム撮影をしたかのような質感、照明でしかもIMAX規格となっている。(さすがに予算上IMAXカメラは借りれなかったようだが。)
本作は簡単にいうと「どうすれば人間はより良い社会を築けるか。」ということである。理想か現実か、選択を迫られる。本作は理想の力を信じた。時間を止められる能力を使うカサエルが最後にもう一度時間を止め、我々に選択する猶予を与えてくれる。
主人公カサエルの掲げる理想郷メガロポリスが果たして社会の分断の解決策になっているのか、貧困層を救う一手になったのかは疑問である。
それでも余りある実験的な画面割りや見た事ない照明効果で本作の映像作品としての見応えは十分ある。
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