ANORA アノーラのレビュー・感想・評価
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ショーン・ベイカーによる格差社会の描出
ロシアの超富裕層大金持ちの息子イヴァンと貧困層セックスワーカーのアニーとの関係性を描写した映画だ。
イヴァンとアニーは風俗店で知りあい、アニーはイヴァンを単なる金持ちの客としか思っていない。プライベートで指名され性行為をしても、なんら感情の変化もなく表情を崩さず、あくまでも金を得るための仕事という割り切った態度を一貫してたもっていた。
しかし高額な金額での一週間の専属契約をして豪華な洋服を買ってもらい、贅沢な食事、高価なお酒、ラスベガスまで行っての豪遊、連日のバカ騒ぎパーティー、まさに夢のような一週間を満面の笑みで過ごした。その間の肉体関係においてアニーに快楽の表情があらわれ、まるでイヴァンを愛しているように変化していく。
専属契約が終わろうとしたラスベガスでの最後の夜、イヴァンは突然アニーにプロポーズする。アニーはすぐ同意し結婚をする。アニーはイヴァンを愛していたし愛されていると思っていた。
二人の前にイヴァンの家族から結婚を認めないと断言され、イヴァンのお目付け役トロス、ガーニック、イゴールの3人が、イヴァンとアニーを監視しようとする。イヴァンはアニーを置いて一人逃げていく。アニーはイヴァンを追いかけようとするが、イゴールとガーニックに阻止される。暴れるアニーの手首を縛るイゴール。アニーはイゴールに悪態をつく。しかしイゴールは暴力を振るわないし、アニーに対する優しい眼差しを向け続ける。イゴールのアニーへの視線はアニーと自分に向けられている。同じ貧困層にしかわからい悲哀の視線で。
トロス、ガーニック、イゴールとアニーの四人は、イヴァンの行方をとにかく追跡する。イヴァンのスマートフォンに電話してもつながらず、彼が行きそうなところをしらみつぶしにあたっていく。イヴァンドタバタ追跡劇は、悲しい「コメディ映画」の様相に変化する。アニーは愛しているイヴァンが自分を置いて逃げたことに怒りを持って探している。トロス、ガーニックは、自分の保身のためイヴァンを確保するために探している。そしてイゴールはアニーをひたすら気遣う。追跡する目的がそれぞれ完全にバラバラにズレてるから悲しい喜劇にしかならない。
またアニーとイヴァンのズレも明快だ。アニーが知っているイヴァンは、金持ちの息子で一緒にいて楽しいだけで、それ以外のイヴァンの本性を知らない。確かなのはアニーは、自分だけ逃げようとしてアニーのことをつゆとも考えずイヴァンに放置されたことだ。ここにアニーとイヴァンの愛に対する完全なるズレが生じ、放置されたアニーの悲劇にしかならない。
ショーン・ベイカー監督はこの映画でどんなメッセージをなげかけたのか。それはまさに格差社会の実態の描出である。金さえ出せばなんでも許されてしまう超富裕層の大金持ちの社会と、セックスワーカーのような貧困層から這い上がることが難しい社会の対比をしている。このまったく異質な階層を同列に描写するとしたら、シンデレラストーリーしか手立てはなかったと感じる。
ショーン・ベイカー監督は、このシンデレラストーリーに三人の人物像を浮き彫りにした、イヴァンは、金持ちの単なる息子でしかない。彼は何も生み出していない。イヴァンを徹底的にバカ息子扱いすることによって、結婚すら金持ちの道楽にしてしまった。それはイヴァンが母親に「彼女は俺のエスコート嬢だ。ちょっと遊んで何が悪い」と言い放つシーンに集約されている。
一方アニーに対しては、夢見た女性像にしている。貧困のどん底から這い上がれる千載一遇のチャンスに賭けた。純粋にイヴァンを愛して。しかし男を見る目がなかった。貧困のどん底から天国へ駆け上がりまた貧困のどん族にまいもどってきた女性として描写している。
そしてイゴール。彼はアニーと同じ貧困層に生きる人間として、アニーの悲劇を優しいまなざしを向け続けるまさに庇護者として描写している。
セックスワーカーをヒロインにするために、ショーン・ベイカーは。思い切った性行為の描出を余儀なくされた。それを全身全霊で応えたマイキー・マディソンの演技は、素晴らしく輝いていた。彼女の演技なくしてこの映画は成立しなかった。性行為だけでなく、とことん気が強く、イヴァンの母親にぶつける強烈な皮肉は、彼女の勝気さとプライドの表出である。そして自分自身の行為の愚かさと、現実社会のぶ厚い壁に押しつぶされた限りない弱さを隠していた。
ショーン・ベイカー監督がもっともマイキー・マディソンに託したのは、この隠していた弱さの表出であり、アニーという殻から抜け出しアノーラからただよう切なさとともに、かぎりない美しさにあふれたラストシーンに結実していた。
セレブリティの酷薄さ
ショーン・ベイカー最高傑作
個人評価:4.4
最高に人間味あふれる、ちょっと変わった恋愛ロードムービー。
この監督はどうしてこんなにもキャラクターを描くのが上手いのだろう。
キャンディー屋の老人や、レッカー車の若者など、一瞬しか登場しないキャラクターでも、どんな人物像かが滲み出ており、そしてどこか愛くるしい。
登場人物が全員人間臭く、ドキュメンタリーのように物語を描けており、そこがこの監督の力量である。
またアノーラも素晴らしくキュートでファンキーに描いており、すぐにこのキャラクターの事を好きになっている事に気付かされる。
過去作にも見られるフワフワとした気持ちいい演出が本作にも施されており、まさにショーン・ベイカー最高傑作である。
キュートで凄みのあるマイキー・マディソン。時折、ワンハリ出演時の表情が垣間見え、個人的にはニンマリポイント。
オスカーにも輝き、とてもいい物語でした。
「2024年パルムドール」
ボルテージマックスでオープニングを迎えて興奮状態そのものの雰囲気か...
ボルテージマックスでオープニングを迎えて興奮状態そのものの雰囲気から、エンドロールでは全くの無音になって鎮静化された心地になる、全くすごい映画だなと思った。
乱痴気騒ぎの場面は時間もテンポもどんどんカットされて勢いよく進んでいくから、特に内容がないことがわかるように見せているのに対して、後半部分は、一般的な映画では切り取られるであろう細かいやりとりや手続きを省かないで撮り続けるから心の動きが少しずつ丁寧に伝わっていく。途中の口論のシーンの長さが多分その蝶番をしているのだと思う。だから、始めと終わりで全く違う温度になっているが、観ている方はシームレスに違和感がない。
こういうのが映画体験なんだろうなと思った。
前半のパリピシーンがとにかく長くて退屈だが、中程にスクリューボール...
喜怒哀楽の「発露」
面白かったです。
前半のシンデレラストーリーは全く輝かしいものであり、映像を通しても華やかでした。
特に、二人がイチャイチャするシーンでは本当にカメラを意識させない自然体なお芝居が印象的でした。
一転、後半はドタバタ劇として映画館で声を出して笑えてしまうほどの内容のものでありながら、物語は失踪した夫を探す新規軸がきちんと整備されており、彼がどこにいるのか、なぜ彼が失踪したのかというサスペンス性をも内包していた点が集中力を欠かせない大きな要因であったように思いました。
また、終盤の口論にしても物語の帰結にしても、アノーラという女性の強さと弱さの両面を激しさと静かさをもって映し出している点においても素晴らしく感激しました。
ラスト、あの表情のアップショットのカットバックは息を呑むほどの瞬間瞬間が刻まれていました。
機内上映で見ていい作品だった??
喜怒哀楽ジェットコースター成人映画
脚本演出撮影演技、高い芸術性
そして娯楽性が両立した類まれな作品
昔の映画からたくさん研究し、学んで見事にアップデート!
50年代のクラシック白黒ドラマ劇作、70年代ニューシネマのロケーション夜間撮影、いいとこどり!
裸のままシーツにでんぐりがえりして入る!
この粋な表現たら!
ところどころに洗練されたものが光る
しかし、実際存在するワーカーさんを傷つけないため、
今村昌平みたいに、綿密なリサーチに基づき作られたらしくかなりの社会派作品です
フロリダプロジェクトもそうでした
背景地理場所で起きてもおかしくないこと、リアリティ
ですが、映画の面白さ、虚構性を忘れてはいません!
そして、田中登の㊙️色情めす市場の芹明香のような
ヒロインのまぶしいばかりの魅力!
映画は、強烈なアクトレスがひとりいれば
あとはどうにかなるものですが
対する男たちもなんのその
味わい深く、おかしく、かなしい、愉快な奴ら!
ワンダとダイヤと優しい奴ら、
カサヴェテスなどなどありますねー
滲むのは、おおらかな父性
母性だけでは、女がつらいよ、悲しすぎて
ショーンベイカー監督は、女囚さそりだけでなく
日活ロマンポルノ、結構観てそうな感じがします
この映画にコメディは必要なかったのでは?
三谷幸喜?
アカデミー賞作品賞が気になる人におすすめ
私には理解できない作品だった。
アカデミー受賞作品なので期待して観たが、どこが受賞するに値する映画なのか、最後まで分からなかった。
要するにロシアの新興財閥(おそらく)の親に甘やかされて育ったぼんぼん馬鹿息子に、ストリッパーを含め周囲の人間が振り回されるだけの物語ではないか。どこが評価されたのだろう。私には理解できない映画だ。主演女優の熱演はわかりますが。
まぁ、アメリカのストリップバーの実情が知ることができて、その部分だけ0,5加点した。
良い映画
これが??
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